第27話「冷徹な猛獣」
爺さんから羽鈴社長についての話を聞いた次の週。
いつものように早く起きたオレは、みんなが起きるのを待つ。
そして、いつものように桃香が一番最初に起きてきて、他のヤツらを起こす。
そして、みんなで学校の支度をし、朝食をとり学校へ行く。
姫依はすでにこの習慣に慣れたようだ。
早いな。オレでもそんなに早くは慣れることはなかったぞ。
だが、姫依が元気に過ごしているのは喜ばしいことだ。
そんなことに微笑んで、「慧、なにニヤけてんの?気持ち悪い」と、言われたりする平穏な日々。
それが続いていた。
この日までは。
その日、いつものように登校してきたオレはあることに気づいた。
教室の前に見慣れない生徒がいることに。
その生徒は、鋭い目つきをしていて、どことなく人をよせつけることないイケメンだ。
彼はさほど身長が高くなく、見た感じ、オレよりだいたい7cmくらい低く見えるので、165cmくらいだと思われる。
「ん?あれ、高尾さんじゃないですか。どうしたんです?」
その男の名前は高尾響弥、オレの一つ上の先輩で「冷徹な猛獣」という異名を持つ天才魔法使いだ。
「そろそろ魔法学園競技大会春の部が始まるからな。ソイツの魔法戦部門のスカウトだ。」
魔法学園競技大会とは、全国の魔法学園の生徒が一斉に集って日頃の成果を見せる大会だ。
それは、全国ナンバーワンの魔法学園を決める大会でもあり、春、夏、秋、冬、と一年間で4回も行われる。
魔法学園競技大会には○○部門の○○といったようにたくさんの種目がある。
そして、魔法戦部門とは数多くある魔法学園競技大会の部門の中の一つで、魔法論理と並び、最も得点が高いものの一つだ。
「別にいいですけど。オレはなにに出るんですか?1体1?それとも、2対2とか?」
「いや、お前は擬似魔法戦争だ。」
「は?」
ついマヌケな声を出してしまった。
でも、仕方ないだろ?
だって擬似魔法戦争ってのは、魔法学園競技大会で最も得点の高い種目なんだから。
「いやいやいや、擬似魔法戦争にまだ入って間もないオレが出るんですか!?有り得ないでしょ!」
「いや、そんなの関係ねぇ。実力のあるヤツを選ぶのがオレの仕事だ。」
「先生たちの意見は?」
「別に構わねぇ。オレには問答無用で擬似魔法戦争のメンバーを7人決められる権利がある。」
「それをオレに使うんですか!?」
「あぁ、当たり前だ。あと、そこにいるレイン・ヴェルナーと沢村魅月もだ。」
「「え!?」」
それを聞いて、二人は驚いた。
自分たちも出るとは夢にも思わなかっただろうからな。
「慧はわかるけど、私たちもいいんですか?」
「あぁ、だからさっきから言ってんだろ。オレには問答無用で7人決められる権利があるって。」
「でも・・・」
「別に出たくないなら、出なくてもいい。だが、お前らほどの実力者を出しておかないのは、気に食わない。」
不安そうな表情で言う魅月に高尾さんは言った。そして、高尾さんの言葉は続く。
「沢村の実力は中等部で知ってるし、ヴェルナーはS級の魔法を使ったと聞く。お前らの実力なら誰にも文句は言わせない。安心しろ。なにかあっても慧がなんとかしてくれる。」
「え?ちょっと待って下さいよ!なんでオレなんすか?」
「師匠の受け売りだ。」
そうだった。
この人の魔法戦の師匠って、叔父さんだった!
「まぁいい。あと、4つ枠が余ってる。いいと思ってるヤツがいたらオレに言え。ではそろそろショートが始まるから戻る。じゃあな。」
こうして、オレ達は1年から魔法学園競技大会の目玉である擬似魔法戦争に出ることになった。




