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悪嬢転生!?〜8歳の悪役令嬢?に転生した私は、10年後、内定婚約者である第三王子に首を刎ねられるみたいなので、今のうちに関係修復頑張ります!〜   作者: 月末了瑞
シリウス真相編

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15話:ネガティブな葛藤なんて雨で流しちゃえ! いや待って!? 今のなしで! こんな豪風雨が来るとか私、聞いてないんだけど!?・前編


 そんな彼の心情など知らないレイは、翌日も再び王宮へ足を運んでいた。


「シリウス様に会いに来ました!」


 どこかぎこちない声色を含みながら、門前に立つレイ。門衛はその姿を見るや、一瞬だけ目を逸らす。その態度からして、既に答えは決まっているも同然。だが、すぐに追い返すことはしたくないのだろう。門衛は苦い表情のまま、愛想笑いをひとつ。


「しょ、少々お待ちください」


 そう言って、わざわざ無駄な確認をしに行ってくれた。


 そんな門衛の態度に、レイは眉を下げながらもぼそり。内心で謝罪を漏らす。


(毎日ほんとごめんなさい)


 本当は、もうこんなこと止めればいい。どうせ、彼は会ってくれない。そもそも1ヶ月も通っているのに、毎度毎度、何かと理由を付けて謁見を拒絶してばかり。だから、何をしても無駄でしかない。もう諦めるべきだ。そう思ってしまう。


 だが、ここで行動を止めてしまえば、妖怪火吹きハゲ太郎から出ていけ! と頭ごなしに追い出されるのがオチ。そうなれば、待つのはシリウスからの断罪――すなわち、首を刎ねられてレイは死ぬ。


 それに、セレスティアがせっかく背中を押してくれた。ここで止めれば、彼の行動さえも水の泡。ただ、セレスティアを無意味に振り回してしまっただけの最低な人間に堕ちてしまう。


 しかし――


(こんなことして、本当に意味あるのかな……)


 再び心が折れそうになるレイ。けれど、今は踏ん張りどころ。彼女はそう自身に言い聞かせながらも、門衛の帰りを待ち続けるのだった。


 10分後――


 やがて戻ってきた門衛は、申し訳なさげに眉を下げると、いつも通りの言葉を返す。


「本日も……謁見は難しいとのことです。申し訳ありません」


 レイはその答えがわかりきっていたといわんばかりに薄らと笑顔を作ると、「また明日も来ますね!」そう言ってチラリ。ほんの少しだけ、王宮へと視線を投じる。


 広々とした門前。怪物像(ガーゴイル)が、威圧するような鋭い視線で彼女を睨みつけている。レイは、そんなガーゴイルから視線を逸らしながらも、シリウスの姿を無意識に探した。


 だが、窓は陽光が反射し、彼が何処にいるのか――わからない。そもそも彼は、レイ・ヴァーティンのことが大っ嫌いなのだ。こちらのことを気にかけ、窓際に立っているなど現実に考えて有り得ない。


 だというのに、なぜ自分は彼を探してしまうのだろうか。いや、死にたくないそんな気持ちが強いからなのだろうが――


(はあ……。セレスティアから背中押して貰えてなかったら、もうきっと出ていった方がマシだって逃げてたかも。だからセレスティアには感謝しなきゃなんだけど……実際、どっちの方がいいんだろ? やっぱり、私は死んだ方が……)


 ネガティブな思考が脳裏を過ぎるが、やはり“諦めたくない”という感情は捨てきれない。


 そもそも、誰が嬉しくて自らの命を差し出すというのか。いや、絶対誰もいないだろう。


 死にたいと言ったところで、勢いがなければ人などそう簡単には死ねない。事前準備などしてしまえば、いつでも死ねるとそれを免罪符に、生き続けてしまう。


 それが自身の意思か、それとも生存本能かは――わからない。


 けれどきっと、人間なんてそんなもの。自身の命を軽く見ていても結局は死ぬことに臆病なのだ。感情があって知能があって、ずっとずっと、それに縛られ苦しみ続ける。そんな運命に藻掻き続けるしかないのだろう。


(はあ……なんか考えるの面倒くさくなってきちゃった。もうね、こういう時、なんかパァッとス〇バとか、カラオケとか行って気晴らししたい。今、新作どんなの出てるんだろ? 最後に確認した時は、確か――イチゴチョコレートフラペチーノだっけ? 絶対クリームとチョコチップマシマシにした方が美味しいと思うんだよね。んで、ブレベに変更は絶対! でも、そうするとめっちゃお小遣い飛ぶし、太るか。はぁ……、久しぶりに飲みたいなぁ〜。あの美味しさはほんっっっと、癒しなんだよね。ていうか、なんでここ、ス〇バないわけ!? 絶対店出した方がいいよ! みんな、ストレス溜まったら絶対飲んだ方がいい!)


