第3章-4
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-ドネス会議室-
気付くと風景が変わっていることに気付き、一瞬で目的会場に移動した3名は円卓に鎮座或いはその後ろに控えている面々を見渡す。目を見開くもの、ほうっと漏らすもの、この人誰?みたいな感じの反応等様々だ。しかし総じて言えることはリト自身に目が行くことと、バカラを見て驚くものが多数であることだった。
「ようこそおいでくださいました。わたくしはドネスを納めるアプリコットと申します。デーモンのお二方にはご足労頂き感謝いたします。マイルズ子爵も此度の案内お手数かけるばかりになり申し訳ございません」
きりっとした佇まいの銀髪青眼の女性は恭しく頭を垂れる。反応が遅れ「あ、こちらこそです」と言いながら頭を下げるリトと、そもそもリトしか見ていないバカラ、「いえいえ」と右手を左右に振るマイルズとにさらに周囲の視線が刺さる。そんな様子を見かねてか、アプリコットと名乗った女性の後ろに控える、細身だがかなり鍛えてそうだなと思われる男性が着座を促してきた。リトとマイルズ子爵は席に着き、初めて見るやや小柄なデーモンの男性とバカラはその後ろに控えている。リトはこの人が転移の前に言っていたセブンス子爵かなと判断する。
リトが男性を見ていると、ちりーんと鈴の音が鳴り「定刻となりました」とアプリコットの背後に立つ女性が発言する。
「此度の招集をお受け頂いたこと感謝する。ドネス国の長アプリコットの名の下で8か国会議を執り行う。先日カーメリーのマイルズ子爵の報告により、魔王の因子を持つ者が判明した。よってその者に招集を願い、魔王の襲名を執行する」
アプリコットは威勢よく告げるが、リトは幾分置いてけぼり感を否めないなと感じる。
「先の会議では魔王の因子を持つ者に対して魔王を襲名することは決定事項となっている。魔王の因子を持つ者よ。魔王を受け継いでくださるか?」
「えーと…嫌と答えるとどうなるのでしょうか?」
その言葉を聞き周囲が一瞬ざわつく。すぐに静けさを取り戻すが、目に見えてアプリコットは狼狽えている。
「えっと、魔大陸では魔王の因子を持つ者が必ず魔王を受け継ぐこととなっている。あくまで確認はする取り決めだが、その確定事項に近いので断ることはできない」
「ではわたしの目が赤いというだけで勇者と戦えと、ここにいる皆さんは仰るのでしょうか」
「それは…。そういうことになる」
「拒否権はないと」
「…」
だんだんと発言できなくなる様子は、はた目にはかわいそうと映るかもしれないが、リトからすれば死んだかもしれないと思ったら生き返って、見た目が変わったと思いきや選ばれしものだから戦えと言われ、ふざけるなと内心思っている。
「リト殿、アプリコットをそう責めずとも」
「いやあなたも大概ですよマイルズ子爵。わたしが魔王の因子かもって思ってバカラの周辺を調べてたみたいだけど、さも鬼の首を取ったかのような態度と自分は関係ありませんって今の発現はそちらのアプリコットより腹が立ちます」
目を見開き固まるマイルズに、背後に控えるバカラは含み笑いをしている。この場にいる皆が固まっている中そんな態度を取っているのはバカラだけである。
「勇者が現れ、魔王が戦う歴史についてはバカラに伺っております。魔王の因子が一人ではなかった時のことも聞いておりますが、今回はわたししか見つからなかったのでしょう。ですが、この世界に生れ落ちて半年も経っていない者に初代の魔王の残した言葉だけで魔王を次、勇者に戦わせるのはどうなんでしょうか。逆の立場で皆さんは納得できるのでしょうか?」
しんと静まり返る会議室。リトの言葉に誰も返せずにいる、または反応を見ている状況であるが周囲の寒さの厳しいこの地で、更に温度が下がった気がするのはこの場にいる多くの者が思うところである。
初投稿となります。
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