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第50話:これが宿命なのでしょうか(1)

「なんでオーランドにムーノとジャンヌがいるの?」

マーサはオーランドの戦場に突然現れた2人に驚いている。


「しかも雰囲気がなんかおかしくないか?」

「そうね、クラトス様。なんだか普通じゃないわね」


私が改めて彼らの方を見ると、ムーノが、剣?のようなものを振りかざし、スパイン帝国の残兵が多く集まる場所に魔法陣が現れた。

「今度は何よ?」


スパイン帝国の兵士たちがバタバタと倒れ始めて、ムーノが持つ剣に力が集まっている?

「うわぁぁぁぁ!あれは邪剣じゃないか!!!!なんであいつがもっているのだ!」

私達の近くにいた、階級の高そうなスパイン帝国の兵が悲鳴をあげたので、急いで駆け寄った。

「あの剣を知っているの?すでに降伏したのだからできる限りあなた達のことは守るわ。知っていることを教えて」

「あ、あぁ、あれはスパイン帝国の暗部が所有していた禁忌の魔法陣が組み込まれた武器だ。生贄を捧げることで、大量の魔力に変換ができる。それに生贄に捧げられた人間の戦闘にまつわる知識も使えるようになる」

私はめまいがした。なんてものをもってきたの。

「わかったわ。ちなみにあの2人の指に光っている物にも心当たりある?」

スパイン帝国の兵士も落ち着きを取り戻してきたようね。

「ちょっと待ってくれ・・・あれも魔道具だな。魔法陣が組み込まれていて、周りの恐怖の感情を魔力に変換する。南中央大陸の統一戦争の時に活躍した指輪だ。なぜ2人が持っているかは正直わからない」

「情報ありがとう。あなたは逃げなさい」



遠目に見えるムーノとジャンヌの様子は目がうつろで異常だ。負の感情に飲み込まれたのか、魔力が暴走して周りに漏れている。ムーノの火属性の魔力と、ジャンヌの土属性の魔力が混ざって周囲がマグマのようになっている。さらに悪いことに、ジャンヌの精神干渉魔法も暴走して、周囲に漏れている。逃げ遅れたオーランド、スパイン帝国両方の兵士がその魔力にあてられ、恐怖に竦み上がっている。さながら魔王の登場だ。


「このままでは悪循環ね。恐怖の感情が魔力になり、それによってさらに恐怖が蔓延していってしまうわね」

私が頭を悩ませていると、エシロップ様がポケットから何か取り出した。

「アクトゥール嬢、これをあなたに託します」

「エシロップ様これは?」

「メネシスという魔道具です。アメリアに来る前に父から渡されていました。前回のスパイン帝国との戦争で魔法陣が使われ、ユースティティア側に多大な被害がでました。そのため、スパイン帝国の魔法陣を無効化する魔道具の研究が続けられていて、その成果がこれです」

ムーノの神様茶番劇の時に使われた魔法陣が、スパイン帝国のものだと思うとエフィー殿下がおっしゃっていたのは、すでに研究されていたからなのね。

「そんな大事なものを私に?」

「アクトゥール嬢だからです。先ほどの者が言った内容が正しければ、おそらく今のあの2人に真っ向からぶつかれるのはこの戦場では貴女しかいません」

「・・・わかったわ」

「しかし、貴女だけに背負わせるつもりはありません。我々も助力致します」

「無理はしないでね」


私たちはムーノとジャンヌがいる方角に向かいながら軽く打ち合わせをした。アルマとエシロップ様は精神干渉魔法に耐性がある魔道具を装備しているとはいえ、何があるかわからない。そこで、精神干渉魔法への耐性がある私とクラトス様がジャンヌの相手をして、ムーノの相手をアルマとエシロップ様がすることになった。


「こころのとうだい」

私はジャンヌの魔力範囲に入る前に固有スキルを発動した。灯台のような絶対的な基準を心におくことで、外部からの精神干渉をうけても自分を見失わず無効化できる。グンマ人由来の素の精神耐性だと今のジャンヌだと万が一がある気がした。


