第17話「第3ラウンド」
「早くこっちに来いよ!オレを殺すんだろう?」
さっきから挑発を繰り返す慧のお父さん。
もう10分もこうしている。
いくらなんでもおかしすぎるでしょ!
なにやってんの?
そのことを耳元で伝えると、笑いながら小さな声で説明してくれた。
「あ〜、アイツは見た感じ、直情型のアホだから、こうしとけばすぐ魔力が切れるまで魔法を使い続けるかなぁ、と思って。案の定、今のところそうなってるし。」
「でも、なんでアイツはあそこから動いてないんですか?」
私はさっきから思っていた疑問をぶつける。
あの金髪の狂人があそこから動いていない理由が、まったく分からない。
いや、魔法なんだろうけど、支配魔法であんなことできるのかな?
「あ〜、アレ?アレはね、オレの魔法と魔剣イノセントの合わせ技みたいなモンかな。」
「?」
わからず、首を傾げる私。
「オレはさっきの魔法、絶対空間支配でこの辺の空間すべてを好き邦題出来るわけ。それにイノセントの能力を足したんだ。」
「?」
まだわからない。
どういうこと?
「空間自体の密度を変えたって感じかな。アイツの周囲の空間でアイツが1センチ移動するためには、体感的に数100キロもの距離を移動しなきゃ行けねぇんだ。」
「簡単に言うと?」
「アイツは数100キロ走ってやっと、たった1センチ移動できる状態になったってことかな。」
え!?
なんなの、それ?
もうそれやられたら、負けじゃん!
「でも、永久には使えない。オレの魔力も無限じゃねェからな。だから、アイツを怒らせて先にガス欠に使用としてるわけ。」
「なるほど。」
相手の心まで支配するなんて。
これが実戦経験の差というやつなのかな?
感心していると、ヤツの諦めたみたいだ。
「我は、力を操りしモノ。我の望み通り、我が宿敵を潰すがごとき力を我に授けよ!そして、その力で全てを我が前から排除せよ!あぁ、我こそは大いなる力の導き手なり!空間を潰し、生命を潰し、心まで潰すモノなり!」
「超次元重力ッ!!」
こうして、狂人は空間ごと破壊した。
「オイオイ、そりゃ予想外だぜ。」
「ボクを侮辱したお前を殺すッ!殺すッ!殺すッ!」
狂人の顔は、ドがつくほどの怒りの形相をしている。
「死ねッ!!」
狂人が重力を操り、浮遊しながら向かってくる。
「てめェが死ねやッ!」
慧のお父さんが、魔剣イノセントを抜き、迎え撃つ。
「ハァッ!!」
狂人が重力を思いっきり掛けにくる。
「効かないねッ!」
慧のお父さんは、魔剣イノセントで作られた異空間に重力を移動させ、重力から身を守る。
「殺すッ!殺すッ!殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すッ!」
肉体強化の魔法で自分を強化した狂人が、慧のお父さんに突っ込む。
慧のお父さんは難なくそれを捌ききって、吹き飛ばす。
「ったぁくぅッ!死にやがれよォッ!!!」
「超次元重力ッ!!」
空間すべてを破壊するほどの力属性魔法が、押し寄せる。
「さすがにこりゃマズイ。」
そう言って、慧のお父さんは私を抱えて、ジャンプする。
そして着地し、私を降ろしたとき、
「死にやがれェッ!!」
狂人が、突っ込んでくる。
手にはさっきと同じような斧を持って。
次の瞬間、それは振り下ろされる。
そして、私を庇って、慧のお父さんの左手が飛んだ。
「ぐッ!」
バックステップで後方へと下がり、狂人との距離をとる慧のお父さんは左腕を抑えた。
「さすがにキツイな。」
こっちを向いて笑いながら言う。
「こりゃ、桃香ちゃんだけでもこの場所から逃げてくれないか?」
「そんなことできませんッ!」
「やっぱ、マジメだなぁ。桃香ちゃんは。」
私が涙を流し拒否すると、慧のお父さんは笑った。
そのとき、男の子の声が聞こえた。
聞き慣れた声だ。
「オイッ!お前ら、今、どうなってやがるッ!?」
これだけの言葉で誰の声かわかる。
私が声のする方を向くと、慧が立っていた。




