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New Space Scrolls  作者: 乃木了一
第三章 時代はまわる
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8.任務と意義

慌ててウォラフソンも敬礼する。

「先程、警備艦隊の方々が入ってらっしゃったのをお見かけして、ご挨拶に伺いました。小官、マンフリート・フォン・バルツァー陸上警備隊中佐と申します」

「ヴィクター・ウォラフソン警備艦隊中佐です」

ウォラフソンの名を聞くと、相手は驚いたようだった。

「ウォラフソン中佐・・・あのネオ・ネプチューン事件の。ご活躍の噂は伺っております」

いやぁ、ただ振り回されただけですよ、といいながら相手の名前を思い出した。フォン・バルツァーか。帝国風の名前からいって脱帝者の家系だろうか。ウォラフソンは胸がまたチクリと痛むのを感じた。

「初めまして、バルツァー中佐。中佐はどうしてここに?」

ウォラフソンの問いにバルツァーは肩をすくめた。

「多分、貴官と同じですよ。今回のネオ・ネプチューン事件を受けて、陸上警備隊でも防衛強化のため何かをしなくちゃならん、と上が言い出しましてね」

はあ?怪訝な思いが顔に出てしまったらしい。ウォラフソンの顔をみてバルツァーは苦笑した。

「まあ、警備艦隊の防衛線が破られてしまえば、我々にできることなんて実際殆ど何もないんですがね。それでも何か目に見える対策を発表しないと世論から叩かれかねないと、まあお役人軍人が考えそうなことですよ」

なかなか辛辣なことを平気で言う人だ。ウォラフソンは苦笑しながら聞いた。

「具体的に何か考えてらっしゃるんですか?」

「そうですねぇ・・・」バルツァーは顎に手を添えながら首を捻る。

「まあ敵艦隊がはるか遠くから核ミサイルを何千発も撃ち込んでフリートランドを死の惑星にする、という選択肢をとった場合は我々にはどうしようもないので置いておくとして、」

それを防ぐのは我々宇宙艦隊の仕事だからな、ウォラフソンは暗澹たる気分になる。

「もし敵が別の選択肢、つまり降下部隊を送り込んでフリートランドを占領するという選択をした場合に備えて、惑星軌道上の敵艦隊に対して地上から対空射撃ができるミサイル・システム、そして敵降下地上部隊と戦える重装甲部隊と戦闘機の開発、ってところですかね。まあ、本当に予算を付けてくれるのか分かりませんが」

どれも銀河大戦終結後に予算が削減されて廃棄され、以後国内の治安維持を主任務としてきた陸上警備隊にはないものだ。


本当は帝国内に逆侵攻をかけるための装備を開発したいんですが、というバルツァーに、それじゃこっちの開発も大変になるんで勘弁してくださいよ、と笑いながら返し、今後もお互い密に情報交換することを約してウォラフソンは技術本部を出た。ホフマンとアキノも後に続く。



別室に戻ってドアを開けると、中にいた2人の人物が立ち上がった。一人はグエン・ティ・ホアン少尉である。もう一人は・・・背広を着た白髪交じりの小太りの男だ。

「?・・・!もしかして、バルベリーニ大佐ですか!?」

男は微笑んだ。

「もう大佐じゃない。予備役大佐だよ」バルベリーニはネオ・ネプチューン事件での指揮放棄を咎められ、テラフォード帰還後に予備役に編入されていた。だから背広を着ているのか。

「・・・その、バルベリーニ予備役大佐、どうしてこちらに・・・え!?」

「そう、この別室の室長に補された。秘密組織には現役の名簿に載らない人間の方が好都合だろうとね」

と、突然、バルベリーニは頭を下げた。

「本当に、申し訳なかった。・・・私の不甲斐なさで皆に大変な迷惑をかけてしまった」

いや、そんなと慌てて手をふるウォラフソンだったがバルベリーニは続ける。

「帰還後すぐ総務局長に呼び出されて予備役編入を言い渡され、荷物をまとめて久しぶりに自宅に帰ったんだがね」少し目が潤んだ。

「妻と娘が迎えてくれて『無事でよかった』って泣くんだよ。もう何年も口もきいてくれなかった妻と娘がね・・・。それでやっと分かったんだ。何も地位と名誉だけが人生じゃないってね。随分と時間がかかってしまったが」

急に目立つようになった白髪が、彼の心の移り変わりを示すようだ。

「それで、この別室立ち上げの話を聞いた時、是非、私に室長をやらせてくれ、と頼み込んだんだ」と、ウォラフソンの表情に気付いて手を振った。

「いや、軍人として恥ずかしながら、私には兵器や戦術のことはさっぱり分からない。そこはウォラフソン中佐、君に全面的に任せたい。ただ、新兵器の開発や警備艦隊の組織に手を付けるということになれば、多少は予算や法律に詳しい者も必要だろう。少なくともその方面に関しては、私にもまだ多少の知識とコネがある。是非、君たちの手伝いをさせてくれないか」

バルベリーニは随分と変わった。言葉の端々にそれが現れている。ウォラフソンは大きく頷いて頭を下げた。

「確かに、法律や予算に詳しい方に来ていただければ非常に助かります。我々はその方面はさっぱりなもので。是非、よろしくお願い致します、バルベリーニ大佐、いや室長」

それからウォラフソンは傍らのグエンに向き直った。

「君は・・・?グエン少尉?」

グエンは微笑んだ。

「当然、私も志願したんですよ。だって、絶対当たらないミサイルを撃ち続ける仕事よりは意義がありそうじゃないですか」

「確かに!」

アキノの爆笑に、みんなもつられて笑いだした。みるとヒューイまで笑っている。


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