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悪嬢転生!?〜8歳の悪役令嬢?に転生した私は、10年後、内定婚約者である第三王子に首を刎ねられるみたいなので、今のうちに関係修復頑張ります!〜   作者: 月末了瑞
シリウス真相編

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10話:え、なんでいるの!? えっ、食べていいの? ありがとう! へへへっ!・後編


 しかし、どうやら行先は定まっていなかったらしい。セレスティアは、適当な露店に向かいそこで足を止める。


(あれ……ここって……)


 しかし、そこは何のイタズラか――以前アリスと初めてのお出かけをした際に、レイが目に留めた串焼き屋だった。


 彼女は何故ここに? と疑問を覚えながらも、すぐさまセレスティアへと声をかけようとした。


「えっ、用事って……」


 しかし、その言葉がすべて紡がれる前。セレスティアが店主へと声をかけてしまう。


「二本くれ」


 無愛想に紡がれたその声は、特に感情など篭っていない。そんな愛想もへったくれもない声音(こわね)に店主は、「あいよ」と一言。木製の串に刺された肉を鉄板で焼き始める。


 熱々の鉄板に、ジュッと肉が焼ける音が響く。そんな肉の上に、店主が塩コショウや荒く刻まれたタイムやローズマリーなどを振りかける。


 瞬間、肉の甘く芳醇な香りと、ハーブの香りが、ワルツを踊るようにふわり。レイの鼻腔を通りぬけていく。


 そんな芳しい香りを嗅がされてしまい、途端にくう〜。


 レイの腹の虫が小さく鳴き声を漏らしてしまう。だが、こんな場所でお腹を鳴らすなど恥ずかしい。ゆえに彼女は、バツが悪そうに顔を赤らめプィッと一言。


 「私じゃない!」


 と全力で首を振った。


 そんな底なしのバカが鳴らす、腹の虫を聞いたセレスティア。彼は、チラリと底なしのバカを見遣ると、ぽつり。


(こいつはなぜ、そんなところで強がるんだ?)


 ガキすぎて、思わず口元を緩めてしまった。


 とはいえ、底なしのバカにはバレずに済んだのは不幸中の幸いだろう。もしそんなところを見られていれば、きっと底なしのバカのこと。セレスティアを揶揄(からか)い茶化していたことだろう。


(ほんと、関われば関わるほど、こいつが悪嬢と渾名(あだな)されるような器じゃねぇことが理解できちまう)


 とはいえ、なぜ底なしのバカは、このような悪評を広められているのか――甚だ疑問しかない。


 けれど、その理由を探ろうにも本人に直接聞いて良いのか、わからない。ゆえにセレスティアは、続けざまにぽつり。


(まっ、貴族は暇人が多い。こいつがバカなことをやらかして反感でも買っちまったんだろう)


 底なしのバカならば有り得る。そう結論づけると、それ以上のことはあまり考えることなく、串焼きが焼き上がるのを待つのだった。


 ◇◆◇


 やがて、数分後――


「へい、お待ちどう! 1本、1す――」


 お店の人が、焼きたてホヤホヤの串焼きを、木の皿に乗せセレスティアへと差し出した。


 セレスティアは、その木の皿を当たり前のように受け取ると、アスト(変な絵が描かれた)銀貨(コイン)を一枚、投げるように渡す。


※アスト銅貨:一枚千円程度/銀貨:一万程度/金貨十万程度※


 それを認めたお店の人は、「うお、え!?」と変な声を上げながらも、ギョッと目玉を飛び出させ、困惑気味にセレスティアへと声をかけようとする。


「ぎ、銀貨!? お、お客さん、釣り――」


 だけど、そのすべてが紡がれる前。セレスティアは「要らん」と一言。片手を小さく振って露店を去っていく。


 レイは、そんなお店の人とセレスティアを交互に見遣りながらもキョトン。あんまよくわかんないし……と考えることを放棄すると、小さくぺこり。


「ありがとうございます」


 と、焼いてくれたお礼を伝えた後、セレスティアの背を追いかける。


「ちょ、セレスティア歩くの速いよ! もうちょいスピード落として!」


 そう大きな声を上げ、セレスティアの後を追う底なしのバカ。


 その声はよく通り、周辺にいる客や店主らが、好奇の目を向けているのがよくわかる。


(はぁ……こいつのどこが令嬢だ。ただの野猿だろ)


 そんな周囲の視線に煩わしさを覚えながらもセレスティアは、底なしのバカを野猿と評価し直すと、彼女待つためピタリと足を止めた。


 瞬間――ドンッ!


