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悪嬢転生!?〜8歳の悪役令嬢?に転生した私は、10年後、内定婚約者である第三王子に首を刎ねられるみたいなので、今のうちに関係修復頑張ります!〜   作者: 月末了瑞
デビュタント編

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23話:ふぅ……疲れた! レビュタント終わったー! これで私死なない!? 大丈夫かな?・前編


 ◇◆◇


「今お医者さん呼んでもらったから!」


 とあるブドワールの一室。レイ・ヴァーティンはそう一言、応急処置として用意された氷入り袋を片手に、微かに赤くなったシリウスの足を冷やしていた。


 しかし、彼からすれば意図不明。


(なぜ僕は、こんな(はずかし)めを受けなければいけないんだ?)


 男子禁制、女性の聖域であるブドワールに連れ込まれただけでも不名誉な称号を与えられないというのに、それに加えて婚約の儀すらまだの令嬢に足を晒すなど、恥の上塗りでしかない。


 シリウスは、内心で苛立ちと羞恥心でどうにかなりそうな自身の本音を必死に押さえ込みながらも、冷ややかな声でレイ・ヴァーティンを非難した。


「はあ……ほんと意味わかんないんだけど……」


 だが、レイ・ヴァーティンはどこかで頭を酷くぶつけてしまったのだろう。


「意味わかんないじゃないって! ほんと、ごめん。下手に動いてよけい悪化したら、辛いのはシリウスになるわけだし! だからお願いじっとしてて?」


 そう言って、シリウスの言い分など絶対に聞かないという強い意思を持ち、その後も彼の足を冷やし続ける。


(はあ……前までなら、絶対僕と関わろうとしなかったはず。どういう心境の変化だ? いや、それよりも……)


 シリウスはそこまで思考すると、小さく憂いを帯びた息を吐き出した。


 レイ・ヴァーティンが何を考え、このような奇行に走ったのか――残念ながら知る由もない。


 恐らくだが、彼女の頭を割って中を調べても、“何も判らない”という真実を知ることになるだけだろう。


(はあ……)


 シリウスは内心で再び息を吐き出すと、どうせレイ・ヴァーティンの気が収まるまで、この|ブドワール《女性のみに許された聖域》から出ることは叶わないだろうと腹を括った。


 そんな彼の精神疲労など知らぬレイ。彼女は、定期的にシリウスの足に当てている氷入り袋を動かしながらも、悶々と考えごとをしていた。


(ミス・ゴーディスが知れば、『あれほど、ブドワールは女性のみに許された聖域だと伝えたでしょう!? にもかかわらず、シリウス第3王子を連れ込むなどどういうことでしょうか?』って、めちゃくちゃ怒られちゃいそう……。でも仕方ないよね? 出た所から一番近かったんだし……。そんなルールよりも、怪我の手当の方が最優先だし!)


 彼女は、自身がやってしまった禁忌(タブー)に後ろめたさを覚えながらも、必死に自己弁護を続けた。


 やがて――


 レイがシリウスをブドワールへと連れ込んで10分くらい経った頃。


 呼び出された医師は、ブドワールという男子禁制な聖域に足を踏み入れる罪悪感と、どれほど重症なのかという焦りを覚えながらも、シリウスの問診と触診を行った。


 不安げな表情で医者を見つめるレイ。鬱々としながらも、早くこの意味のわからない状況が終わって欲しいと願うシリウス。


 医者はそんな二人の相反する感情を察しながらも、恐る恐る口を開いた。


「レイお嬢様、その……大変申しにくいのですが……」


 瞬間、何を思ったのか。レイは盛大な勘違いを起こしてしまったらしい。


「え、骨折以上にヤバいもの見つかった感じ!? シリウス死んじゃうの!?」


 そう言って、すぐさま医者へと詰め寄ろうとしてしまう。


 そんな彼女の迫力に、思わず医者はおずおずとしながらも、「落ち着いてください」と一言。診察結果を口にする。


「……大変申しにくいのですが、シリウス第3王子は、捻挫どころか、内出血すらしておりません。単なる打撲程度で済んでます、ね」


 その診断結果を受けたシリウス。彼はただただ呆れを覚え、言葉を発することなく(うれ)いだ。


(やはり僕の言い分の方が正しかったんじゃないか。何が骨折だ。ただ僕が恥辱(ちじょく)を受けただけじゃないか)


 けれど、そんなシリウスの嘆きなど知る由もないレイは、「ほんとによかった……」と涙ぐむほど安心しきってしまう。


 その温度差はかなりのもの。


 そんな彼女を見遣りながらも、シリウスは冷たく問いかけた。


「お前……そんなにオーバーになるほど、僕の足が心配だったのか?」


「当たり前じゃん! ヒールのピンって、凶器なんだよ!? もしかすると、ヒールのピンで死んじゃうかもしれないし……っ!」


 どこかズレたことを言いながらも、どこまでも真っ直ぐな瞳で訴えかけるレイ・ヴァーティン。


 シリウスは、そのあまりにも真っ直ぐな瞳から逃げるようにして視線を逸らすと、内心で戸惑いを吐き出した。


(……なんなんだよこいつは。あの時から僕を突き放し続けていた癖に、急にこんなこと……。本気で意味がわからない。本当にこいつは、僕の知っているレイ・ヴァーティンなのか?)


 けれど、その心の声は届かない。


 そんなシリウスを見つめながらもレイは、ぽそりと謝意を投じた。


「遅くなったけど、来てくれてありがとう。それから、足踏んじゃって……その、ごめんね」


 だが、シリウスはその言葉を一蹴する。


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