第32話「変化」
オレは愛が言った言葉にフリーズしていた。
そのフリーズしているオレの唇に、愛は自分の唇を重ねた。
「!?」
オレは戸惑いを隠せなかった。
確かに、愛はオレに対し積極的にアピールするような少女であったが、こんなことをするような少女だった記憶はない。
魅月や桃香といい、オレの周りの少女たちは昔に比べて変わっている。
オレが爺さんと修行してるときになにがあったんだ?
オレが中等部3年生の頃、オレは爺さんの地獄のような特訓によって学校にさほど行ってない。
そのため、魅月も愛も会う機会がなかったのだ。
女性は「変わる生き物」だと爺さんが言っていたが、こんなに変わるものなのか?
いや、違うだろ?
絶対、オレがいないときになにかあったはずだ。
うん、そうに違いない。
「慧君、愛の唇はどうでしたか?」
唐突に愛が聞いてくる。
「えっ?んー、良かったよ?柔らかくて、弾力?もあって。」
オレが愛の言葉に驚きながら言うと、愛はニコニコして嬉しそうにしていた。
「良かったのなら、もう一度してあげます。」
最後にハートマークがついてるのがわかるくらい可愛らしく言った愛は、もう一度、オレの唇に自分の唇を重ねた。
そして、唇を離したあと、また唇を重ねる。
今度は舌が入ってきて、オレの口の中を蹂躙する。
「ふぅ〜。慧君補給終わりました。」
「慧君補給ってなんだよ?」
やっと愛のキスの嵐から解放されたオレは、その聞き捨てならない語句の意味を聞いた。
ちなみに、キスの嵐から解放されても、まだ愛はオレの上に覆いかぶさっており、オレは身動きが取れない。
「慧君補給ですか?それはもちろん、愛している慧君のエネルギーを補給する活動に決まってるじゃないですか。あ、また少し慧君エネルギーが減りました。補給します。」
そう言って、また唇を重ねた。
「それはそうと、身動きが取れないから少しどいてくれないか?」
「え?嫌ですよ?だって、どいたら慧君逃げちゃいますよね?」
「少なくとも、この部屋からは出ない。だから、どいてくれ。」
「ん〜、仕方ないですね。じゃあ、ハイ。」
そう言って、愛はやっとオレの体の上から退いた。
「で、慧君、これから何します?結婚でもします?」
「いや、できねぇから。」
ニコニコしながら言う愛にオレはツッコミを入れる。
「じゃあ、なにするんですか?」
愛は相変わらずニコニコしながら二度目の質問をする。
「ん?そりゃあ、もちろん部屋からお前を出して、お前の引きこもりを直すために説得するけど。」
オレは素直にそれに答える。
「ん?部屋から出る?何言ってるんですか?愛はもちろん、慧君もこの部屋から出ませんよ?いや、慧君の場合は部屋から出たくても、愛が出しませんけどね。」
普通なら冗談に聞こえるが、少し雰囲気が変わった愛が冗談のように笑いながら、可愛らしく言う言葉が本気であるとオレは確信している。
確かに、普通の人間が言ったのだったら、冗談だろう。
でも、コイツが普通ではないことをオレは知っている。
コイツは、正直言ってネジが外れている部分がある。
もちろん、それ以外は普通、いやかなり優秀な人物なのだ。
が、オレが絡むとコイツは普通ではない。どこか異常なのだ。
「いや、出すよ。今度こそ。」
「何言ってるの?この私が二度も同じことすると思ってるの?」
口調がさっきと変わり、纏っている雰囲気でさえカンペキに変わった愛はこう言った。




