第4話「休日」
新しい朝がきた。希望の朝かは分からんが、とりあえず朝だ。
伸びをして目を完全に覚まし、隣で寝ている魅月を起こした。
「ん?慧、早すぎない?まだ7時だよ?」
「いや、学校あんだからこれぐらい普通だろ!」
「何言ってんの?今日、土曜だよ?」
そうだった!昨日いろいろありすぎて、今日が休みだって忘れてた!
「じゃ、私、まだ寝てるね。おやすみ。」
「休みなら、オレも寝よっと。おやすみ。」
そう言って二度寝を開始すると、魅月がピッタリとくっついてきた。
だが、今朝のオレは眠さと罪悪感ゆえ何もツッコまず、そのまま寝始めた。
あくびをしながら、二度寝から覚めると11時だった。
オレは魅月を起こさないようにベッドから出て、冷蔵庫に入ってる食品の中から、テキトーにチョイスして料理を始めた。
起きたばかりなので、視界がなんとなくぼやける。
料理が完成すると同時、魅月が起きてきた。
魅月は何も言わず、料理の前に座ると、口を開いた。
「何してんだ?」
「見ればわかるでしょ?あーんだよ、あーん。ホラ、早く!」
「なんでオレがそんなことする必要があるんですかね?」
「なんで、私、今日、早く起きたんだっけ?」
「すみませんでしたっ!」
そう言って、オレはあーんをするハメになった。
「じゃ、今度、慧の番ね。」
「は?」
「だから、慧が食べさせられる番だよ?」
「いや、別にオレは大丈夫だから。」
「あれ?私、なんで朝あんなに早く起きたんだっけ?ぐっすり気持ち良く眠ってたのに。」
「すみません、いただきます。」
「はい、あーん。」
そして、また、あーんをするハメになった。
恥ずかしい食事を終えたオレたちは、やることがないのでとりあえずテレビの電源をつけた。
テレビでは、ニュースが流れている。
どこかの国のお姫様が留学しにきたらしく、飛行機から降りるところが移されている。
真っ白な長い髪とそれに劣らないくらい白い肌が特徴的なキレイ系の女性だ。
長い間見つめていたようで、魅月に
「見過ぎ。」
と言われてしまった。
そんなに見てたかな?
その後もニュースを見ていると、不意に携帯電話が鳴り出した。
誰かと思ったら、親父だった。
「急にどうしたんだ?親父。」
「あー。お前、今からちょっとこっち来れるか?」
「どこにいるかは知らねぇけど、とりあえず近場なら行けるぞ。」
「そっか。じゃあ、今すぐ学校まで来い。」
「別に構わねえけど。なんで、学校なんだよ?」
「ニュース見てねえのか?ヴェルナー王国のお姫様が留学しに来てんだよ。」
「それとオレが学校に行くのとなんの関係があんだよ!?お姫様とオレじゃ、住む世界が全然違うぞ!」
「知らん学校じゃ不安だからって、わざわざじーさんの学校に入学するんだとさ。
学年も同じだし、お前と同じクラスにする予定だから、お前に学校と街の案内をさせようと思ってんだとよ。」
そういえば、私立の魔法学園に入学するとかニュースで言ってたな。
アレ、うちのことだったのかよ!?
つか、学校の案内って子供がやることじゃねェだろ!?
「あー、あと、どっか知らねぇとこで寝泊まりさせんのも不安だから、お前の部屋の横の部屋を使って貰うことにしたから。そこも案内しといて。じゃ、よろしく。」
一方的に言って、切りやがった。
仕方ないので、着替えて学校に向かうことにした。
魅月には、ちゃんと事情を説明したが、
「慧は他の女の子のところへ行っちゃうんだ。」
などと言われてしまった。
ずっと同じようなことを言っていたが、明日、デートをするという約束をすると、すぐに大人しくなった。
学校に着くと、爺さんと、ニュースで映っていた例のお姫様がいた。向こうも気づいたようなので挨拶でもしておこう。
「お初にお目にかかります。神谷慧と申します。
以後、お見知り置きを。」
「はじめまして。レイン・ヴェルナーと申します。
レインとお呼び下さい。あと、敬語とその態度も辞めて下さると、嬉しいです。」
「じゃ、そうさせてもらう。これからよろしくな、レイン。」
「はい!よろしくお願いします。」
「じゃ、これから学校を案内するけど、案内ってどこまで進んでんだ?爺さん。」
「うーん、とりあえずまだどこも行ってないかな?」
「なるほど。予想通りだな。まぁ、とりあえず、オレたちの教室でも行っとくか。」
「あ、オレ、これから仕事あるから。あと、よろしく。」
「は?おい、爺さん。ちょっと来い。」
と言って、爺さんを連れ、レインから少し離れると、小声で文句を言う。
「なんだと!?オレに、今会ったばっかのお姫様をオレ一人で案内しろってのかよ?」
「当たり前じゃん。他に誰かいるか?」
「いや、先生とか呼んで来いよ!」
「今日、先生たち休みだし、学校にいるわけないじゃん。」
「じゃ、叔父さんは?」
「家族で旅行中だとさ。」
「う、嘘だろ?」
「いや、マジマジ、大マジ。だから、お前しかいねーの。
つーわけでよろしくっ。」
ったく、仕方ねーか。じゃ、案内を…
「あっ、そうだ。押し倒したりすんなよ。殺されっから。」
「死んでもするか!」
クソジジィは、レインのところに戻ったオレにそんな言葉を掛けて去っていった。
「じゃあ、オレたちのクラスに行くから着いてきてくれ。」
そう言って案内をし始めた。
案内は在学中に行くであろうところへ行って少し説明するという簡単なものだったのですぐ終わると思っていたが、模擬戦が行われる闘技場に来たとたんに大変なものに変わった。
なぜ大変なものになったかって?
お姫様が急に模擬戦をやりたいと言い出したからだ。
断ったが、やりたいと言って聞かないので仕方なく了承することにした。
幸い、闘技場は特殊な魔法結界が張ってあり、
中で受けたダメージは模擬戦が終了するとすべて回復するし、痛みも感じないことになっている。しかも、傷を負ってもすぐ塞がる。
だが、血は出るので、結構グロい。
例えば、オレが相手の腕を切り落としたとしたら、
相手は血が出ているが、痛みを感じないし、数秒経てば、腕は元に戻ってないが、傷は塞がっているといった感じだ。
そして、落ちた腕は模擬戦終了と同時に元通りというわけだ。
しかも、とても不思議だが、中で死のうとも模擬戦終了時には生き返っている。
そのため、模擬戦の勝敗は相手を死に至らしめた方が勝ちということになっている。
残酷なルールだ。
そこがオレが今回の模擬戦をやりたくない理由の一つだ。
オレは模擬戦をやるなら全力で勝ちに行くつもりだが、
相手はお姫様。結界の中でも殺したら、国際問題になるかもしれない。
あ?他に模擬戦をやりたくない理由?
そんなのめんどくさいからに決まってんだろ?
なので、わざと負けようと思っていたが、
レインに、絶対に国際問題にはさせないから全力で戦って欲しいと言われてしまった。
こうまで言ってるんだし、仕方ない。少しばかり本気を出すか。
こうして、オレとレインの模擬戦が幕を開けた。




