第47話:ユースティティア王国サウプトンの戦い
ユースティティア王国の最南端にある都市サウプトンは、国境を接するスパイン帝国からおよそ10年ぶりに侵攻を受けている。
ユースティティア王国側は、第一王子ユーノ、聖女ファウナ、ルイス・アクトゥール、騎士団長ギデオン・ノムアダル、魔法師団長マーリン・ウォーカー、レオ・コリンズ、レイラ・カードナーが防衛のためにサウプトンに向かった。
彼らがサウプトンに着く頃には、すでに戦端が開かれていた。
戦場が見渡せる作戦会議テントで、第一王子ユーノが現場の指揮官に尋ねた。
「戦況は?」
「押され気味です。敵の数が多いうえに、部隊を複数に分けてこちらを撹乱しようとしてきております」
ルイスが戦場全体を見渡した。
「ふむ・・・敵のあの部隊と向こうの部隊は陽動だな。本命はわたしたちの本陣から見て、西にある見た目の人数が少なく見える部隊だろう」
ルイスの固有スキルは、アクチュアルといい真贋判定ができる。直感的に本物と偽物の見分けがつくという能力だが、ルイスの有能さにより、応用の幅が広がっている。先ほどのように、陽動を偽物の攻撃と判定ができる。
「わかった。では陽動に乗ったフリをして本命の部隊を我々が守りやすい場所に誘導しよう。それで、予定通りしばらくは防戦一方にすればいいな?」
騎士団長ギデオンが、ルイスに確認をとった。
「ギデオン、そうだな。エフィー殿下のこともだけど、彼も平和を願っているように思う。なに、前回の防衛戦は3年続いたんだ、少しくらい防戦が続いても大きな獲物が釣れればそれでいい」
不適な笑みを浮かべたルイスに、ユーノが話しかけた。
「アクトゥール公爵、防戦とはいえ多少は攻めた方がいいのではないか?」
「やりすぎなければ問題ありませんよ」
ユーノは、若さゆえに勢い任せに突撃しないでね、と言われたと解釈し、苦笑いしながら答えた。
「わかっている。適度に攻めて適度に負けてくる」
レオとレイラがユーノに同行を提案した。
「殿下、俺も一緒に向かいます」「わたしも一緒に行きます」
「心強いな。共に戦うのはこれが初めてか」
「「はい」」
ユーノとレオとレイラが具体的な打ち合わせを始めるまえに、ファウナが口を開いた。
「それではわたしは、防御に寄せた聖女の結界をはりつつ、怪我をした人の治療をすぐにおこなえるように待機していますね」
「ああ頼んだ、ファウナ」
「任せてください、ユーノ様」
「ところで、ファウナ嬢、聖女の結界は他の結界と反発するか?」
「ルイス様、性質が真反対の結界同士だと反発し合うと思いますけど、同じ性質なら問題ないと思います」
「わかった、ではわたしも防御結界をはっておこう」
ある程度の方針が固まったところで、それまでつまらなそうにしていた魔法師団長マーリン・ウォーカーが動き出した。
「おおかた話は終わりましたかね。さて、僕は、」
「「あなたはしばらく本陣でおとなしくしていてください」」
ルイス、ギデオンが、マーリンの言葉を遮った。
「なぜですか!僕はウズウズしているんですよ!」
「それが理由だ、マーリン。お前確実にやりすぎるだろう。水魔法も使えるから治癒魔法も使えるな?ファウナ嬢の手伝いをしててくれ」
「ギデオン、そこをなんとか・・・!」
「しばらくしたら暴れる機会が訪れるだろう。その時になったら好きにしていい。試したい魔法も思う存分試していい」
「わかった!約束だぞ!」
騎士団長と魔法師団長は共闘することが多いからか、ギデオンはマーリンの扱いをわかっていた。
そして、ユーノはレオレイラとの打ち合わせを終え、自分の準備に取り掛かかりながらつぶやいていた。
「先日の王宮の爆破に合わせて、地下牢からムーノとジャンヌが消えたのは気がかかりだが、今は防衛戦に集中しよう」
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2週間ほど経過した頃、事態が大きく動いた。
ギデオンが興奮した様子でルイスに声をかけている。
「あの旗を見ろ!!ついに大物のお出ましだ!」
「アイフィルト殿はうまくやってくれたようだな。おや?無敵戦隊と名高いかの部隊の姿もあるぞ?」
無敵戦隊とは、スパイン帝国が南中央大陸を統一した原動力となった主力部隊だ。その圧倒的な強さから、無敵戦隊とあだながつけられていた。統一後は、各地を権力や力で抑えるための部隊になっていた。
「それは腕がなるな!皇帝陛下と第一皇子がじきじきに戦場に現れたんだそれくらいしてもらわないと!」
ユーノがスパイン帝国の皇帝と第一皇子がいる方向を向いた。
「あれが、暴力と権力で南中央大陸に圧政を敷く皇帝か。今度は、北中央大陸に戦火を撒き散らすつもりか?悪しき皇帝の愚行は、必ずとめる」
「やっとですか!!!もういいですよね!それでは行ってきます!」
マーリン・ウォーカーがもう待ちきれないとばかりに戦場に駆けて行った。
ルイスとギデオンが顔を見合わせた。
「アイフィルト殿のためにもう少し時間を稼ぎたいところだが・・・」
「大丈夫だろルイス。相手には無敵戦隊がいる。マーリンといえど手こずる」
「確かにな。我々は我々で攻勢に転じよう」
「ああ。ルイス、ゴーレムを頼めるか?」
「わかった。場所はどうする?相手は皇帝が到着したばかりだ、本格的な作戦まで時間もあるだろう。見たところ、今動きを見せている敵の部隊も陽動ばかりだな」
「せっかくだ、皇帝陛下に到着のご挨拶をしないか?」
「それは名案だな!」
ルイスとギデオンは具体的な作成を立て始めた。
ユーノと、レオとレイラや戦場の様子を観察していた。あとで自分たちにも役割が回ってくるだろう、それまで学べるところから学び、成長しようとしている。
「ユーノ殿下、俺はマーリン様が戦っているところを初めてみたのですけど、あんな感じなんですか?」
「わたしも間近で見るのは初めてなのだが、なんだかすごいな」
ユーノは少し遠い目をしていた。
戦場では、マーリンが嬉々として魔法を発動している。今は、火魔法と風魔法を合成した火炎旋風を巻き起こしている。
「クレイジークアッド・・・間近でみるとすごいわ」
「そうだな、レイラ。あっ、今使った魔法、俺とマーサ嬢とアルマさんが使った水蒸気爆発じゃないか。爆風もある程度制御されているし、水と火と風を同時に使ったのか?」
マーリンの固有スキルは魔力相互変換であり、魔法の属性を損失なく変換することができるため、4大属性全てを得意属性レベルで扱える。その非常に稀有な能力と、マッドサイエンティストならぬ、マッドウィザードのような様子から、クレイジークアッドと呼ばれていた。
「あれは、参考にならなそうね」
「ああ・・・」




