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第20話《魔導と刀仙》

「起きろ―――《一気刀仙(イッキトウセン)》」


 刀が抜かれる。


「《魔導の体現者(マギカ・ユーザ)》―――【フロスト】、ウェポンメイク」


 二刀が現れる。


 奇しくも同じ刀使い。一方は一刀流、もう一方は二刀流。構えも、身体能力も何もかもが違う二人の剣士が相対する。


「お手並み拝見―――斬ッ!」


 高速納刀からの飛刃。気によって可能にした遠距離斬撃を飛ばし、様子を窺う。


「ふむ‥‥‥そこそこ出来るようだな」


 軽くいなされた。想定はしていたが、中々に強い。


「なら―――【瞬】」


 高速移動からの一閃。だが、移動の勢いすらも生かしたその一閃を見切られる。


「遅い」


 カウンターの袈裟斬り。俺よりも断然速く放たれた斬撃を、左の刀で受け流す。


「貰っ―――グオッ‥‥‥!」


 流した刀を左の刀で押さえつけ、空いた右で横薙ぎを放つが―――蹴りを入れられて動きが止まる。


「仕切り直し、か」


 蹴りのダメージでよろめきながらも数歩下がり、間合いをとる。


「クソっ‥‥‥かなり強いな、アンタ」


 たった十数秒。それだけでもコイツの強さが分かる。反応速度、対応力、技量‥‥‥どれも優れている。それこそ、今の俺を遥かに超えるほどには。


「当然よ。だが‥‥‥貴様の方も、中々の強者のようだがな」


 こうして話している今でもそうだ。俺の隙を狩ろうと虎視眈々と狙っている。


「アンタみたいな強者にそう言われると嬉しいね。んじゃ―――再開だ」


 一歩詰め、同時に俺は攻撃を開始しようとして―――。


「二式・煉牙(れんが)


 その声を聞いた瞬間、脳内に警報が鳴り響く。


 ヤバイヤバイ何とかしろ対処しろ俺!?


「どうにかなれよ―――【流】ッ!」


 腕が引かれた状態から推測するに突き。音すら越える速度で放たれた一撃を意識する間も無く二刀で流す。

 火の粉が舞い散り、氷で作られた刃は若干溶け、焔を纏った太刀が脇腹を掠めた。


「生きた心地がしねぇ‥‥‥!」


 かろうじて受け流し、俺の横を過ぎ去った一刀を弾き飛ばしてから交差斬りを放つ。


 だが、それは引き戻された刀によって防がれた。

 鍔迫り合いをする中、腕に力を込めながらも口を開く。


「初見でコレを防ぐとは‥‥‥驚いたよ」


「そりゃ知ってれば誰だって防ごうとするさ‥‥‥。俺も剣士だからな、打ってくる技が分かればいくら速かろうが対処は不可能ではない」


 刀身が欠ける。鍔迫り合いによって食い込んだ刀が、俺の氷に亀裂を生み、一部は融解して(いびつ)な状態になっていた。


「‥‥‥君に見せたことは無かったと思うが?」


「その通りだが‥‥‥その技の圧、流石にバレバレだぜ」


 クラフトアーツ、スキル、創技、戦技、必殺技―――呼び方は多々あれど、その在り方は同一、とも言ってもいい。彼が放った一撃はそれに相応するモノだった。


「―――戦技か。確かに、戦技を使うと理解できれば死力を尽くして対処するだろうな」


 その通り。


 戦技は身も蓋もない言い方をするとモーションアシストだ。今の身体能力では放てないような一撃を実行する、そのための技法。ついでに言えば、それに付随して火力の向上やらエフェクトやら特殊効果やらが付く。今回であれば煉牙に焔のエフェクトがついたように、な。