「ヤットきたわね。メギツネェェェェ!!!!アンダにフクシュウしてやるぅぅぅ!」

何あれ。明らかに様子がおかしいじゃない。

「なぁマーサ嬢、あそこまで恨まれるなんてなんかしたのか?」

「学園ではスルーしていたし心当たりないわ、クラトス様。洗脳でもされてるんじゃない?」

「それもありうるな。おっあぶね」

ジャンヌがいきなり土魔法で石を飛ばしてきた。


アルマとエシロップ様のほうをチラッと見るとムーノとの戦闘が始まったようだ。魔力量に絶対的な差がある上に、すでにボロボロだ早く加勢に向かわないと。


「俺はサポートに回らせてくれ。暗殺未遂以降俺も鍛えがまだあれの相手は厳しい」

「わかったわ」

私はクラトス様のことを弱腰とは思わない。しっかりと自分の実力を把握しているのだ。自分の能力を過信して自滅するよりもはるかに良い。

「サポートは任せたわよ」


私は氷の塊を体の周りにいくつか出現させて、愛刀の桜花を構えた。氷の塊でジャンヌの土魔法を迎撃しながら接近した。

「そこっ!」

刀を振ったけれど、ジャンヌによけられてしまった。

「そんなのアタラナイワヨ、メギツネェェ」

その後も刀も魔法も躱されてしまった。学園卒業前のジャンヌはここまで動けなかったはずだ。もしかして、意識が混濁してて人格が沈んで、本来のヒロインスペックが活かされている?こっちはすでにボロボロなのよ、長期戦は避けないといけない。


「クラトス様!ジャンヌに少しでいいから隙を作れないかしら!」

「わかった!合図をしたら俺の後ろに隠れてくれ!」

私たちはジャンヌの攻撃をかわしながらタイミングを伺い始めた。



一方アルマとエシロップはムーノと対峙していた。

「エジロッブ!ナゼおれをウラギッタ!!!」

「裏切ってなどおりませんよ。わたしの進むべきを見つけただけです」

「ナンダトォォ!アグドゥールのイヌと今もイッショニいるジャナイカ!」

「アクトゥールの犬とは失礼ですね。お嬢様のメイドです」


アルマとエシロップは軽口こそ口にしているが、その顔には余裕がない。

「エシロップ様。失礼ながら彼には武の心得がほとんどなかったはずでは?」

「アルマさん、わたしもその認識でした。しかしこの動きは」

「あの剣の影響でしょうか。生贄の知識も活用できるのでしたっけ?兵士の知識でしょうか、やっかいですね」


さらに厄介なことに、ムーノは見た目を変えることができる固有スキルカメレオンを戦闘に織り交ぜていた。火の魔法に見せかけた物理的な本物の石を混ぜて飛ばしてきて、魔法で相殺もしにくいし、アルマの魔力反射でも防げない。アルマも意表をつかれてしまい、先程体に石をうけてしまっていた。


「まったくですね。先ほど受けた傷は大丈夫ですか?」

「石があたったくらい大丈夫と言いたいところなのですけど、おそらくアバラが何本か折れてます」

「無理しないでください。接近戦は得意なのでわたしが近づきます。今のムーノは、わたしの父である騎士団長よりは腕が悪いのでそれが救いですね」

「わたしの不注意で怪我したばかりに申し訳ありません。膨大な魔力も纏っているようなので、気をつけてください」


アルマはちらっと主人であるマーサ達の方をみた。


「マーサ嬢!今だ!」

私はクラトス様の合図をうけて、彼の後ろに隠れた。

「光線!!」

クラトス様は、光を束にまとめてジャンヌの目に向けて放った。いわゆる目潰しね!

「めがぁぁぁぁ!!」

ジャンヌが眩しさに目を抑えた隙に一気に近づき、愛刀桜花で切り掛かった。

「今度こそっ!」


ジャンヌの左手の薬指にはめられていた魔道具の指輪を指ごと切り離した。

「ギャアアイダイイイイイイ」

「メネシス!」

指輪に向かって魔道具を使用した。うまく起動してくれたのか、指輪に刻まれた魔法陣が消え、魔力も霧散した。


私はほっとしたのも束の間、指輪が壊されたようすをみたジャンヌがさらに取り乱し始めた。

「アタシのユビワ!アタシノユビワァァァ!!!!アアアアアアアアアアアアアア!!」


これは!かなりの量の魔力がジャンヌの体から放たれて暴走している!魔道具の許容範囲を超えたかも!


私が焦ってアルマとエシロップ様をみると、地面にへたり込んでいた。ジャンヌの魔力暴走をもろに受けてしまった!?大量の魔力を一瞬で全て放出したジャンヌが気を失ったことを一目で確認して、2人の加勢に向かおうと走り出したところ。


「オレノジャンヌにナニしてンダァァァ!!」

ムーノが近くにあった岩を剣で焼き切って投げてきた。って、あれっ?私の方にじゃない!?

「ごふっ」

振り返ると岩がぶつかったクラトス様が吹き飛ばされている。

「クラトス!?」

クラトス様の容体を確認するために近づこうとしたところ、目があった。自分で治癒するから構うなと目が語っている。

「でも」


そこでクラトス様が私の後ろを指差した。

ムーノが、多数の炎の矢を生成し、地面に転がって動かないアルマとエシロップ様に向かって放とうとしている。

「コロシテヤルゴロシテヤルゴロシテヤルッッッ!!」


私は氷の盾を生成しながら飛び出しだ。

「間に合えっ!」


アルマとエシロップ様の立ち塞がった私と氷の盾に、大量の炎の矢が襲いかかってきた。

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