ロディ・ヴァンスタリアの本性
「ロディ様、本日はお招きいただきありがとうございます。お誕生日、おめでとうございます。」
私は締め付けられるような胸の痛みを隠しながら、和かに微笑み返し、挨拶をした。
「ありがとう!今日は楽しんでいってね、お姫様。」
私の挨拶に満足したのか彼はそう言って微笑み、正面から横を通り過ぎた。
…コッ、…コッ………
背後から足音が遠くなって行くのを感じていると
………コッ、コッ、コツ
遠くなったはずの足音がまた近づいてきた。
…コツ、コツ!…ピタッ
私の真横でその足音は止まった。
振り返らずとも私の影に男性の影が真横から被さるのが見え、彼がこちらに戻ってきたことを理解した。
確認しようと真横を向こうとしたとき、
「パーティーの後、少しだけ向こうの来客室へ来てくれ。」
耳元でそう告げて彼は去っていった。彼の声色からは感情や意図は読み解けず、断りを告げる間もなく彼は去って行ってしまった。
その後のパーティーでは、レイオンやネオールと一緒に食事を取り、楽しい一時を過ごした。
程なくしてパーティーの締めくくりの挨拶が聞こえ、穏やかだった心を薄暗い感情が覆いつくした。
来客室へ行かなければならない…。
行くとも約束していないのだから、そのまま帰ってしまおうかとも何度も考えたが、相手は隣国の王太子なのだ。たとえ友人の立場でも、断りもなく帰ることは気が引ける。
悩みに悩んだ私はレイオンとネオールに事情を説明し、部屋の外で待機してもらい、来客室に1人で入室することにした。
部屋に入ると大きなテーブルと、その大きなテーブルを向かい合って囲むようにソファーが2つ置かれていた。
ロディ様は見当たらず、私はソファーに腰掛けて待つことにした。
私が腰掛けるのを待っていたかのように、後ろの扉が開いた。どうやら私が入室した扉の反対側にも扉があったようだ。
扉を振り返ると、そこにはロディ様がいた。
彼はこちらに近づき、向かい側の席ではなく私が腰掛けていたソファーに腰掛けた。
「今日は楽しんでくれたかい?早く2人きりになりたかった…。」
会場で見た笑顔と同じなのに、その笑顔の裏の表情はきっと笑っていない。
ドクッ…と胸が大きく警告を鳴らす。
彼を静かに見つめると、彼はそのまま話を続けた。
「私は立場上、頻繁に会いに行くことが出来ないから……変わりないかい?…他の男に何かされてないよね?…弟君にも。」
「…レイオンは弟よ?そういう関係じゃないわ。」
「…それでも、血は繋がってないんだろう?婚姻は結べるじゃないか。…今日だって、すごく楽しそうにしていた!」
そう言うロディ様の表情は、パーティーに出席していた人とは同一人物には見えないほどに不安そうな顔をしていた。
そう…彼の本性はヤンデレなのだ!
お金、地位、力、称賛、何でも手に入れてきたからこそ、手に入らないものに不安と執着心が湧いているのだろうか。
「ねぇ…お姫様、聞いてる?私のことを見て?」
彼は私が他の男性のことを考えていると思ったのか、隣に座る私を抱きしめ、そのままソファーへと押し倒してきた。
強い力で抱きしめられ身動きが取れない。髪に、額に、頬にキスを何度も降らしてくる。そして、そのまま唇にキスをされそうになる寸前で、…彼は動きを止めた。
彼の瞳が寂しげに揺れながら私を見ていた。
数分間、私を見つめた彼は静かに体を離し、ソファーに座り直した。
「今日はこれくらいで…我慢する。」
彼はそう言い残して、入室してきた扉からまた出て行ってしまった。
その後はレイオンとネオールに連れられ馬車に乗り帰宅したが、心の警告は鳴り続けていた。
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