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New Space Scrolls  作者: 乃木了一
第四章 急流
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4.水面下

時はやや遡って半月程前、惑星ラセンナの首長執務室ではまた評定家のアガ4人が集まっていた。

筆頭アガのルクモ・ヴェルズナーが切り出す。

「それで?プロトフェリジウムとかいう物質は見つかったのか?」

ラセンナで工業と技術を担当するウェイイ家のアガ、ラゾイオが頷く。

「ああ、だが思っていたよりずっと希少な鉱物だった。商業生産として意味のあるまとまった量が見つかったのはブランザヴィルだけだ」

ブランザヴィルは旧銀河共和国連合領内でも銀河外縁方面に位置する人口15億程の星系だ。ラセンナからは普通の民間船で行けば4、5日もあれば到着が可能な近隣星系といえる。ヴェルズナーはほう、と言ってにやりと笑った。

「なかなか、我々にとって好適な位置にあるじゃないか。それで?そこは鉱山か何か、既に開発されているのか?」

諜報を担当するタルクナ家のアガ、ラランが口を開く。

「すぐ近くに小さな銅鉱山がある。その一帯を買い占めてしまえば、表向きは銅鉱山の開発を装うことが可能だろう」

ヴェルズナーは満足そうに頷いた。

「よく調べてくれた。ではその銅鉱山会社を買収しよう。フィデナエよ、資金の準備を頼む」

「分かりました」財政を担当するフィデナエ家のアガ、タナクィル・フィデナエも頷く。

それから、と言ってヴェルズナーは体を起こし、他の3人を見回しながら思案をめぐらすように少し沈黙した。3人は何事かというようにヴェルズナーをみつめる。

「テラフォードから艦船の発注があった」

「艦船?どんなフネを?何隻だ?」

訝しそうに尋ねるウェイイに向かってヴェルズナーはにやりと笑う。

「2万トン級の重フリゲート、50隻だ。それにライセンス生産契約も求めている」

「2万トン?50隻?え、それじゃあ・・・」

思わず素っ頓狂な声を上げたウェイイにヴェルズナーはおかしそうに笑う。

「そう。完全にサン・リミノの和約違反だ」

「つまり、あのラムズフェルトとかいう新首相が公約として掲げていた和約の見直し、再軍備ははったりじゃなかったということだな?納期はいつだ?」

タルクナの鋭い目にヴェルズナーはそこだよ、というように頷く。

「8月半ばにはテラフォードから受領のためのグループが送られてくる。その後2週間程、ここラセンナで新造艦のテストと慣熟訓練をさせて欲しい、ということだ」

「つまりXデーは9月の初め、というわけだ」

タルクナのつぶやきに頷きながらヴェルズナーはウェイイの方を向く。

「あちらさんの希望は帝国の標準戦艦と同等の主砲を6門に、同じく戦艦並みのシールドを装備ということだ。それで50隻、期限までにできそうか?」

ウェイイは渋い顔をしながら首を傾げる。

「既存の設計図を流用すれば、造るのは簡単だ。納期も問題ない。しかし2万トンの艦体に戦艦並みの主砲とシールドを装備するとなると、機動用のスラスターやC&C用AIを装備するスペースは相当削らなきゃならんが、いいのか?ワープ・エンジンは削れないしな」

「ああ、そのへんは問題ないそうだ。まあ、そいつをどう運用するのか、こっちは知ったことじゃないしな」

「あんまり最新式の設計にしないでくれよ。我々の敵にならんとも限らんのだからな」

そう言ったタルクナはしかし、と言って腕を組む。

「オクシタンのプロトフェリジウム新型戦列艦といい、テラフォードの和約破りといい、ずいぶんときな臭くなってきたじゃないか」

「我々が儲ける機会も増えそうだ、というわけですわね」

フィデナエの言葉にアガ達は笑った。

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