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第49話:元女警察官の独白

「国王、第一王子、あたしが可愛いならここは引いてあたしのことを逃しなさい?あなたたちならそれができるでしょう?お・れ・い、はたっぷりするわよ?」

「うむ、わしらならできるな。おれいも興味がある」

「そう、だったら」

「しかし、そなたの頼みを聞く道理はない。警備兵!アメリアの諜報員であるタンジー・オノケリスの身柄を抑えろ」

「なっ!なんで!魅了は!ジャンヌの魅了がきいてないの?」

「残念ながらな。元からわしら王族は訓練により魅了に耐性がある。そのうえそなたがいるのがわかっているのだ、魅了耐性のある装飾品も身につけることくらい想定しなかったのか?そもそもこの会場には魅了を軽減する結界が貼ってある。気付いていなかったのか?周りを見ろ、誰も魅了にかかっていないであろう」

「そんな!!なんでよ!この世界はあたしの思い通りになるはずでしょ!」

「何を傲慢なことを申しておる。この世界はそなたのものではない」

「!!!やめてっ!その目であたしを見ないで!!やめてっ!!」


そこであたしは目を覚ました。うなされていたのか体に汗もかいていた。王宮の地下牢の独房に入れられてからおそらく数日が経過している。思わずつぶやいてしまった。

「なんで、ジャンヌ・スプーキーがこんなに目に合わないといけないよ。このゲームのヒロインでしょ」


あたしには前世の記憶がある。江波奈あきほ、という名前で浅草狐虎警察署に属する警察官だった。


王立魔法学園2年生の課外授業でムーノ王子をかばって魔物の攻撃をうけて気を失い、その間に不思議な夢を見て、気付いた。

ここがあたしがやりこんでいた乙女ゲーム「傾国の美女〜女スパイは大国の王子様を籠絡する〜」の世界であると。そして、自分がそのヒロインのジャンヌ・スプーキーだと。さながらジャンヌダルクのように祖国を解放する物語のヒロインになれたと知った時は、あまりの嬉しさで踊り出しそうになったほどだ。


あたしは早速行動をした。ゲームではヒロインの選択肢として表示されてなかったけど、ユー・アドカスを大人の魅力で誘惑した。この方が手早く協力者にできる。そうして彼を味方につけ、学園内で活動しやすいようになった。


ムーノの相手も簡単だ。無能である自覚があり、兄や妹、婚約者に対して劣等感がある。時と場所も選ばずにそばにいてあげると、あたしの記憶が戻る前よりも言いなりになった。簡単じゃない?以前のジャンヌはなぜこうしなかったのかしら。あたしの方が有能のようね。


同じくウスタ・シエクも簡単だった。偉大な宰相である父とは違い、自分はお遊戯会レベルのことしかできない、ことを気にかけている。そこに、演劇の舞台を利用し、固有スキルを肯定してあげた。神様になる演劇を提案した時は、目を輝かせて協力してくれた。それ以降あたしに心酔してきた。


隠しキャラであるアイフィルトもあたしの話を色々と聞いてくれ、細かいところまで作戦の詳細を聞いて相談にも乗ってくれた。そして、必要なものもすべて揃えてくれた。


あたしの記憶が戻ってからのジャンヌ・スプーキーの方が、攻略対象をうまく操り、籠絡している確信があった。


でも、順調だったはずなのに、想定外のことが起こった。攻略対象であるエシロップ・ノムアダルがムーノのそばを離れ、騎士学校に編入までしてしまった。

不審に思ったあたしは、ユー・アドカスに調べるように命じた。あたしの体の虜になり、手足のようにうごいてくれる便利な駒。そして、悪役令嬢であるマーサ・アクトゥールが何か吹き込んだ可能性があることがわかった。あの女狐、あたしの邪魔をするなんてどうしてくれよう。


あたしは攻略対象たちを操り、あたしの邪魔をした悪役令嬢に復習するために学園の卒業パーティーで婚約破棄イベントを実行させた。すべてあたしの思い描いてた通りになるはずだったのに、急にエフィーが出てきて反論してきて、あたしの駒の攻略対象も連行されてしまった。


