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第46話:戦地に向かいます

スパイン帝国から宣誓布告をうけた翌日、マーサはアクトゥール公爵邸でアメリアに向かう準備をしていた。物資の提供だけでは、アメリアが防衛できない可能性が高い。自分で防衛に参加する事にしたようだ。


「まさか、自分から戦地に赴こうとするなんてね」

それだけアメリアでの日々が彼女の中で大きくなっていたのだろう。

マーサは、武器や装備を整え、自室の机の上に置き手紙を残した。ゲームの中のマーサ・アクトゥールは戦場で散るのだ。

「さてとこれでいいかしら」


マーサは、物思いに耽りながら一通り公爵邸を歩いて回った後、固有スキルの転移ポイントがある部屋に向かった。スパイン帝国が攻めてくる予定のオーランドと同じアメリアの南部地方にある別荘に転移するつもりのようだ。そして、ドアを開けると、目の前には予期せぬ人物がいた。

「アルマ・・・?ファウナ様・・・?なんでここに?」

アルマはとても怒っているような顔で、ファウナは無表情だ。

「昨日、王宮の廊下で見かけたお嬢様の様子がおかしかったとファウナ様に聞きました」

「マーサ様の様子が普段と違かったので、心配になり見にきました」

「武器や装備を整えている様子をみると、ここにきて正解でした。お嬢様、どちらに行かれるのですか?」

アルマはこの転移ポイントのつながっている先を知らないわけではない。

「アメリアよ」

「何をしに?」

「スパイン帝国からの侵攻に備えて。アルマ、そこをどいてくれないかしら?」

アルマは転移ポイントを遮るように立っている。ファウナは、一歩引いて主従のやり取りを見守るつもりだ。

「お嬢様が行くならわたしも行きます」

「何を言っているの。あなたはメイドよ。戦闘員じゃないわ」

「それを言ったらお嬢様は、貴族令嬢です。貴族令嬢が自ら戦地に行くのはおかしいです」

「令嬢とはいえ私はアクトゥールよ。何もおかしくないわ。何のために普段権力を持つことを許されていると思うの」

「わたしは、お嬢様の専属メイドです。公爵家に仕えるに相応しいメイドとして主人についていきます」

「そう・・・わかったわ。私の専属メイドの任を今をもって解きます」

「なっ!なぜですかお嬢様!?」

「ここから先は本物の戦争なのよ?死ぬかもしれない場所にあなたを連れて行けないわ」

「でもっ!」

「そういうわけだから、そこをどいてくれない?できれば力づくは避けたいわ」


言葉ではそう言いつつも魔力を纏い始めたマーサの様子を見て、アルマは泣きそうな顔をしだした。

「わたしは、わたしはそんなに頼りないですか?お嬢様が最近わたしを遠ざけていることは薄々気づいていましたけれど、何か理由があるのかと思って、、、わたしは簡単に切り捨てられるほどお嬢様にとってどうでもいい存在なんですか?」

「どうでもいいとは思ってないわ。姉のように慕っている」

「だったら、」

「だからこそ、大事だからこそ連れて行きたくないのよ」

「わたしにとっては、あなたもそのような存在なんですよ。今まで一緒にダフネ様の鍛錬を受けたり、スタンピートも止めたり、ファントムとしていろいろな場所を巡って、冒険者として一緒に経験を積み成長してきたじゃないですか」


「そうだけど・・・」

「今さらわたしを1人にしないでくださいよ・・・あなたに何かあったらわたしはどうすればいいのですか」

「それは・・・」

「わたしのことを姉のように慕ってくれていたように、わたしも妹のように思っていました。専属メイドの任を解かれたとしても、わたしはあなたと共に戦場に向かいます」

「アルマ・・・私はあなたを危険に晒したくないの」

「わたしもですよ」

「私が行こうとしているのは、戦場のど真ん中なのよ」

「知ってます」

「アルマ・・・」

「なんですか」

「・・・わかったわ。その代わり、自分の身の安全を最優先にしてちょうだい」

「!!わかりました!」

「アルマがくるなら、私も全力でやろうかしら。危ない目は少ない方がいいわよね」

そのマーサの何気ない一言に、泣いていたアルマの表情が固まった。

「お嬢様、その、全力とは・・・?」

「えっ?固有スキルも使うし、高威力の魔法も使うわよ?」

「氷河の小妖精や、悪魔降臨祭と噂になった時のような・・・?」

「ちょっと!昔の話でしょう!今は調整できます!」


今まで2人のやりとりを見守っていたファウナは、2人の様子がいつもの雰囲気になったのを見計らって口を開いた。

「いやー、一時はどうなるかと思いましたよ・・・こんなにヒヤヒヤしたのは人生で初めてかもしれないです」

実際ファウナは何度か口を開きそうになっていたけど、我慢していた。

「ファウナ様まで来るとは言わないわよね?」

「行きたいのはやまやまなのですけれど、わたしはサウプトンに向かおうと思います」

「そう、気をつけてね」

「はい。マーサ様のことですから、さっさとオーランドの防衛を済ませてサウプトンにも来ようとしていませんか?」

「えっ?あはは・・・なんでわかったの?」

「はぁ、やはりそうですか。サウプトンはわたしたちが何とかするので、マーサ様はオーランドの事に集中してください。い・い・で・す・か?」

「はい、わかりました」

マーサは、ファウナの圧に押されたようだ。


「それを言いに来てくれたの?」

「それもありますけど、マーサ様とアルマさんがこのまますれ違ったままなのは見ていられなくて・・・」

「心配をかけて申し訳なかったわ」


「いえいえ、解決したようでよかったです。さぁ2人ともこちらに来てください」


マーサとアルマは、ファウナに言われるがまま近づいた。

ファウナが両手を顔の前で組み、祈るようにすると、マーサとアルマが優しい光に包まれた。

「ファウナ様、これは・・・?」

マーサは自分の体を確認していた。動きが軽く感じているようだ。

「お二人に聖女の加護をかけました。全体的に能力があがりますし、軽い治癒なら自動で発動します。ついでに、服に防御魔法もかけました。魔法ならドラゴンブレス、物理ならドラゴンクローを防げます。2年生の時の課外授業でマーサ様にかけてもらいましたけど、やっと追いつきました」

微笑むファウナに、マーサは嬉しさで胸の奥が熱くなるのを感じた。

「ありがとう。助かるわ」

マーサが固有スキルを発動して、転移用のゲートを開いた。

「アルマ、行きましょう」

「はい」

2人は一緒にゲートに足を踏み入れた。

「ファウナ様、それじゃ行ってくるわね」

「ファウナ様、行ってまいります」

「いってっらっしゃい!帰ってきたら、氷河の小妖精と悪魔降臨祭について教えてくださいね」

「えっ?それは、あっ」


マーサが何か言う前に、マーサとアルマの姿がゲートの奥に消えた。

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