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トラックに轢かれて異世界転移したら  作者: aiちゃんと僕


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4/5

【四】狂奔:消費される神隠し

 液晶画面が放つブルーライトが、深夜の編集部に男の卑屈な笑みを浮かび上がらせていた。


 週刊誌記者の榎本(えのもと)は、デスクの上の冷めきった缶コーヒーをすすりながら、SNSの検索窓に特定のキーワードを打ち込み、そのタイムラインを高速でスクロールしていた。


 ――『死体なき人身事故』。


 最初は、よくある地方の猟奇殺人か、あるいは杜撰な警察の捜査ミスだと思って嗅ぎ回っていた。裏を返せば、どこかのヤクザ者が死体をコンクリート詰めにでもして海に沈めたのだろうと、その程度の認識だった。


 だが、ネットの海の底を覗き込んでいた榎本は、ある夜、奇妙な熱が急速に発生していることに気づいた。


 発火点は、どこからか流出したあの交差点のドライブレコーダーの映像だった。

 トラックに撥ねられた刹那、少年の姿がデジタルノイズのようにブレて完全に消え去る、あの1秒間の動画。


 現代の、退屈しきったネット大衆が、その不気味な映像をただのミステリーとして見逃すはずがなかった。


『これマジのやつ? リアル異世界転生じゃん笑』

『トラックに撥ねられて死体消えるとか、完全にライトノベルのテンプレだろ』

『#異世界転移』『#トラック転生』


 おびただしい数のハッシュタグが、爆発的にトレンドを駆け上がっていく。

 ネットの住人たちにとって、一人の少年が消え、その母親が血の涙を流している現実など、どうでもよかった。彼らが求めているのは、今夜を消費するための”面白いコンテンツ”だけだ。


 翌日、榎本が件の交差点へ向かうと、そこはすでに異様な光景に包まれていた。

 小雨の降る中、学校帰りの高校生や、暇そうな大学生たちが、あの少年と同じように青いビニール傘を差し、スマホを片手に持って横断歩道の真ん中に立っているのだ。彼らは笑顔でピースサインを作り、次々とスマートフォンで自撮りを繰り返している。


「ここが例の聖地かー。俺もチート能力もらえるかな?」

「ちょっと、危ないから早く撮ってよ!」


 無邪気な笑い声が、雨の交差点に響き渡る。彼らにとって、そこは悲劇の現場ではなく、ただの映える”観光地”だった。


「クク、最高だな。やっぱり人間はこれくらい馬鹿で冷酷じゃないと面白くない」


 榎本は手にした一眼レフのシャッターを、何度も切った。

 楽しそうに自撮りをする若者たちの背景に、母親が電柱に貼り付けた『情報提供をお願いします』という色褪せた手書きのチラシが、皮肉なコントラストとなって写り込む。


 デスクに戻った榎本は、凄まじい速度でキーボードを叩き始めた。

 タイトルはすでに決めている。


『現代の神隠し? 遺体が消えた交差点の謎〜少年は本当に異世界へ行ったのか〜』


 記事の内容は、オカルト的な噂をこれでもかと煽り立て、現場で楽しむ若者たちのブームを「新しい現代現象」として好意的に紹介するものだ。もちろん、母親の「蓮は、まだ世界のどこかで生きているかもしれない……」という、絶望の果てに縋り付いた哀れな言葉も、面白おかしく引用してやった。


 記事がネットに公開されると、アクセス数のカウンターが狂ったように跳ね上がった。

「少年は異世界で聖騎士になっている」「母親も電波系だ」といった悪趣味なコメントが何万件も書き込まれていく。


 榎本は数字が増えていくのを見つめながら、煙草に火をつけた。

 一人の少年が消えた世界。その残された母親の、狂う寸前の微かな「希望」すらも、ネットの悪ふざけという巨大な怪物によって、土足で完膚なきまでに踏みにじられ、ただの便利な娯楽として消費されていく。その残酷な現実の歯車を、自分が回してやったのだという極上の快感が、榎本の胸を満たしていた。

※この作品はaiちゃんとの共同作品です。

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― 新着の感想 ―
週刊誌の記者が全てそうだとは 言いませんが 彼は真に悪党だなあという印象です ただかつて、そして今もこの手の ゴシップ的な雑誌が売れている背景には 自分を含めた悪趣味な物を好むという どうしようもな…
僕が書いている作品とは話に入り方から違っていて続きが気になります!!
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