第249話 ジュネーブダンジョン①
今日の午後はダンジョン座学の授業が行われていた。
今週、正式に販売が始まったエスケープのお札が登場した事と、SAIAによるステータス調整が可能になった事で、今までとは安全マージンの取り方が根本的に変わり、攻略プランの組み方の見直しという事で、特務隊から講師が来て生徒たちと一緒に意見を出し合う形での授業だ。
私から見ても考え方という面では、とっても参考になったよ。
授業が終わって、帰り支度をしていると原田君が近寄ってきた。
「柊、昨日アキラさんから声かけられただろ? 俺も【ライブダイバー】の所属なんだよな。社長がなんか無理言ってきたらスルーでいいからな。俺にも柊に連絡付けろって言ってきてたんだけど無視してたらアキラさんにふられたみたいなんだ」
「そうだったんだね。社長ってどんな人なの?」
「うーん、なんていうかテレビマンって感じの人だね。やたらアイドルや芸人さんとの繋がりを自慢してくるけどダンジョンに関しては全然よくわかってないし、俺はちょっと苦手かな。まあ、会社が大きいから待遇なんかは悪くないし、節税対策とかもしっかりしてくれるから所属してるけどね」
「そうなんだね。一応アキラ先輩と約束したから、こっちの条件内であれば一回だけは会ってみるよ」
「そっか、こないだ言ってたコラボの件もマジで考えてくれよな」
「時間のある時にね」
希と日向ちゃんが迎えに来たので、そこで原田君とは別れて博多へと戻った。
博多へ戻ると社長と杏さん、それに君川さんも食堂へ来ていた。
「君川さん、許可は出たんですか?」
「ああ、なんとかね。将補が斎藤大臣と話して許可を貰える事になったよ」
「それじゃぁ早速ジュネーブへ向かいましょう」
希と日向ちゃん、冴羽社長と杏さん、それに君川さんをパーティに加えてジュネーブダンジョンへとテレポを行う。
ダンジョン協会へと向かうと、アンリさんを始めとしたクリスマスホーリーの面々や、美咲さんたちの派遣武官、従軍記者の東郷さんも揃っていた。
「あれ? ソフィアとイージャも来てたの?」
「ちょっと訳ありで、私たちも派遣武官として参加させてもらうわね」
「そうなんだぁ、でもメンバーは多い方が助かるかも」
そんな話をしてるとアンリさんが声をかけてきた。
「お嬢、四十五層までだからあまり時間の余裕がない。早速潜るぞ」
「了解です。社長と杏さんは潜らないですよね?」
「ああ、俺たちはスイス政府との調印とか色々やる事があるからな」
社長たちとは別れて、ジュネーブダンジョンへと潜った。
私のパーティは、希と日向ちゃん君川さんと美咲さんと香田さんの六人だよ。
金曜日は二十層まで駆け足で降りた。
このダンジョンは六層以降では雄大なマッターホルンを背景にしたステージが続いていた。
十層以降ではヨーロピアンパーチていう淡水のスズキに似た魚の魔物やブラウンスイスと呼ばれる乳牛をベースにした魔物が多い。
ブラウンスイスの魔物はドロップでチーズを落としてくれて、めっちゃ嬉しかったよ。
エメンタールチーズの様に大きめの穴が開いたチーズで凄く香りがいい。
帰ったらこれでチーズフォンデュを作ろう。
焚火でチーズを炙ってパンに乗っけて食べるのもいいよね〇イジみたいにね!
土曜日は三十五層まで進み日曜日に最終四十五層に到達した。
「お嬢、早速だが謎文字の解読を頼む」
アンリさんにそう言われるとイージャが横から口を挟んだ。
「心愛、その能力を俺たちが覚える事は出来ないのか?」
どうしようかな? って思いアンリさんに確認してみた。
「覚えさせること自体は出来ますけど、どうしますか?」
「覚えさせることによるマイナス要素はあるのか?」
「今の期限内にすべてのダンジョンを攻略しないといけない状態であれば、覚えてもらった方がいいんじゃないかな?」
「そうか、それじゃあ条件次第って事でどうだ?」
「条件ですか? 例えばどんな?」
「ロマノスキーの持ってるガリッサダンジョンのジャフナへの設置とかどうだ?」
「いいですね、それ。じゃぁガリッサの攻略報酬に設定しちゃおうかな?」
「おい、そんな事が出来るのか?」
「出来るスキルもあるってだけです」
「まったくこのウイッチは意味が解らんな。ここの攻略が終わったらガリッサはジャフナへ設置するから言語理解スキルは頼むぞ」
「了解です。さっさと終わらせましょう」
改めて扉の文字を解読する。
『頭上のリンゴを打ち抜く勇気のある者射撃の極致へ誘う』
「どういう事かな?」
その謎文字を読み上げるとソフィアさんが話しかけてきた。
「ここがスイスだという事も踏まえるときっとウイリアムテルに纏わる何かだと思うよ。心愛ちゃんは弓は得意?」
「うーん……弓を武器として使ったことは無いなぁ」
考えていても解らないし、とりあえず突入する事にした。
「みなさん何があっても大丈夫なようにエスケープをすぐに発動できる状況にしておいてくださいね」
「「「「「了解だ」」」」」
ボス部屋に突入したけど一歩目以降中に進めない。
「どういう事?」
そう言った直後に言葉が聞こえた。
『三十二名の入場を確認。この部屋の空間を閉鎖。それぞれの頭上のリンゴを打ち抜け。チャンスは一度きり。失敗には死を与える』
その言葉が聞こえると同時にボス部屋の中央付近に頭上にリンゴの乗った私たちそっくりな人形が現れた。
とりあえず心眼で鑑定をかけてみる。
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『フォーチュンアップル』 レベル90×32
HP 1
MP 9,000
攻撃力 900
防御力 90,000
敏捷力 900
魔法攻撃 90
魔法防御90,000
知能 90
運 0
飛翔
自爆
全体攻撃無効
魔法攻撃無効
人形にダメージを与えると本人にもダメージが入る
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そのままの意味だと運命のリンゴ?
数が32個って事は突入人数と同じって事か……
この位置から進めないって事は、ここから頭上のリンゴを倒すしかないんだよね?
「とりあえずやってみなけりゃわからないっすよ」
そんな危険な言葉を香田さんが発言する。
君川三佐が止めた。
「馬鹿野郎、これは恐らく失敗すれば即死攻撃を受ける。迂闊な攻撃をするんじゃない」
私も君川さんの意見が正しいと思い一度エスケープで脱出して作戦を練る提案をした。
「駄目だエスケープが反応しない」
えーっもしかして絶体絶命のピンチなの?




