第1章-14
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-ドネス国居酒屋-
居酒屋-火酒の集い-は路地裏にひっそりと佇んでおり、所謂常連御用達の場所であった。そこには店主とエルフの長老、ドワーフの最長老の3人しかおらず、店主もまた店の一部のように物静かに酒の肴を準備しているため、ご長寿両名の憩いの場となっていた。
「エルフの。儂等も今回が最期かもしれぬのう」
「バルトネル殿。前回も同じことを言うておったんじゃが」
「いやいあ…もう500歳近い。今回の魔王選定が最期になるじゃろうて」
「わしとてエルフの中では年を重ね過ぎましたわい。…とはいえ、今代以降の魔王を見届けるためにも生きねばとも思うが、一方で次代以降の魔王が生まれぬことも望んでもおるもんじゃ…」
ブロッサムはお猪口に入った酒をくいっと飲む。寒冷地特有の度の強い酒を好む二人は、45度の酒-みぞれ雪-を飲みながら語らう。アーシールやジプターにも酒はあるのだが、ここまで度数の強い酒は取り扱っていない。本来、このお酒-みぞれ雪-は5倍程度の湯で割り、体を温めることがドネスでの慣習なのだが、どこにでも酒好きはいるもので、この二人はお猪口に注ぎストレートで飲む。
ブロッサムにつられバルトネルも酒を飲む。ちょうど店主から酒の肴が来たところで、二人は互いに酒を注ぎ合う。
「初代魔王のがおらんなってから330年くらいかのう。当時から生きとるもんも随分と減っちまったが。できれば儂らもどうにかしたいところじゃ。とはいえ奴の遺言でもあるし、実際にどうにもならんのが現実じゃわい」
つまみのイービルオクトネル-タコの魔物-とドネスフライフィッシュ-体長1m程度で海面を飛び跳ねるブリに似た魚-の唐揚げを食べながらバルトネルは話す。
「のうエルフの。話は変わるがお主のところでも魔王の因子の話は聞かんのか?」
「今回はまだ耳に入っておらんのじゃが、魔王の因子の発現が魔王の代によって違うからのう。そもそも見つかっとらんことも今まであったわけじゃし、わしもジプターに戻ったら確認はするがのう」
「そうか…」
バルトネルはもう一度お猪口を空にする。そこにブロッサムは追加の酒を注ぎながら「わしもバルトネル殿も、マイルズ殿もここまで約束を守ってきたんじゃ。バカラ殿は難しいところじゃが、今回も守れたらとわしは思っておる」と告げ、バルトネルは静かに頷く。夜は静かに更けていく。
初投稿となります。
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