第2章-13
---------------
-カーメリー・客室(リトの部屋)-
マイルズ子爵が来てから数日が経っていた。わたしは魔王の因子を持つとのことだが、そもそも魔王って勇者と戦うってことらしい。この世界にきてバカラ曰く、かなりの強さと太鼓判を押されたが、わたし自身はそもそも、生前は戦いと無縁の世界からきたのだ。急に君は魔王だから勇者と戦えとかって言われても、はい?としか返せない。とはいえ、その歴史は300年以上続いているらしい…。バカラは魔王の件の詳細はまだ話してくれないが、いずれにしても好きにしてよいと話してくれたんだけども。
正直に言って戦いたくない。当たり前だが、その当たり前も生前の世界での常識で考えているだけだ。なんでこんな世界に転生したんだろう…。どうしようもないやるせなさでいっぱいになる。
…ああ、久しぶりにピアノが弾きたい…。とそう思った。あまりにも目まぐるしい日々の中で考えが及ばなかったが、これまで毎日弾いてきた楽器をこの世界にきてから一度も引いていないことに今更ながらに気が付いた。今弾いたら絶対に指動かないだろうなあ、でも久しぶりに弾きたいなあ…。
もやもやした時、辛い時、楽しい時。いつも傍にあった楽器と戯れていたことを思い出す。今のどうしようもない状況の中でどうにか気分を晴らしたいこともあるが、いざ思い出すと指がうずうずする。
「よし」
悶々としてベッドに横たわっていたわたしは、一息に立ち上がりバカラの執務室を目指す。
―バカラ執務室―
2度ノックしてバカラの返事を待つ。
「どうぞ」
と短く返答を受け、扉を開ける。ノックの前から、白杖の音でわたしが来ていたことに気付いたのであろう。バカラは書類を下ろし、こちらを向く。あれって何の書類なんだろう。
「何かご不便でもございましたか?」
こちらの意図を探ってバカラが尋ねてくる。
「聞きたいことがあるのだけど…、この世界には楽器というものはないのかしら?」
唐突に振られた話題にバカラは目を瞬く。
「楽器…ですか…。」
初投稿となります。
誤字、脱字、慣用句の間違った使い方、矛盾点などのご指摘やご意見、ご感想を頂けましたら幸いでございます。




