第22話「最後で唯一の恩返し」
「そうか。これは夢?夢なんでしょっ?」
崩れ落ちた姫依が叫ぶ。
そりゃ、確かにショックだろう。
親が国際的な犯罪者だったんだから。
しかも、自分から正体を表したし。
「姫依、確かにお前の気持ちもわからなくはない。でも、これは現実だ。」
「そんな・・・嘘でしょ。確かに父さんはずる賢くて、目的のためならなんでもやるときがあるけど、そんなことまで・・・」
「・・・」
この空間に沈黙が流れる。
その沈黙をぶち壊したのは、他ならぬ姫依だった。
「ねぇ、慧。父さんは捕まったらどうなるのかな?」
「とりあえず、長い長い取り調べが待ってる。そこから、やったことによって刑が決まるけど、ウロボロスのメンバーって時点で重い罪になることは確実だと思う。」
「殺されることは?」
「あるかもしれないが、確率としては大して高くないだろう。」
「そっか。父さん。これ以上、罪が重くならないうちに大人しく捕まってもらうよ。それがあなたに対して私ができる最後で唯一のの恩返しだからッ!」
姫依は立ち上がり、羽鈴社長の方を向かいながら言った。
「私を倒せるとでも?」
「難しいだろうね・・・私1人だったら。」
そう言って、オレの方を見てくる姫依。
「手伝ってくれるよね?」
「あぁ、もちろんだ!」
オレはそう言って、笑いながら力強く頷く。
こうして、オレと姫依VS羽鈴社長の構図が出来上がった。
先に仕掛けたのは姫依だった。
姫依は、金の鎖を転送魔法で手に転送。
そこから、数多くの鎖を自分自身の体のように扱い、羽鈴社長に襲いかかった。
そのかなり多いはずの鎖を羽鈴社長は余裕で躱す。
「なんだ。この程度か?」
「そんなわけッ、ないじゃんッ!」
羽鈴社長の後方から鎖が押し寄せる。
「ぐッ!」
それは予想外だったようで、羽鈴社長に鎖が何本か掠った。
「やるようになったなァ、姫依!」
「どっかの誰かさんが、こんな感じで英才教育を施してくれたおかげでね。」
そうして、鎖が雷を帯びる。
そして、羽鈴社長に向かって鎖が伸びていく。
「だが、まだまだ甘いのだよ。」
羽鈴社長が指をパチンッ、と鳴らす。
すると、羽鈴社長の目の前で雷が轟いた。
「フッ。」
そう言って、ドヤ顔で娘を見る羽鈴社長にオレは後ろから斬りかかった。
「ぐッ!」
攻撃はヒットしたが、この感触は浅いな。
だが、炎属性の魔法を使っていたからダメージは大きいはずだ。
後退したオレに姫依が話しかけてくる。
「ちゃんと一撃で仕留めてよ。」
「あぁ、悪い。」
「そのおかげでもう今みたいな奇襲は使えないじゃん。」
「そうだな。どうしよっか?」
「とりあえず、斬りかかって。サポートするから。」
「了解。」
言われた通り、羽鈴社長に斬りかかる。
羽鈴社長は、いつの間にか手にしていた剣でこちらの攻撃を防ぐ。
オレが後退した瞬間、姫依の鎖が羽鈴社長を囲んだ。
これでどうだ?
羽鈴社長はまたしても、鎖を避ける。
ちっ。
さっきの魔法道具か。
アレはめんどくせぇな。
壊せればいいんだが、羽鈴社長が壊させてくれないだろう。
どうするか。
考えていると、羽鈴社長が攻撃を仕掛けてきた。
オレの方が速いが、羽鈴社長も速い。
しかも、剣術が見事なほど完成されているので、かなり厄介だな。
「疲れるけど仕方ないし、アレを使うか。」
「アレとはなんだね?魔法道具とかかな?」
オレの独り言を聞いた羽鈴社長が聞いてくる。
「そんなんじゃねぇさ。オレが持ってるただの魔眼だよ。」
そう言って、オレは微笑みながら魔眼を使う。
オレの黒い瞳が紅く輝いた。