そして、王様からのあの見下したような目・・・

「やめてっ!」


あたしはつい独房で叫んでしまい、前世の記憶がフラッシュバックした。


保釈されたあたしは街中を歩いていた。帽子を深く被って顔を隠している。街頭TVでニュースをやっている。キャスターと有識者が解説をしていた。


「今回の事件は悪質極まりないですね。現役警察官が飲酒運転をした上にあろうことか女子高生を轢き殺したそうですね」

「はい。容疑者の江波奈あきほ40歳は、一般市民の男性の家に機材を仕掛け盗聴盗撮をしていたようです。男性が、自室にある不審な機材に気付き、警察に通報したところ、それを盗聴していた容疑者が飲酒していたにもかかわらずパトカーにのり緊急走行をしました。おおかた、自分で先に回収しようとしたのでしょう。その途中で、死亡事故を引き起こしました」

「被害者の宮沢紗都さんは、カルタの大会で優勝して、そのお祝いのために東京観光にきていたようですね。結果的にとはいえ、自らの犯罪行為を隠すために、少女の未来を奪うなど、言語道断な行為です」

「さらに、一時期は美人すぎる警察官として世間を賑わせた容疑者の江波奈さんには余罪の疑いも多くあるそうですね」

「おっしゃるとおりです。職権を濫用し、自身が好きなゲーム会社にシナリオやキャラデザの変更を強制したり、他にも経費の無駄遣いや、痴漢のでっちあげもあるとのことです。電車を意図的に停車させたり、新幹線を不必要にとめた疑いもあるようですね。その経済損失は計り知れません。現実を自身の遊び場かなにかだと勘違いしているのでしょうか。さらに、爆発事件や落下事故にも関与している疑いもあります。一般男性とホテルに入り、その美貌をいかし協力者にしていた可能性もあるそうです。おや、今入った情報によると、積み重なった経費の無駄遣いは数億円規模にものぼるようですね」

「それほどの額を浪費していたのですか!?手元の資料によると、同僚の警官からの評判もよくなく、上部だけの無能警官の烙印を押されていて、経費の無使い使いも相まって税金泥棒と陰で言われていたようですね」


「そのようですね。貴重な税金を私物化し、数億円にわたって無駄にすることは国庫にダメージを与える行為でしょう。さて、ネットの様子も見てみると・・・美人すぎる警察官と呼ばれていたことも相まって、傾国の美女と揶揄されているようですね。言い得て妙ですね」