「ぶへっ……っ!」


 止まることを知らない猪のように野猿。彼女は、新手の嫌がらせのようにセレスティアの背中に突撃する。


 そして、スゥッと息を吸い込み謝罪をするのかと思えば、「ちょっ、」そう言って、抗議の体制に入り始めた。


(はぁ……めんどくせぇ)


 そんな野猿の態度に呆れを覚えながらもセレスティアは、彼女が言葉を紡ぐ前に木皿に載せられた串焼きを一本、無言で口の中へ突っ込んでやる。


 刹那、野猿は目を丸く見開くともぐもぐと口を動かし――一拍。突然意味のわからないことを口にし始めた。


「ふぇ? ははひひふへふほ!?(え? 私にくれるの?)」


「何言ってるのかわからねえけど、腹減ってたんだろ?」


「……へへへっ。フェフェフヒィアはひはほー!(……へへへっ。セレスティアありがとう!)」


「はあ……食うか喋るかどっちかにしろ。お前、貴族だと言っていたのは嘘か?」


 どこか呆れ気味に悪口を言ってくるセレスティア。レイは口から串を取ると、プクリと頬を膨らませ、渾身の抗議を示す。


「ちゃんとした貴族の娘だもん!」


 だが、彼は何処吹く風。


「そうか、サッサと食っちまえ」


 そう言って、串焼きを上品な所作で食べ始める。


 そんなセレスティアの所作をじっと見つめながらもぽつり。レイは内心で関心を示してしまった。


(……セレスティアって、本当に貴族だったかんじ? いや、でも貴族ってもうちょいなんか喋り方もうふふ、あはは! な感じじゃない? って言うことは没落……って奴?)


 だが、考えてもわからないこと。それに加え、セレスティアが貴族か否かなど興味がない。ゆえにレイは、彼の後に続くようにして、はむっ。


 先ほどまで、何か思い悩んでいた人物と、同一とは思えないほど、満面な笑みを浮かべ串焼きを食し始めた。


 その顔は本当に幸せそうで――


(こいつ、ほんとわかりやすいな。すぐに顔に出ちまってる)

 

 若干呆れを覚えながらも、近くにあった屑入れに、食べ終わったばかりの串を投げ入れた。


 同時、野猿が何か思い出したらしい。


 先ほどまでの幸せそうな顔をしていたかと思えば、「あっ!」と一言。


「お金! いくらだった?」


 と、肩掛けのショルダーバッグを漁り、じゃーん!


 どこか得意げに財布を見せてきた。


 恐らくだが、今回はちゃんと財布持ってきたんだよ! と強調したいのだろう。


 しかし、その財布はどう見ても購入したて。多分だが、購入してから一度も使用されていないのだろう。盗難防止用の紐付きの封蝋(シーリングワックス)が、場違いなほど不格好に揺れている。


 それを認めたセレスティア。彼は、絶対中身入ってねえだろ。と、思わず苦笑を浮かべてしまった。


 だが、野猿は自信満々な様子。ここでそれを指摘してしまえば、せっかくの勢いを削ぐことになる。


 彼は僅かに考えを巡らせながらも、適当に「じゃあアスト“銅貨”一枚よこせ」と言ってみた。


 すると、何が嬉しいのか。野猿は、「ふぁーい!」と串を咥えたまま、元気の良い返事をひとつ。すぐさま財布を開く。


 しかし――


「はへ!? なんで!?」


 中から出てきたのは、型崩れ防止の羊毛の塊ただひとつ。それ以外のものが出てくる気配は無い。


 そんな財布に驚きを隠せない様子で、何度も何度も確認する野猿。だが、紐付きの封蝋(シーリングワックス)が着いている時点で、想定内のこと。


 セレスティアは内心で野猿らしいと苦笑を浮かべながらも「気にすんな」と一言。


「ま、俺の奢りだ」


 と告げてやった。

 

 だが、野猿は変に真面目すぎるらしい。


「え、でも……ごめんね?」


 素直にセレスティアの好意を受け取ればいいものの、そう言って、しゅんっと眉を落とし凹んでしまう。


 だが、そこで凹む理由がわからない。それに、野猿を見ていると、ふととある場所に連れていきたくなった。


 そのため彼は、チラリと野猿のことを気にかけながらも、歩を進める。歩き始めれば勝手に着いてくるだろうと想定して。


 しかし――


「はぁ……」


 セレスティアの考え通り、ゆったりとした歩調で彼の後を追いかけるレイ。だがその足取りは重く、どこか投げやり感が否めない。


 そんな野猿を尻目にセレスティアは、内心で本当にめんどうな奴だと毒づきながらも、沈みこんだ様子の彼女の元へとすぐさま戻ると、軽く指で額を弾いてやった。


 瞬間。


「痛っ! もう、何すんの!?」


 額を押さえながらも不満を口にする野猿。だが、のろのろと歩いている野猿が悪い。


 とはいえ、そんな野猿を放置するつもりも毛頭ない。


「ボーッとしてると置いてくぞ」


 彼はそれだけ告げると、再び野猿に背を向け、とある場所へと歩を進めるのだった。


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