「ま、今のは分かりやすかっただけだ。あんなに露骨に腕を引いたら突きだってバレるぞ」


「仮にバレたとしても問題ない速度の一撃なのだがね‥‥‥。やはり侮れないな、君は」


 その言葉と同時に腕に力を込めて全力で振り抜き、鍔迫り合いを解除してバックステップ。

 魔力を流して氷剣を修復し、また仕切り直しとなった。


 コツン、と足音が鳴る。男が一歩詰めた―――そう思った瞬間、目の前には鈍色に光る太刀。


「無拍子か―――ッあっぶねぇ!?」


 首に飛んできた一撃をギリギリで回避し、倒れる体の勢いを利用してサマーソルト。顎を掠めて、よろけさせるがそれだけで終わる。


 地面に手をつき、バク転。さっきのサマーソルトが効いていたのか、追撃はないようで問題なく起き上がれた。


 ―――だが、冷静に動いた俺の体とは裏腹に、内心は冷静とは程遠かった。


 嘘だと言って欲しい、切実に。

 俺にそう言わせるだけのことをアイツはやってのけたのだ。


 無拍子―――それだけならまだ理解出来た。なにせ、多少は俺にも扱える技法だからだ。通常、無拍子とは意識の間隙を縫って距離を詰める技。一瞬思考がそれたとはいえ、直前までしっかりとその動きを見据えていた俺に接近出来るなんてのは―――到底、無理な話だ。


 本来なら、そのはずなんだ。だが奴は成功させた。そのタネも理解は出来ている。納得もしている。その上で言わせて貰うと‥‥‥馬鹿げている。


「‥‥‥まさか、これすらも見切られるとは」


 驚いた表情を見せるが、そんなもん無視だ無視。俺よりよっぽど規格外の動きをしているぞ、コイツ。


「―――ギリギリだったけどな。正直、眼がよくなかったら今のでデッドエンドだ」


 油断なく構えているが、いつ抜かれるか溜まったものじゃない。やはり、俺から攻撃に回るべきか‥‥‥?


 だが、それもまた厳しい。格上相手に無理な攻めは成功しないだろう。


「仕方ねぇ―――バレット!」


 苦し紛れの一撃。氷の弾丸を放ち、次の行動を考える。


 このまま遠距離攻撃をするか?無理。先に俺の燃料が切れる。

 受けの姿勢に入ってチャンスが来るまで耐えるか?無理ではないが推奨はしない。無拍子があることを考えると安易な受けは即死に繋がるだろう。


「やっぱ一つしかねえよなぁッ!」


 弾丸が斬り伏せられ、氷が舞い散るのと同時に前進、体重を乗せた袈裟斬りを放つ。


「何!?」


 予想だにしなかっただろう。俺だってやりたくはないが‥‥‥接近戦。俺がリズムを作り出す!


 俺の放った袈裟斬りに対応しきれずにバランスを崩したの見て、更に追撃を仕掛ける。


「《魔導の体現者(マギカ・ユーザ)》―――【グローム】、ゼロスラッシュ!」


 切り替えの最中にも回避を挟ませないように連撃を差し込み続け、属性が雷になった瞬間に煉牙よりも速い一閃を放つ。


「ヌウっ‥‥‥一式・陽炎(カゲロウ)


 ―――間に合わない。


 そう感じた時には既に遅く、雷閃は肉体をすり抜けて一切のダメージを与えることなく不発に終わった。


 切り裂かれた肉体が陽炎のように揺らめき、そしてその一歩後ろから恐らく本体だと思われる姿が現れる。


「デコイ―――!?」


 クソ、回避技ならよかった。それなら、俺も相手も硬直で止まるからリズムを切らさずに済んだ。だが、幻影はヤバい。俺の認識ではカウンター技に該当するであろうその技は―――技後硬直で動けない今の俺には致命傷となり得る。


「終わりだ―――三式・天華(てんか)


 上段から振り下ろされる太刀。膨大な剣気が巻き付いたその一撃に対して俺は―――。


「終わらせねぇよ。全力全開だ、ゼロスラッシュ!」


 技後硬直?それが何だ。人間である以上ありえない挙動?それがどうした。物理をねじ曲げ、俺の道理を通す―――それが俺の《魔導の体現者(マギカ・ユーザ)》だ。


 二刀が雷鳴を纏い、音を越えて空を駆ける。止まった肉体は強制的に動かされ、後出しにも関わらず追い付いてブロックに成功。


「重っ―――ぬおぉぉっ!」


 硬直から解除され、両腕に力が込められるようになってから感じられるのはその重み。ピシリ、ピシリと軋む音が鳴り、俺の防御ごと貫こうとする強い意思を感じる。


「‥‥‥まさか、殺ったと思った一撃すらも凌ぐとは」


「まだ終わってねぇしなんなら今も殺りにきてるだろうが‥‥‥!」


 そう、まだ俺は斬撃を止めている最中だ。辛うじて、辛うじて拮抗しているが‥‥‥俺の腕に限界がきた瞬間に押し負けるだろう。そうでなくとも、氷剣が先に折れる。


 刃が氷の刀身に食い込み、俺が芯にした鉄棒にまで到達する。流石に鉄はまだ切れないのか、そこで止まるが‥‥‥猶予は少ししかないだろう。


 ―――どうする?


