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ハオトの魔王  作者: 月
21/38

第2章-6

「やれやれ、リト様には不愉快な思いをさせてしまい…」


「気にしてないからいいの。ところで今回の件色々教えてもらえるかしら」


「そうですね。私からご説明しようとした矢先でしたので、私も些か困惑しておりました。ただ、マイルズ子爵他デーモンの他の者には今回の件は大層興味を抱く内容になったかと。そもそもこちらの情報を知っていての行動のようでしたからね」

 

「というと?」

 

「マイルズ子爵。先程来たものは現在のカーメリーの侯爵候補。つまりは私の次の階級の者です。これまでは執務室に突然現れるような不遜な行動はとったことはありませんが、その行動を取ったということはこちらの状況はある程度知っているか、確認を兼ねてのものだったのでしょう」


 つまりはわたしのことを知っていたのではという推測であったようなのだが、なにか不都合があるのだろうか。

 

「そもそもわたしの情報を伏せているの?理由を聞いてもいいかしら」

 

「…それについては勇者と、魔王の因子についてご説明致しましょう。先ず勇者とは何なのかということについてですが、ユーラス国から選抜される魔王を倒すものです」


「魔王?その人は魔大陸にいるの?」


「勇者の存在が現れてから、時同じくして魔大陸でも勇者を倒すべく魔王を選任致します。現時点においては魔王は不在です。この魔王の選任に当たって先程申し上げました、魔王の因子が鍵となるのです。そして魔王の因子とは何かですが…その体に特徴的な赤、紅の色を特徴としている者を指します」


「…」


 何故マイルズ子爵がこのような行動に出たかがなんとなく理解できた。ようは勇者に対抗すべき魔王を選ぶ要素である魔王の因子を持つ者が現れていないのであろう。そしてそんな時に侯爵家に他のデーモンが生まれていたとすれば確認することも道理である。だがより分からなくなったこともある。


「わたしは紅の瞳を持つ魔王の因子であると。だからあなたはわたしを保護したの?」


 そうバカラはその瞳の色に惹かれたようなことを言っていた。そしてその瞳の持つ意味も知っている。だけど違和感が拭えない。


「わたしに会ってすぐに攻撃したバカラです。本来ならわたしはバカラに必要とされない存在でしょう。ですが紅の瞳を持つ…魔王の因子を持つわたしだったが故にわたしを匿ったということでしょうか?」


「それは違います。リト様」


 バカラはまっすぐにわたしを見つめる。


「紅の瞳の持つ意味について黙っていたことは私の個人的な行動です。リト様には…なんとなく分かるのでしょうね。相手の嘘や隠したいこと、本当のことを言っているか等が。…少々お時間を頂きまして今からご説明できればと。よろしいでしょうか?」


その言葉にわたしはこくりと頷く。



---------------


―カーメリー?―


 転移したマイルズ子爵はひどく困惑していた。普段の彼であれば冷静に物事を見据え、的確に判断できるだけの知識と技量、力がある。今回についても新しく生まれたデーモンがバカラ侯爵邸に住んでいることも諜報部より聞いており、侯爵の執務室にピンポイントで転移したことも侯爵の性格を知った上で誤魔化されることを避けるためだった。そして丁度件の人物が目の前におり、あとは確認するだけであった。しかしだ。そこからは予測外のできごとが続いた。


 一つ目はバカラ侯爵の対応だ。適当に誤魔化すか、素直に情報打ち明けるかと予想していたところ、侯爵はこちらを消すつもりで殺気を放ってきた。あれは本気で放ったものだったことをその身が感じ取っている。ここ250年程は比肩する相手との戦闘もほとんどなかった中で、死を予感した出来事であった。それだけの実力差があり、その性格もある程度知っている侯爵が、様付で生まれたばかりのデーモンを呼んでいたのだ。確実に何かあることを示している。…いやそもそも自分が今回の行動を起こし、侯爵の執務室に転移してきたことを見て、侯爵もうすうすこちらの思惑は気付いており、隠す必要のないことだと判断したのであろう。

 

 二つ目は、閉眼しているあのデーモンの少女だ。向けられていない殺気であっても、侯爵の侍従はあのような反応であったのに、彼女はその殺気の主を諌めたのだ。そしてあの振る舞い。相当な魔力を持っており、閉眼していてもこちらの挙動を理解していたのだ。

 

 困惑はより深まり、戻ってきた執務室にて椅子に腰を掛ける。侯爵があのような謙った態度をするのはいつ振りだろうか。彼は自分より本当の意味で上の存在でなければあのような態度はしない。大公…初代魔王様以降そういった人物はいただろうか。…いやそもそも初代魔王様亡き後はほとんどの時間を侯爵家で過ごしているようであったため、定かでない部分もあるのだが。悶々と考えるがやはりあの女性デーモンが未知数で何も考えがまとまらない。暫く時間をおいて改めてきちんとした手順で伺おう。そのためにも先ずは他の子爵たち

と今回のことに関して話をしておきたい。


「仮に…いやおそらく彼女が魔王の因子の持ち主であろうが…侯爵はどうするつもりなのだろうか」


初投稿となります。

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