第44話「真の怪物」
相良優人の放った魔法は、大爆発を起こし、辺りを豪快に燃やしていた。
そして、その中に高尾の姿はない。
「やった、のか、ついに? オレは高尾に勝ったのか?」
困惑しながら言う相良優人の視界には高尾の姿はない。
──闘技場では、戦闘不能になった者は消える。
それはこの会場中にいる誰もが知っている。
そして、相良優人もまたそれを知っていた。
だから、
「勝ったッ!アイツに!あの高尾にッ! オレは勝ったんだ!」
相良優人は勝利の雄叫びを上げた。
周囲にも警戒せずに、勝ったと思った喜びから雄叫びを上げてしまった。
その瞬間、相良優人が喜びに打ち震えていたとき、相良優人は戦闘不能になった。
──胸を死角から飛んできた銃弾で貫かれて。
「・・・なん、で?」
後ろを振り向いた相良優人はそう言って倒れた。
信じられない者を見たような、そんな驚いた表情で。
なぜなら、そこには自分が倒したと思っていた宿敵、高尾響弥が満身創痍の状態で立っていたからだった。
「なんで、なんでその体で動けるんだッ?」
叫ぶように相良優人は言った。
否、それは叫び声だった。
高尾の体は人間なら動かないであろう、それほどの傷を負っていたからだ。
「ハァ、ハァ、知ら、ねぇよ、そんな、こと。どう、でも、いい、だろ。」
「なッ!?」
そして、相良優人は戦慄した。
そして、こう言った。
「こんなの、勝てる、わけ、ねぇだろ!? なにが、2匹の怪物だよ! コイツは、コイツは、本当にバケモノだよッ! 真の、怪物だよ!」
その表情は悔しさと高尾に対する恐怖で埋めつくされていた。
「テメェも、十分、怪物、だったよ。・・・相良、優人。」
相良優人が消えたあと、相良優人が倒れていた場所を見て高尾はそう言った。
そして、高尾は、真の怪物はまた動き出す。
──敵を殲滅する。
ただ、それだけのために。
──高尾と相良優人の怪物2匹が戦い始めて、数分後、神谷慧は敵陣へと乗り込んでいた。
迫る敵を斬り、魔法で貫き、駆けていく。
もちろん、後ろには自陣を出たときのように魅月、レイン、桃香、姫依、愛の5人がいる。
だが、オレの足は止まった。
敵陣にある人影を見つけたからだ。
短い銀色の髪、浅黒い肌、そして、高身長ながらも引き締まった筋肉がわかる。
それは、明紅の要注意人物の1人である、カイン・アドルフであった。
そして、オレはカインが右手をこちらに向けるのが見えた。
「ここから離れろッ!」
そうオレは叫んだ。
そして、全員がその場から離れてから、さっきまでオレたちがいた場所が爆発する。
「なッ!?」
オレはその威力に声を上げた。
オレたちを狙ったその爆発は、オレたちがいた地面に大きなクレーターを作っていたからだ。
「ほんの挨拶代わりだ。」
カインは短く、威厳のある声でそう言った。
そして、笑った。
危ねぇな!?
こんなのまともに受けたら、オレたちは全滅だぞ!?
オレはそう思った。
そして、この男がオレたちと敵陣との間にいる間ずっと、敵陣には向かえなくなった。
この男に背中を見せた瞬間、オレたちにあの爆発が死角から飛んでくるからだ。
だが、
「ムムッ!」
そう言って、カインはその場から離れた。
そして、次の瞬間、カインの立っていた場所に、カインのものと同規模の爆発が起こる。
そして、それは見事にカインの爆発が作ったようなクレーターを作っていた。
「悪いな、少し遅くなった。」
そして、その声と共に現れたのは高田さんだった。
「お前らは予定通り、敵陣を潰しに行け! ここはオレが食い止める。」
そう言われて、オレたちをまた駆け出した。
「なんのつもりだ?」
神谷慧たちが去ったあと、カインが高田に訊く。
「なにって、ほんの挨拶代わりだが?」
笑いながら、高田は言う。
「そうか。あくまではぐらかす気か。そうか。 なら、拳で聞くまで。」
「オイオイ、オレはまったく、はぐらかしてねぇから。普通にわかんないだけだわッ。お前、脳筋ちゃんか!? ま、オレも言えないがな。」
そう言って、高田は、ガハハハハッ!と、豪快な笑い声をあげる。
こうして、話の噛み合っていない、爆発属性の魔法使い2人の戦いも始まろうとしていた。