 そんな疑問が頭の中を巡る。正直に言ってしまえば、今の俺は延命に成功しただけで詰みの一歩手前まで差し掛かっている。だからこそ、タイムリミットが訪れる前に対処しなければならない。


 ‥‥‥そのための策はいくつかある。だが、その中のほとんどがその場を凌ぐだけのモノであり、崩されたリズムを取り戻すには至らないだろう。


 ―――博打を打つか?


 一個だけ、策はある。だが、成功率も俺有利ではあるが別に高いわけではない。そんな賭けを―――するしかない、か。


 片方の刀身に魔力を流し、物質の構成、その耐久性を修復、補強する。

 次の瞬間、左手から刀を手放し、それと同時に一刀になったことで倍となった負担を抑え込みながら、そのまま自分の前に左腕を構えた。


「何を‥‥‥!?」


 そりゃそうだ。端から見れば意味分からん行為をしているんだからな‥‥‥!


 俺は更に右腕を落とし、左腕だけで攻撃を受け止める―――その準備が完了する。


「貰うぞ―――【流反硬】」


 我が天式体術が誇る戦技―――その中でも最も使いどころのない技、それこそがコレだ。


 そもそもとして、天式体術は九つの戦技を扱う技法だ。攻撃三種、防御三種、機動三種から成り立つ、戦技技法。それこそが天式体術と言えるだろう。


 だが、それだけじゃない。悠斗は練度不足で扱いきれないが、天式は複合することも出来る。

 高速移動とその加速を生かした一撃を叩き込む【瞬撃】。硬化によって受け流しをしやすく、よりダメージを少なくする【流硬】。パターンはネタが尽きるまであるが‥‥‥とにかく、そういった複合技、その中でも【流反硬】は格別だ。


 コンセプトは【流】によって威力の大半を殺し、残ったダメージを【硬】で耐えきり、【反】でカウンターを仕掛ける攻防一体の技。


 そう、これはあまりに威力の高い攻撃じゃないと【流】、【硬】の流れだけで完封出来る。出来てしまうのだ。ダメージを貯める余地もなく、完全に受け流しきることが出来るからこそ、この技は基本腐り技となる。


 なんでこんな技作ったんだか。だが、今回ばかりは過去の俺を褒めてやるよ―――!


「痛っ―――」


 腕を振り下ろされる太刀に対して斜めに、衝撃を最小限に抑える形で流しながらも、なお有り余る力に痛みを訴える。


 だが、これなら充分力が貯まる。

 そう思えるほどの圧倒的な威力を流し、耐え、抑え込み―――肘を通過したのを感じた瞬間、すぐさま反撃を繰り出す。


「セアッ!!」


 掌底。【反】の性質上、殴るという工程を経ずとも攻撃が出来る今の俺にとって最適解の一撃を放つ。


 衝撃波が迸り、頬を風が吹き付けながらもその一撃は―――かろうじて触れた。


 上体を反らし、硬直する肉体を可能な限り動かしたのだろう。俺が打ったのがパンチであれば確かに意味は無かった。触れただけじゃ貯めた力を解放しても衝撃を乗せることは出来ない。だが―――掌底なら話は別だ。


「ヌウゥッ!?」


 猛烈な破裂音。触れた瞬間に運動エネルギーに【反】のエネルギーを加算させ、手のひらから放出する。

 それによって生まれた衝撃は並大抵の威力ではなく、積み上げられた荷物が崩れる音と共に―――男を数メートル吹き飛ばすことに成功した。



《答え合わせ其の二》

其の二、ではありますが其の三は恐らくありません。

結論から言えば、《一気刀仙》の保有者がそのスペックに任せたゴリ押しで四人を昏倒させました。《感覚操作》で五感を鈍らせ、そこに出来た隙を自前の隠密スキルと身体能力で無理矢理気絶させたのが解答です。咲夜が考察していた隠密云々は大外れ、純粋な暴力に敗北した訳です。咲夜はそれに気付いたから噓だろと思ったんですね


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