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悪嬢転生!?〜8歳の悪役令嬢?に転生した私は、10年後、内定婚約者である第三王子に首を刎ねられるみたいなので、今のうちに関係修復頑張ります!〜   作者: 月末了瑞
デビュタント編

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21話:人参! パプリカ! ピーマン! それから……ええっと……かぼちゃの南蛮漬け!・前編


「……おい」


 低く不満気な声がレイの背中にぶつけられる。


 その声に思わず振り向いた彼女の眼前。そこには、若干息を切らし、髪などが乱れた男性(・・)の姿が。


(えっ、なんでそんな息を切らしてんの? なんかトラブルでもあった感じ? それとも、私がやらかしちゃったから、探してくれたってこと?)


 尽きぬ疑問にわからぬ真実。


 レイは乱れた金の髪や衣服をそのままに、肩で息をする暫定婚約者――シリウスを見つめながら、驚きのあまり硬直してしまう。


 そんな彼は、美しい刺繍の施された白いタキシードに身を包み、キッド革の黒い手袋をはめ、完璧な正装をしている。


(シリウスって私のこと、嫌いなはずだよね? なんで、正装……?)


 レイは、眼前のシリウスの姿に、大量のクエスチョンマークを製造しながらも、目を点にしてポカーンと呆気に取られてしまう。


 とはいえ、彼は王族。嫌いな人物だろうと体裁を保つ為に、嫌々正装してくれているのかもしれない。


『いや、絶対そうしかない!』


 レイはそう考え直すと、ゴクリ。未だに彼の登場に驚きを隠せず瞳を揺らし続けた。


 そんなレイ・ヴァーティンを見つめるシリウス。


(どうしてレイは固まっている……?)


 彼は訝しみながらも、ほんのりと警戒心を滲ませる。


 だが会場に到着し、すぐさま控え室に向かったにもかかわらず、レイ・ヴァーティンは不在。シリウスの到着を聞きつけたバルドフ・ヴァーティンから事情を聞いた彼は、直ちに会場内へと向かい、彼女を探したのだが――


 レイ・ヴァーティンを見つけ出せたのは、ポロネーズの終盤であり、メインであるワルツが奏でられようとしている最中。


 彼は小さく息をつくと、一拍。


「おい、いつまでぼさっとしてるんだ? 何度も手紙を送り付けるくらい、“エスカルゴ”して欲しいんだろ?」


 無愛想な皮肉を投じながらも優雅に。流れる小川のように手を差し出した。


(シリウス……ちゃんとエスカルゴしてくれるの? 手紙、ちゃんと読んでくれたんだ……良かった……)


 レイは、差し出された手をじっと見つめながらも、ホッと内心で安堵を示した。


 だが、安堵を覚えると同時に――


(シリウス来てくれたのはほんと、ほんっっっと嬉しいし、感謝してるよ? もう、シリウスに足向けて寝れないくらい感謝してるけど! 手紙の返事くらいしてくれてもいいじゃん!? いくら本来のレイ・ヴァーティンが嫌いだからって、なんで、そこほうれん草サボるの!?)


 不安だった思いが、不満として吹き出してしまう。


 しかし、今はワルツの時間。そのため、吹き出し続ける不満は一旦脳の片隅にナイナイ、ポイッ。


 緊張で若干汗ばむ右手をシリウスの手に重ねた。


 瞬間、彼からバニラのような、甘く爽やかな香りが放たれる。


(あ、この匂い好きかも。どこの香水使ってるんだろ? ゲ〇ン? ヘリ〇トロ〇プ?)


 そんなことを考えていると、重ねた手から暖かな温もりが。その温度は手袋越しにも伝い、レイは思わず視線を上げ――パチリッ。


 ルビーとエメラルドの瞳が交わる。


 瞬間。シリウスの眉が、僅かに(ひそ)められる。


 それに困惑を覚えるレイ。


(……えっ、なになになに!? 私、なんかまた変なことやっちゃった? 手、取らない方が良かった? それとも、さっき手紙の返事くらい寄越せー! っていうの声に出しちゃってた?)


 だが、彼はじっとレイのことを見下ろすだけで、手を離すことは決してない。


 けれどどう見てもその表情は、“不快”にしか思えず間違っても、“本心”をひた隠そうとしているように見えない。


(その微妙な顔……やめてくれないかな?)


 レイは苦笑しながらも、ポロネーズの遅れを取り戻すように、足の裏全体で床を感じ、ステップを踏み始める。


 ここから、軌道修正。狂った歯車が元に戻り、すべてが丸く収まる―――――――――――――――――――――わけもなく。


 レイ・ヴァーティンとシリウスの相性はかなり最悪なものだった。一瞬、初めての社交場の雰囲気に呑まれ、緊張しているだけかもしれないと思ったが……これは相性の問題としか言いようがない。


 何を考えているのか――いや、嫌がらせか。レイ・ヴァーティンは、シリウスが前へと出れば、後ろへ下がり、どれほどリードしようとしてもそれを拒み続けてくる。


 ゆえに、優雅な円を描かなければいけないワルツの円は、歪な形へと変わっていく。


(はあ……こいつは僕を困らせたいが為に、あの難解な怪文書を送ってきたのか? いくら僕が王宮に当分来るなって言ったからって、ダンスくらい僕のリードを素直に受け取ってくれ)


 シリウスは、内心で手綱を握らせようとしないレイ・ヴァーティン(暴れ馬)への苛立ちを募らせながらも、どうにか彼女をリードしようと努めるのだった。


 そんなシリウスの内心など知らないレイはというと――


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