第2章-4
この世界にある魔法という概念だが、この世界というより魔大陸の種族が使用できるという認識の方が正しいとのこと。西部の種族も魔法のようなものを使うが、同じものではないということで詳細は分かっていない。魔法の概念自体は4元素-地水火風-で理解されているが、こちらも分かっていないことが多いので…、つまりはわからないことだらけなのだが、逆にわかっているものをかき集めた結果、4元素の概念が生まれたとのことである。前にバカラと話した妖術や幻術は魔法の亜種的な取り扱いと説明を受ける。
その他理科学的なところでは、先述の魔法の要素が合わさって目下実験中である。熱エネルギーや物理エネルギー等、魔法の干渉をゼロにできないことから観測が非常に難しいので、確実に同じとは言い切れない。とはいえ、水は冷やしたら固まる、熱したら水蒸気になる部分は同じなので、生前での状況と大体同じと把握している。あとは魔法との干渉具合をチェックするだけだ。
そういえば、バカラは侯爵であるのだが、やはりお金持ちに間違いはなく、算術の学びでの金銭の理解でそのことを知ることとなった。ざっくりとしたものだが、1ブロン=1円で、1000ブロン=1シルバ、1000シルバ=1ゴルドとして、自分の部屋としてあてがわれた調度品の一つが2~3ゴルドとのこと。物の一つで200~300万円とすれば言わずもがな大富豪である。
そういったことを教わりつつ、屋敷で従事している人達と関わりつつ、生活に慣れていっている。視覚情報にも慣れたもので、見てなかった時との認識のずれがかなり改善されている。目を開けている時間が半分、瞑っている時間が半分として視覚認識の訓練をしていたが、ここにきて2か月してからは目を瞑っている方が落ち着くので、一日の1/4は目を開け、3/4は閉眼している。今は目を瞑り、居候している自室にて魔力のコントロールを練習中だ。
こんこんと扉をノックする音に反応し、音のした方を振り返る。
「失礼致します。リト様、侯爵様がお呼びです」
扉の向こうからだろう、くぐもった声の主は同じデーモンのピアニッシモさんだ。バカラの侍従で、秘書的ポジジョンである。
「はい。すぐにお伺いします」
すっと床から立ち上がり、白杖を手にし迷わずに扉まで移動する。扉を開けると数m先にピアニッシモさんの気配を感じる。
「リト様。慣れていらっしゃるのは存じております。ですがお怪我をされませぬよう、移動の際には目を開けていただけませんか」
「大丈夫ですよピアニッシモさん。ところでバカラはどちらにいるの?」
何度も繰り返したことやり取りであり、最後にピアニッシモさんのため息で締めくくられる。
「…侯爵様は執務室でお待ちです。ご一緒致します」
そう言いながらいつも先導してくれるのだ。
ピアニッシモさんが前を歩き、その音と白状を頼りに前を歩く。バカラの執務室までの道のりは何度も言っているため覚えているが、それでもピアニッシモさんは丁寧にこちらの歩調に合わせて歩いてくれている。前に歩くピアニッシモさんの足音が止み、私も足取りを止めると一瞬間をおいてから執務室の扉がノックする音が聞こえる。
「バカラ様失礼致します。リト様をお連れ致しました」
「ありがとう。お入りください」
扉が開き、バカラに転移してもらった位置まで足音で誘導してもらう。
「リト様。何か困りごとは起きておりませんか」
定期的にそのように確認してくれているのだが、なかなかに困っていない状況なので素直にそう答える。
「いつもありがとう。特に困っていることはないわ」
「いつでもお困りの折にはお声かけください」
ふとそこで、バカラの普段のトーンからやや暗く感じ、率直に尋ねる。
「寧ろ何か困っていることでもあるの?」
「…おやおや、そういったところには驚かされますね」
基本的にはポーカーフェイスは得意なんですがとバカラは話すが、そもそも見てないのだからわたしには関係ない。
「リト様にはお隠し事が難しいようで、ここは素直にお伝えしようかと…」
そう告げたところで、ふっと周りの空気が変わる。わたしが気付いていてから一秒。二秒は経っていない。そのくらいの差でバカラとピアニッシモさんが気付く。
「マイルズ子爵。あなたはいつからそんなに不躾になったのですか。普段は転移するにしても必ず門から訪ねてくるのではないですか?」
「侯爵。失礼を承知で此度訪問致しました。こちらの要件は2点。一点目は勇者は現在ミサカニの森付近を移動中、もう一点は魔王の因子が各国見つかっていないという案件です。…追加で質問になりますが、こちらの女性はどなたでしょうか?」
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