第37話「実力」
それは圧倒的な戦いだった。
周りは炎に覆い尽くされ、たった1人の男に次々と斬られていく。
そして、彼は襲いかかる何人もの相手を屠り、勝利を手にした。
明紅の戦いに感想をつけるとしたら、オレならこうする。
それほど、彼らの勝負は圧倒的なモノだった。
明紅は相良優人を含む数人で敵陣へ突入。
そして、10分で敵の本陣の守りを崩し、勝利した。
これを見ていた周りのメンバーが息を呑むのが分かる。
だが、高尾さんは動じていない。
いや、高尾さんだけじゃない。
その周りに座る主力メンバーたちもだ。
それを見て安心した。
「よし、ミーティングだ。とりあえず、控え室に戻るぞ。」
高尾さんの言葉で、控え室に戻り、ミーティングを始めた。
そして、オレたちの出番がやってきた。
いや、オレの出番はほとんどないかな?
そもそも、ほとんどの人に出番がない。
なぜなら、敵陣へ突入するのは高尾さん1人だけなんだから。
だから、オレたち、他の全員はここ、本陣を守ることになっている。
でも、本当にいいのかな?
擬似魔法戦争の勝利条件は、敵陣にあるクリスタルに10秒以上だれかが魔力を込め続けるか、敵の全滅しかない。
でも、敵陣にあるクリスタルに魔力を込め続けるには、その間も襲いかかる敵を倒さなくちゃならない。
だが、実質、1人ではそれは不可能だ。
つまり、高尾さんは敵陣にいる相手すべてを1人で倒し、増援にも気を配りつつ、クリスタルに魔力を込めなきゃいけない。
だから、何人もの先輩が彼を止めた。
それはムチャだ、と。
だが、高尾さんはやると言って聞かなかった。
仕方なく先輩たちは、この作戦を了承した。
だが、たしかにこの作戦にも利点がある。
それは、明緑が研究されることが少なくなることだ。
たしかに、研究されて、有効打を打たれる人数は少ない方が断然いいだろう。
だが、その分、高尾さんの戦闘が多くなるため、高尾さんを研究する時間が長くなる。
先輩たちも、明緑のエースが研究されるのは避けたかっただろうが、高尾さんの言葉によって黙らされた。
そして、今、高尾さんだけが前線にいるという状況で、アナウンスが戦闘開始を告げた。
その瞬間、高尾さんは駆け出した。
今までいた場所から本陣へと。
だが、その前に、敵の主力部隊にぶつかる。
そして、その場所、だいたい、自陣と敵陣の中央付近で戦闘が始まる。
そして、その瞬間、高尾さんに魔法が降り注ぐ。
だが、それはすべて躱されていた。
そして、高尾さんの両手に握られる二つの黒い拳銃から放たれる銃弾と高威力の蹴りに次々と相手が戦闘不能に追いやられていく。
だが、さすがに敵も甘くはなかった。
敵は、高尾さんを囲みながら、攻撃していく。
しかし、その攻撃が高尾さんに当たることはなかった。
彼は、肉体強化魔法で、地を駆け、空を舞い、敵を殲滅していった。
防壁の魔法を使う者もいたが、その防壁ごと打ち抜かれ、戦闘不能になっていく。
近接戦闘を挑む者もいた。
だが、恐ろしい速さで急所に高威力の蹴りが入り、戦闘不能になった。
そして、彼の銃弾は音属性の魔法を纏い、恐ろしい速度と貫通力で敵の頭を正確に貫いていく。
そして、数分後、彼の周りに立つ者はいなくなった。




