血の繋がらない弟
早朝に窓を開けると吹き抜ける風が数日前までは肌寒いと感じていたのに、今日は涼しいと感じる。夜の薄暗い街並みに光が差し込む時刻も早くなってきていた。そろそろ春が終わり夏がやってくる。
最近の私は寝付きが悪くなるほどに悩んでいることがあった。
「お嬢様、おはようございます。」
私室で考え込んでいる彼女に透き通る優しい声は届いていなかった。
様子がおかしい彼女に彼は心配になり部屋の中へ入室する。
「…?お嬢様、どうかされましたか。」
ネオールはベッドに腰掛け座る彼女の元に、静かに近づき声をかけた。
彼女は視界に男性の姿が見え、漸くネオールが来たことに気付いたようだ。
「あ…、ごめんなさい、その、決められなくて悩んでいましたの。」
「あぁ、1ヶ月後にあるパーティーのエスコート役のことでしょうか?」
私が悩んでいたこと。
それは1ヶ月後にある隣国の王太子の誕生日パーティーに招待されており、そのエスコート役を決めなければならないことである。
「…ええ、昨年と同様にレイオンにお願いするのも…彼もそろそろ年頃だし、いつまでも私と…。」
「レイオン様は気になさらないかと思いますが…、お嬢様、朝食を終えた後に直接お話しされてみてはいかがですか?」
「そうね、そうするわ。」
私たちは長い渡り廊下を歩き、階段を降りて食堂へと向かった。
朝食を済ませた私は、レイオンの部屋へと向かう。
レイオンは私の弟だ。弟と言っても彼は孤児で、私が幼い頃に両親に引き取られて養子となった。血は繋がっていない。年齢も誕生日が私のほうが早いというだけで同い年である。学園にも一緒に通い、弟と言うよりは友人という言葉がしっくりくる関係である。
レイオンの部屋には扉を開け広げ、警戒心の欠片もない様子でソファに座り本を読む彼の姿があった。
「レイオン、今いいかしら?」
扉が開いていたことからノックをせず入室して声を掛けたのが良くなかったのか、一瞬彼の肩がビクッと動く。少し驚かせてしまったようだ。
「…!…姉様!どうしたの?」
茶色い純粋な瞳が私を写した。肩口で切り揃えられた緑色の髪は丁寧に整えられていて、そよ風が吹くとサラサラと音が聞こえてくるようだった。彼の幼い頃は女の子と間違われるほど可愛らしい顔立ち、透明感のある色白の肌、孤児とは思えないほどに立ち居振る舞いが綺麗で人形のようだった。きっとどこかの貴族の家で産まれたのではないだろうか。そんな彼も今では純粋な瞳と色白の肌は変わらないが、背は伸び男性らしさを兼ね備えた中性的な容姿となっていた。
「その…、今年も私と誕生日パーティーに参加してもらえないかしら?」
「それは…、僕が姉様をエスコートするってこと?」
「…あ、もちろん…あなたに想い人がいたり、そろそろ年齢的にも私とは…と思っていたら断ってくれて構わな…」
「行く!!僕がエスコートする!」
私の言葉に被せ気味でレイオンは答えた。
彼も私とは似ていなくても綺麗な顔立ちだし、想い人や想われている人の1人や2人くらい居てもおかしくは無いのに…どうしてそんなに純粋な瞳から嬉しさが伝わってくるの…?
まぁ…でも、とりあえず悩みは解決したし…と深く考えてはいなかった。
気持ちが軽くなり、今年も弟と楽しく誕生日パーティーを過ごそうと呑気なことを考えていたのだった。
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