あたしは、耳を塞いだ。聞きたくない。しかしそれで注目を集めてしまったのか周りの通行人に気づかれてしまった。

「おい、あれ見ろよ!人殺しの傾国の美女がいるぞ!」

「ほんとだ!無能なくせに数億円も使い込んだみたいね!名実共に税金泥棒じゃない!」

「あいつのせいで生じた経済損失もかなりあるんだろう!」

「おい!責任取れよ!国民を馬鹿にするな!俺たちが汗水流して稼いだ金を無駄にしやがって!!!」


周りからは見下された目を向けられた。取り調べの時もずっとこの目線を向けられていたあたしは限界だった。

「やめて!!!!!!あたしは悪くない!!!」


あたしは脇目も振らず走り出した。走っている最中も周りからの声が聞こえる。

「コンビニのハイソンのニュース見た?」

「ああ、あれだろ、枕で協力者にした一般男性を使って起こした暴力事件だろ?」

「それを解決して自分の手柄にしたんだって。自作自作ね」

「枕とかキショ」

「痴漢もでっちあげなんでしょ?」


「こっちに社会の癌がいるぞ!」

「日本の恥さらし!」


「わたしは上司に同情しちゃうかなー、こんな無能が部下なんでしょ?可哀想じゃない?」

「そうか?しっかりと指導しなかった責任者も同罪じゃないか?しかも隠蔽してたんだろう?世間に真実が公表されたとたんこれだもんな」

「ニュースをみた被害者がどんどん増えそうね」


「自分が嫌いなパンメーカーの異物混入のフェイクニュースを流したんだって?」

「最低だな。権力をもつに相応しくないやつが警察にいたのか」


「マジで傾国の美女がいるじゃん!ここに来れば無様な姿を見れるって本当だったんだな。無能なくせに権力濫用してつけあがって、いい気味だYO!」


「ママーあそこに税金泥棒がいるよー」

「こら、指を差しちゃダメよ。そういう言葉も言ってはいけません」

「えーでもみんな言っているよ?」


「ほんとうは他国の諜報員なんじゃない?これだけ日本に損害だしてさ」


あたしは叫んだ。

「うるさいうるさい!!あんたらなんかただの財布でしょ!黙って権力に従いなさいよ!」


一瞬あたりが静まり返った。

「うわ、事実を指摘されて逆ギレしているよ」

「わたしたち国民のこと財布だと思ってたんだ」

「めっちゃ傲慢ジャン」


見下す目線が一斉にあたしにつきささった。

「その目を向けないで!!」


そこで、あたしは自転車でパトロール中らしい2人の警官を見つけた。

「ちょうどいい!あんた達あたしを助けなさい!」

2人は顔を見合わせている、ぐずぐすしないでよ!

「なぜですか?」

「一般人共から危害を加えられそうになってるのよ!見ればわからない?」

「僕たちには、市民の皆さんは雑談をしているだけに見えますけれど」

「そんなわけないじゃない!あたしを話題にしているの」

「たまたま偶然じゃないですか?そんなことあります?」

「そういえば先輩。今かなり話題になっているニュースがありますね」

「そうだな、もしも万が一そんな有名人に会えて直接言う機会があれば言いたいことがあったんだ」

「そんな偶然ないと思いますけど、どんな言葉ですか?」

「同じ警察官として恥ずかしい。低レベルな警察ごっこ遊びしかできないポンコツと一緒にしないでくれ」

2人のあたしをみる目は冷え切っていて、見下している。

「なによっ!」


あたしは突発的に走り出した。

「プップップー!!」

気付いた時には車道に飛び出してしまっていたようで、クラクションを鳴らしながらスピードにのったトラックが目の前に見えた。


「ドカーーーン!!!」



大きな音と振動であたしは我に帰った。今のは?王宮で爆発?

気付くと見知らぬ男があたしの牢屋の前に立っている。見張は気絶させられているようだ。

「あなたは何も悪くない。これほどの仕打ちをしてきたやつに復讐したくないか?」

「誰?」

「あなたを助けるためにきた。ジャンヌ様」

「ふーん」

さすがに少し怪しい?


「警戒をといてくれ。今あなたは、不当に嵌められて疑心暗鬼になっているだけだ。あなたはこのような場所に相応しくない。もっと華やかな場所が似合っている」

「それはそうね」

こいつ思ったよりも話が通じるわね。


「あなたを嵌めた相手は今ものうのうと過ごしている。煌びやかな部屋で、豪華な食事を食べ、高級ワインを飲み、イケメンを侍らせている」

「なによそれ!ふざけんじゃなわよ!」

それはあたしにこそふさわしいのよ!


「残念ながら紛れも無い事実だ。あなたさえ望べば、あなたを貶めた公爵令嬢に復讐の機会をあたえてやれる」

「公爵令嬢って言った?あの悪役令嬢の女狐、絶対許さない」

卒業パーティーでジャンヌの魅了が通じなかったのも、きっとあの女狐が何かしたに違いないわ。きっとそうだわ。そうに違いない。どこまでヒロインのあたしを邪魔するのよ。


「俺たちにつけば、あなたが本来いるべき輝かしい居場所に戻れるし、復讐の機会も与えてやれる。どうする?」

「わかったわ。あたしを連れ出しなさい」

ピンチにちゃんと助けがくる、それでこそヒロインね。


「ジャンヌ様の仰せのままに」

男が牢屋の鍵を解錠した。

「あら?よくみるとあなたいい男ね。後でたっぷりおれいしてあげるわ」


あたしは王宮から脱出した。男が所属するスパイン帝国に向かう途中、同じく王宮から脱出していたらしいムーノと合流した。攻略対象と合流できるなんて、やはり、この世界のヒロインはあたしだわ。


作品内でほとんど触れられてなかったので、ジャンヌ・スプーキーの前世を、小説家になろうに短編小説として投稿しました。

「 傾国の美女〜女警察は職権を濫用する〜」というタイトルです。


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