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悪嬢転生!?〜8歳の悪役令嬢?に転生した私は、10年後、内定婚約者である第三王子に首を刎ねられるみたいなので、今のうちに関係修復頑張ります!〜   作者: 月末了瑞
シリウス真相編

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4話:初めてのデート! えへへ。私、初めてのデートしちゃったよ!・4


 ◇◆◇


 再び露店巡りを始めた2人。


「お嬢様、何が食べたいですか?」


 レイはアリスのその問いかけに、キョロキョロと辺りの露店を見渡し、考える。


 肉や魚の串焼きに、栗やビスケットのデザート系。どれも美味しそうではあるのだが――


 そう思いながらも、パッと、とある串焼き店に目がいった。


 とはいえ特に、目を引くものがないただの店。店主はどこか優しそうだが、串焼き用の肉も質の良い肉とは言い難い。


(あの店、なんか気になるけど……こんなの食べてたって知ったら、どうせあのハゲの人がグチグチ小言攻撃してきそうだな〜)


 内心でそんな未来予想をしながらもレイは、そっと目を逸らし、他の店へと視線を投じる。


 だが、アリスはそれを見逃さなかった。


 レイお嬢様の視線を辿った先の串焼き露店。それに気づいたアリスは、懐かしむように目を細めると、ぽつり。


(あの店は……ふふっ。レイ、お嬢様らしいですね)


 内心で納得を示してしまった。


 そして、串焼きが気になりますか? と聞こうとした矢先。レイお嬢様が食べたいものを決めてしまったらしい。


「よし、ビスケット食べよう!」


 それを聞いたアリスは、「かしこまりました」と一言。


「では、レイお嬢様は先ほど座っていたベンチの方でお待ち頂けますか?」


 そうお願いをすると、彼女はビスケットとそれ用の“ミルク”を購入する為、一旦レイお嬢様の元を離れるのだった。


 ◇◆◇


 ベンチに腰掛け、ミルクに浸しながらビスケットを食べる2人。


 使われている素材は質素なもので、小麦に蜂蜜。それからちょっとしたスパイスが入っている簡素なもの。しかし、水分量が少ないからか――それとも元来、ビスケットとは、保存食として作られていたからか、思いの外硬かった。


「なんか、あんまり食べ慣れないけど美味しいね!」


 レイがにっこり笑顔で言うと、アリスはそれを肯定するように、「そうですね」と一言。ふふっと笑う。


 それは、平和で穏やかな時間。


(最初は馬車の事故現場見ちゃって、気分最悪だったけど、誰かと一緒に話しながら食べ歩くのって、やっぱりいいよね〜)


 レイはそんなことを内心でぽつりと呟き落としながら、一拍。ふと、とあることに気づいてしまう。


 ニマッと悪戯げな笑みを浮かべるレイお嬢様。


 お嬢様は何を考えたのか。じっとアリスを見つめるながらも、喜色満面な笑みを浮かべ、問題発言を口にする。


「ねぇ! これデートって奴じゃない!? 私の初デート、アリスに取られちゃった!」


「……へっ?」


 レイお嬢様は恐らく、素直に思ったことを口にしてしまっただけなのだろう。しかし、アリスからすれば唐突な発言。


 突拍子のないそのセリフにアリスは、思わず手に持っていたビスケットを落としてしまった。


「あ……」


 石畳の上をコロコロと転がり倒れるビスケット。アリスはそれを見つめながら、シュンッと肩を落としてしまう。


 だが、それを見たレイお嬢様は何を思ったのか――


「ふんぬっ!」


 と不思議な掛け声を上げながらも、パキンとお嬢様が持っていたビスケットを突然2つに割り始め、それを「はい!」と言って、アリスへと差し出してきた。


「え?」


 しかし、突然『はい!』とビスケットの半分を渡されても理解が追いつかない。アリスは目を点にしながらも、レイお嬢様を見つめた。


 そんなアリスの困惑に気づいたのか、お嬢様ははにかんだような笑みを添えながらも、予想外なことを口にする。


「アリスのビスケット落ちちゃったから、私と半分こしよ? あ、私の食べさしじゃない方だから安心して!」


 それはレイお嬢様の純真無垢な優しさ。アリスは、そんなレイお嬢様の優しさに、どこかドギマギした感情を抱えながらも、お嬢様の優しさを無下にするわけにはいかない。


 どうするかほんの少しだけ悩みながらも、「ありがとうございます」と一言。謝意を示し受け取った。


 けれどその発言は何かおかしかったらしい。レイお嬢様はきょとりと小首を傾げながらも、自身の考えを共有してくれた。


「なんでありがとうなの? アリスが買ってきてくれたんだから、当然の流れじゃない?」


 そんなレイお嬢様の優しさに、アリスは心をポカポカさせながらも、くすり。


「ふふっ。そうですね! では遠慮なくいただきますね?」


 そのままの流れで、“デート”という言葉に関して言及した。


「ところでお嬢様。初デート相手に私がなってしまいますと……シリウス第3王子に怒られちゃいますね?」


 しかしレイお嬢様はアリスの発言をすぐさま一蹴してしまう。


「え、なんで? そんなことないでしょ? シリウスってさ、私のことなんとも思ってないよ? 多分、命令されたから仕方なく私との婚約関係続けてるだけじゃない?」


 その態度は、本気でそう思っている人のそれ。けれどアリスには、シリウス第3王子が本当にレイお嬢様の言っている通りなのか――疑わしかった。


 アリス自身、シリウス第3王子のことなどほとんど知らない。知っていることと言えば、第三王子だが王位継承権がほぼないということくらい。


 そんなシリウス第3王子だが、お嬢様のデビュタント当日。遅刻しながらもレイお嬢様の元へと赴いている。


 加えて、ブドワールに連れ込まれたと言うにもかかわらず、未だに婚約破棄はおろか、数ヶ月後の王家主催の社交界にて、レイお嬢様を“パートナー”として呼んでいる。


 いくら王族の努めとはいえ、本当に嫌っているのならば、スキャンダルだらけの内定(暫定)婚約者など直ちに切り捨てることも可能というもの。


 なのに、それをすることがない。ということは――嫌っている素振りは何かしら別の要因があるから。


 アリスは、そんなことを考えながらも、くすり。


「分かりませんよ?」


 と、揶揄(からかい)い混じりに微笑んだ。


 それを認めたレイお嬢様は、絶対、私のこと嫌ってるよ〜と言いたげな困り笑いを浮かべながらもぽつり。


「うーん。じゃあ、二人だけの秘密にしとく!」


 そう言って、半分に割ったビスケットをミルクに浸しふやかしながらも、食べ進めていく。


 そんな2人の頭上に浮かぶ空は蒼く澄み渡り、数時間前に事故現場に遭遇した同じ日だとは思えない。それに、どうにか負傷者の手当てなど終えたのか、いつの間にか教会の使者らのいなくなっている。


(ほんと、平和だな〜)


 レイはそんな幸せな時間を噛み締めながら、その後もアリスとデートを楽しむのだった。

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