表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハオトの魔王  作者: 月
30/38

第2章-15

----------


―カーメリーバカラ侯爵邸倉庫―

 

 バカラに連れてこられたのは屋敷の倉庫だ。初めてくる場所なので目を開けて確認するが、今使っている客室の4倍位の広さがあり、鎧や剣、装飾品、絵画、等の工芸や美術品が数多く置かれている。ただ雑多に置かれているわけではなく、定期的に手入れがされているようであった。そんな中で楽器の保管場所に案内される。

 壁に掛けられたヴィオリンとヴィオラ、並んだ1~3段ボックスに形よくおかれているトランペット、コルネットトロンボーン、フルート、クラリネット等々。チェロやコントラバス、チューバなどの大きなものは置台などを使いながら壁付近に保管されている。

 これ全部でいくらくらいするんだろう…とか思いながら、喜びよりも壊したら…といった気持ちの方が強くなる。


「リト様にはお気に召されませんでしたか?」


 こちらが黙ったままだったので、変に勘違いしたバカラからそんな声を掛けられる。


「いやいや、違うの。そうじゃなくて、学校でもないのにこんなに沢山の楽器があって驚いたの。あととても高そうだし…」


 微笑みながらバカラはこちらの様子を伺う。


「学校というのは楽器を取り扱うお店なのでしょうか?ここの品々は個人的に収集したものばかりですが、お気に召されなかった訳ではないようで安心致しました」


「えーと、学校っていうのは勉強するところなの。集団生活を学ぶ場所でもあって、そこには楽器で演奏する人たちが集まる場所もあるの。バカラは何か吹けたり弾けたりできるの?」


「おやおや、左様でしたか。早計な判断で申し訳ございません。あと楽器の扱いですが、ここにあるものは専ら観賞用です」


「そっかあ、えーっと実は触ってみたいものがあるんだけど、大丈夫かなあ?」


「もちろん問題ございませんよ」


 その言葉を聞き、リトが一番気になっていた楽器に目を向ける。その傍まで近づき目を閉じ、その楽器に触れる。

 

 この感触だ。


 念のため目を開けて、鍵盤蓋と大屋根を開ける。小さい頃は兄さんに準備をしてもらっていたが、中学生になると見えなくともその所作ができていた。念のため目視で確認しつつ、準備を整える。その後椅子に腰かけ、ペダルに足を置きつつ、鍵盤を指でなぞる。そこで目を瞑りそしてゆっくりと演奏する。イメージは夜の湖。水面に差し込む月の光。湖面をゆっくりと跳ねる様に歩く。そこから徐々に跳ね回り、またゆっくりと歩く。


 

 

 音色を連ねながら1曲演奏し終え、手を下ろしペダルから足を外す。椅子から立ち上がり、バカラに向かって一礼する。


 いくつもの拍手の音が聞こえ驚いて目を開けると、バカラだけでなくピアニッシモさんや執事さん、屋敷の皆が集まりこちらに拍手を送っている。集中しすぎて全然気付いていなかった。


「先程の曲はリト様のいらっしゃった世界の音楽でしょうか。ユーラス国での曲に似ておりましたが、どこか異郷漂う音調で感銘を受けました」


 バカラの言葉に集まった一同はうんうんと頷く。久しぶりの演奏であり、指もたどたどしかった部分があったので、こんな人数で聞かれると気恥ずかしさがある。


「ありがとう。わたしが、一番最初に覚えた曲で、毎日一回は演奏していた曲なの。ところでこのグランドピアノは誰が調律しているの?」


「調律?」


「申し上げます。こちらの倉庫内の保管、管理などは私ピアニッシモと執事のデンヴィッドで行っております」


 なんと、これだけの保管物を二人で切り盛りしているそうだ。補足で知識として分からない部分は、転移を使い他の詳しい種族に聞いているとのこと。首無し族のデイヴィッドさんはどうやって…と思っていたが、人で言う頭部の部分がないだけで、目や鼻などの器官は身体の別の部位にあるそうだ。とはいえ、このピアノ一台だけでも、丁寧な保管方法と調律が定期的に行われていることが伺える。全く音にずれがないんだから。


「バカラ。またここで弾いてもいいかなあ。あ、ちゃんと弾くときには確認するから」


「リト様が利用したい時にこちらの部屋を使ってください。ただし、ピアニッシモかデイヴィッドのどちらかにはお声掛けをお願い致します。あと、そうですね。曲を弾くときには是非私にもお声掛けください」


「はい。ありがとう、バカラ。ピアニッシモさんとデイヴィッドさんもその時にはお願いします」


 鍵盤に触れた手が、音階が覚えている。音色の際はあるが、心地良いものに違いはない。改めて今回音楽というものを思い出せたこと、そして聞いたメロディを決して忘れないようにしよう。


 その後はピアノを片付けて、順番に倉庫を後にするのだが、先ずはリト様からという声に反応して先んじて倉庫から出ることになる。倉庫には物が多く、目を開けてゆっくりと室外に出ることにする。


 ふっと、外気が入ったことに気付いた。門扉は開いており、そこには先日感じた気配の者が立っていた。


「失礼致します。バカラ侯爵邸の皆様。今回は門から入りましたが、お迎えがなかったためご様子を伺うためにもお屋敷に入ったことはご了承くださいませ。改めてお初お目にかかりますリト様。その紅の瞳についてお話を聞いてもよろしいでしょうか?」


初投稿となります。

誤字、脱字、慣用句の間違った使い方、矛盾点などのご指摘やご意見、ご感想を頂けましたら幸いでございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