第45話:戦争は避けられないのでしょうか
王立魔法学園の卒業パーティーでムーノとジャンヌが捕えられてから、調査もひと段落した。
ユースティティアに諜報員を送り込んできたアメリアへの対応を決める会議が、王宮で行われている。マーサもアメリアに関係が深いため、その会議に同席していた。
しかし、会議はさまざまな立場の人間の意見が交差し、難航していた。
「アメリアへの統治を厳しくするべきでは?諜報員を送り込むなど、属国としてあるまじき行いでしょう。断固とした対応をとらねば示しがつきますまい」
「それも一理あるが、元はと言えば、ムーノ氏に対してのアメリア側が失望したのも大きいのではないですか?」
「ジャンヌ・スプーキーが送り込まれたのは、スパイン帝国との戦争時ですよ?ムーノ氏への失望の前から、アメリアは準備していたと思われます」
「諜報員を送り込んだのはアメリアの総意ではないことはわかっている、大目に見ては?」
「ムーノ氏への失望でアメリアでの独立の機運が高まったのも事実ですぞ」
会議の参加者が思い思いのことを口にし、終着点が見えなくなっている。属国から宗主国に諜報員が送り込まれたことは大きな事件であり、その影響力も広く、議題も多い。会議も連日続いていた。
会議の様子を見かねた国王が口を開いた。
「みなの意見はわかった。一度休憩を挟もう」
会議の参加者が一度部屋から退出しようとしたところ、王宮のどこかから大きな爆発音が響き渡った。
「ドカーーーン!!!」
「何事だ!?」
国王が事態の把握をするべく口を開いた。
そこに、アイフィルトが急いだ様子で部屋に駆け込んできた。
「皆さん!緊急事態です!スパイン帝国がユースティティアへの侵攻をすべく出兵しました。力及ばす止められず申し訳ありません。先ほどの王宮の爆破は、宣戦布告のようです・・・」
会議室がざわつき、アイフィルトがスパイン帝国の第三皇子であることを知っている者は非難の目を向けた。
国王がアイフィルトに声をかけた。
「アイフィルト殿、報告感謝する。他に知っていることはないか?」
「陛下、スパイン帝国はユースティティアの最南端のサウプトンとアメリアの南部の湾岸都市オーランドの2地点に同時に攻め入るようです。数日後には、現地に到着するでしょう」
突然、戦争が開始されるという情報を知った会議室は騒然となったが、そんな中、会議に参加していたマーサの父ルイスが口を開いた。
「ほう、また懲りもせずスパイン帝国が攻めてくるのですね。これはこれは丁重におもてなしをしなければ」
好戦的だけど落ち着いた様子のルイスを見て、会議の参加者も冷静さを取り戻しつつあるようだ。
「アクトゥール公爵、此度も頼めるか?」
「陛下、もちろんでございます。わたしたちの家はそのためにあります」
落ち着きを取り戻した会議の参加者が声を発した。
「アクトゥール公爵が参戦なされるならサウプトンは当面問題ないでしょう。問題は、アメリアのオーランドをどうするかですね」
会議の別の参加者が声を発した。
「諜報員を送り込んできた属国を助けるのですか?」
「そうしなれば、スパイン帝国に占領されてしまうかもしれない」
アメリアについての話し合いは、戦力は送らず、物資の提供にとどめることで話がついた。諜報員を送り込んできた属国、という悪い印象が大きいようだ。仮にスパイン帝国にオーランドが占領されても、すぐに取り返せばいい、という考えのようだ。
それを聞いたマーサは焦っていた。アメリアのオーランドだけでスパイン帝国を防げるの?湾岸都市を占領されると、交通の要所をおさえられることになる。侵攻の戦火が拡大しない?
一方、アイフィルトが再度口を開いた。
「国王陛下、無理を承知で申し上げますが、わたしにスパイン帝国に向かう許可を頂けますか。出兵を止められなかったのはわたしの落ち度ですが、他にも準備していたことがあります。この戦争を最小限の被害でとめてみせます」
国王が答えるまえに別の会議の参加者が声を上げた
「何を言う!アイフィルト殿、そのまま祖国に協力するつもりではないか?ここ最近王宮にも足を運んでいたようだ、有益な情報も得ているだろう。我々としてはその可能性がある以上は、あなたを祖国にいかせるわけにはいかない」
「ごもっともな理由です。ですが、」
「くどい!警備兵!捕虜として連れて行け!」
「少々お待ちくださいませんか?」
第一王子エフィーが割って入った。
「エフィー殿下、なんでしょうか?」
「皆様のご懸念も尤もです。しかし、アイフィルト様は祖国の侵攻に協力するつもりはないとわたくしは判断します。わたくしが責任を取りますので、彼を行かせてあげてくれませんか?」
「殿下、しかし」
「もしも、アイフィルト様がユースティティアに害を与える行いをしたら、わたくし自ら彼を捕まえに戦場に赴き捕虜にします。そのあと、責任を取りわたくしは王女の地位を降りますわ」
エフィーの言葉に会議室が静まり返った。
「エフィーよ、信ずるに足る理由があるのだな?」
「ええ、国王陛下」
「わかった。アイフィルト殿、そなたの帰国を認めよう」
その後、会議は具体的な戦争の対策の話に移った。アイフィルトはルイスや騎士団長と相談をしてからスパイン帝国に向け出発した。




