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ハオトの魔王  作者: 月
14/38

第1章-13

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-ドネス会議室-

 アプリコットは各国との会談が終わってから、それぞれの重鎮に挨拶を済ませ執務室に戻っていた。カーメリー代表の子爵は挨拶もそこそこにすぐに姿を消し、アーシールとジプターの長老方は隣国同士且つ旧友であることから会議室を出てすぐに居酒屋へと向かっていった。ラジールとカドミーニ、ストーリアンとザフースタンが各々で話をしていたところ、いつの間にか4か国での井戸端会議となり、どこか食事処で美味しいものでも食べながら言いながらその場を後にしていった。ラジール族長のマイハロイ、ストーリアン主のラムルからは「一緒にどうですか」「先程は世話になった。ところでわらわは甘未が食べたいのだが良いところはないだろうか」とそれぞれに声を掛けられたのだが。


「お誘い頂いたところ申し訳ございません。今回の会談について補佐の者達と確認したいことがございますので。お詫びとして、近くにドネス中央区きっての食事処があります。一角獣の尾ひれという名の店なのですが、わたくしからの紹介と伝えればすぐに通してくれるかと思いますよ」


 そう謝辞しつつ、一枚の紙を差し出す。アプリコット直筆の署名ということで予約を取れると聞き、ラムルは喜んだが、マイハロイはやや残念そうな労るような表情を浮かべながら去っていったのだった。


 執務室に戻ってから、補佐の二人を呼びだす。


「長よ。此度の会談苦労が多かったと存じます」


「お疲れ様。代表しかおしゃべりできないのは肩が凝るわね」


「キルウィー。仲が良いのは分かるが、今はドネス国の長だ。公私はしっかり分けろ」


「はいはい。オーランゲさんは堅物ですわね」


 槍を携えているオーランゲと手帳を片手に持つキルウィーが労いの言葉を掛ける。


「こちらこそありがとうございました。会談の準備を任せっきりにさせてしまったんですから。オーランゲさんも昔のように話してくださって構いませんよ。あとキルウィーはそのままでも大丈夫です」


 アプリコットは漸く普段使いの口調にもどせたことで安堵し、気が置けない補佐の二人に感謝する。当の二人は「ほらごらんなさい」「いやいや昔は昔、今は今である」と掛け合っている。


「これまでの歴史に沿って、魔王の選定方法に同意が得られたのことは一安心でした」


「とはいっても、これまで反対されたことってなかったのよね?」

アプリコットの発言に、キルウィーは疑問を浮かべたところ、やれやれといった感じでオーランゲが発言の意図を察して説明する。


「先程シロオニの主殿も質問しておったが、前回はイロオニの主とラジールの族長が似たようなことを話しておったのだ。キルウィーは今回初めての参加であるが、これまでの歴史を学んで、更には我々から教えをもらっているから納得できている。魔王の歴史が続くにつれて、仕組みの理解と歴史が国ごとで変わってきていることを長は憂いておられるのだよ」


「書物でしたためているのはドネスだけではありませんが、逆に半数の国は歴史に興味がありませんからね。今すぐではありませんが、判例を無視して勇者の脅威に対して魔大陸全土から憲兵するといった考えや、強者が魔王と名乗る可能性もでてきます。これは各国の総意を持って魔王を先ず選定することを決め、魔王の選定方法を定めることに意味があるのです」

キルウィーは両名の言葉を聞き、なるほどなと呟く。


「5代目の時ですが…ドネスの歴史では魔王の因子による魔王選定の前に、魔大陸の強者を勇者の討伐に向かわせたことがあったそうです。当時の勇者の強さが破格だったことが要因でもありますが、魔王の因子を持たない魔大陸の強者と勇者との闘いは、ただただ破壊的なものであり、ユーラス国のナマリア大海溝、ストーリアンとザフースタンのバナマ大海溝が形成されました。その国の土地部分が吹き飛び、海溝を生み出したのです。その上で勇者を倒せずに強者は破れ、魔王の因子で選任した者その身を引き換えに打倒しました」

アプリコットはそう続け、その時の歴史の二の前になることを防げたことに安心したのであった。


「歴史の学科ではそんなこと習ってなかったと思うけど」


 キルウィーはアプリコットの言葉に反応する。


「この内容やその他にも、長にしか知らされていない歴史があります。今言った内容の口外は禁物ですので」


「…さらりとそんなこと言われてもねえ」


「もとより当方は口を滑らせることはございません」


 そう今回その歴史から学び、前例と同様に歴史を歩んでいけそうなのだ。


「ラムル主の質問に対してマイルズ子爵が回答されていたけど、さっき話したことも要因としてあります。5代目の時の歴史と、各国の情勢から、代表招集の慣習が始まったようです。もちろんマイルズ子爵は先の秘匿の歴史を上手に隠しながら素晴らしい説明をされておりました」

かのデーモンの子爵は豊富な知識とそれを裏付ける生きた年月があり、到底自分には及ばない存在であるとアプリコットは思う。


「そう、長はああいった男性がタイプなのね」


「な、誠でしょうか!」


 思いがけない反応に目をぱちぱちさせ、すぐさま顔を紅潮させる。


「ち、ちがいます!そんなつもりで言ったんじゃ…」


「ムキになるところが怪しいわねえ」


「…もう大人ですものな。エイプルニールが…前魔王様が生きておられたら…」


 茶々を入れるキルウィーと思いふけるオーランゲを見据え、「話を聞きなさい!」とアプリコットの声が響き渡る…。


初投稿となります。

誤字、脱字、慣用句の間違った使い方、矛盾点などのご指摘やご意見、ご感想を頂けましたら幸いでございます。

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