 そんなことを考えながらも、この世界にないものを強請(ねだ)ったってしょうがない。彼女は「はぁ……」と溜め息を漏らしながらも、くるり。寄り道することなく、そのままヴァーティン邸への帰路を辿るのだった。


 その姿を遠くの窓から見られていることなど知ることもなく。


 ◇◆◇


 一方、会えないことを理解しているだろうにもかかわらず、今日も無駄足を踏むレイの姿をチラリ。窓の方からひとつの視線が見つめていた。


(ほんと、毎日毎日。飽きずによく来れるものだな)


 シリウスは、内心でぽそりと呆れを吐き出しながらも、ソッと視線を逸らし、すぐさま執務机に戻ろうとした。


 同時。控えめなノック音と共に、フィラクスが執務室内へと姿を現したかと思えば、当たり前の態度で口を開いた。


「坊っちゃん、本日もレイお嬢様がお見えになられていましたが、そろそろお会いなさってあげてもよろしいのでは?」


 それは、一種の正論なのかもしれない。だが、その正論が妙に腹立たしく思い、シリウスは思わずバンッ! と机を叩きながらも声を張り上げてしまう。


「いい加減にしろ! 毎日毎日、僕は会うつもりなんてないと言っているだろう!? そもそも僕はあいつに会いに来いなんて言っていない! あいつが勝手に来ているだけなのに、なぜ僕が時間を作ってまで会わなければならないんだ!」


 しかし、なぜフィラクスを怒鳴りつけたのか――わからない。


(どうして僕はこんなに怒っているんだ……?)


 ふと疑問に思い、そう内心で問いかけてみるものの、その答えは霧の中。その輪郭さえ掴めない。


 けれど、やけにモヤモヤが募ってくる。


(なんなんだ、この嫌な感覚は)


 そんなモヤモヤを振り払うようにシリウスは、再度窓の外へ視線を投じる。だが、そこに彼女の姿はどこにもない。


(……っ! なんで僕があいつのことを気にしなきゃいけないんだ!)


 シリウスは一瞬でも彼女を探そうとしてしまった自身に腹を立て、頭をブンブンと大きく横に振る。そして、不安定な決意をより強く固めるため、フィラクスへと鋭く命じた。


「明日以降も来るようなら追い返せ」


 そう言って、声を荒らげ命じる坊っちゃん。その声は一聴すると冷たさしか宿されていない。


 しかし、その声の端々に滲むのは、「本当にこれでいいのか?」と言う自問の響き。


 フィラクスは、そんな坊ちゃんの本音に気づきながらも一言。


「かしこまりました」


 軽く胸に手を当て忠義を示す。


 だが、その実。坊っちゃんには素直になってもらいたいと願っていた。


 だからこそ、毎日のようにレイお嬢様の来訪を告げていたのだが――子供心は複雑なもの。


 本当は理解しているにもかかわらず、防衛本能という名の理性が、再び傷つくことを恐れ、本音を必死に隠そうとしてしまう。


(坊っちゃんも、あの件の真相を既に理解していらっしゃるでしょうに……)


 フィラクスは、内心でボソリと呟くが、それを言ってもよけい怒りを増幅させることくらい理解している。


 ゆえに彼は、それ以上の発言を控え、そのまま部屋を後にする。


 恐らく坊っちゃんは、私が部屋を出ればすぐさま、窓へと視線を投じ、レイお嬢様のお姿をお探しになられることでしょう。と予測しながら――


 そんなフィラクスの予言など知らぬシリウス。彼は、静寂に支配される執務室内の中。軽く胸元に手をやり問いかける。


(僕は、何がしたいんだ……?)


 だが、そんな疑問を投じたところで、わからないものはわからない。シリウスは、フィラクスの予言など、まるで知る由もないと言わん様子で立ち上がると、再び睨みつけるようにして窓の外を見つめた。


 青々とした空に、時折通り過ぎる馬車。けれど、そこに人が通る気配など皆無。


 そんな外の景色を見遣りながらも、ぽつり。


(……どうせ明日も来るんだろ?)


 あまり乗り気になれない執務を再開させるのだった。


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