表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
グルゥとリル、もりのはずれで  作者: うつチャリンカー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/30

袋のそこのひかり

全30話 五月五日まで毎日朝七時投稿

あさよりも、すこしあとの時間でした。


小屋のまえの石は、ひなたをうすくためていて、さわるとまだひんやりするところを少しだけのこしていました。

リルはその石のそばにしゃがんで、ひざのうえに小さな袋をのせていました。町へいくときにも使う、やわらかい布の袋です。きのうの帰りに入れたままだった丸い石を、ひとつずつ出して、ならべています。


石は三つありました。

どれも手のひらにおさまるくらいで、川べりの水に長くなでられたような、やさしいまるみをしていました。


ひとつ置いて、またひとつ置いて、

さいごのひとつをつまんだとき、リルの手がとまりました。


袋のそこに、光がありました。


布の重なりのあいだからではなく、ちゃんと、まるく小さくあいたところから、外のひかりがのぞいていたのです。

リルは袋を持ちあげて、空のほうへすこしだけ向けました。すると、その穴は、朝ののこりの明るさをひとつぶだけ通して、足もとに落としてきます。


「……あな」


ちいさな声は、風にさわられて、すぐやわらかくほどけました。


戸口のそばでは、グルゥが長い布をたたんでいました。

その声をきいて顔をあげ、リルの手もとを見ると、何も言わずにこちらへ来ます。足音はいつもどおり、木の影がうつるみたいに静かでした。


リルは袋をさしだしました。

グルゥは受け取って、親指の先で穴のまわりをそっとひろげます。糸がすこしだけゆるんで、そこだけ古い実の皮みたいに薄くなっていました。


小さな穴でした。

石ひとつなら、ころんと落ちてしまいそうなくらいの、大きさです。


グルゥは袋を日に透かして見て、それから小屋へもどりました。

リルは石をならべたまま、その背中を見ていました。

石のとなりには、穴を通ってきた光が、まだまるくのこっていました。


しばらくすると、グルゥは布きれを一枚持って出てきました。

やわらかな、くすんだ色の布でした。前に小さく切って残してあったものらしく、角がまるくなっています。

グルゥは袋をひざにのせ、穴のうらへその布をあてました。道具らしいものは使わず、袋の口を結んでいたひもをいったんほどき、細くして、布ごときゅっと留めていきます。


少しふくらんだ丸いあとが、袋のそこにできました。

つるりと平らではないけれど、指で押すとやわらかくて、そこだけ別のぬくもりがあるみたいでした。


リルは指先でそのふくらみをさわりました。

布の下に、ちゃんと穴がかくれているのがわかります。


「ここ、やわらかいね」


グルゥは、うなずきました。


それから袋をさかさにして、さっきの石をひとつ入れ、軽くゆすってみせます。

石は落ちませんでした。

もうひとつ入れても、だいじょうぶでした。

さいごのひとつも入ると、袋はすこしだけ形をふくらませ、さっきよりも落ち着いた顔になったようでした。


リルはそれを受け取って、両手で持ちました。

なおしたところは、外から見るとほんの少しだけふくらんでいて、よく知らない人なら、はじめからそういう袋だったと思うかもしれません。


風が通ると、戸口にかけた布が、ちいさくゆれました。

石の上の光も、もう形をかえていました。穴を見つけたときのまるいひとつぶはなくなって、かわりに、袋のふくらみのうえへ白くやさしい明るさがのっています。


リルはそのあたりを、しばらく見ていました。

やぶれたところがなくなると、さっきまでの小さな穴まで、なんだか袋のなかへしまわれたようでした。


グルゥは石をひとつ拾って、袋の口をととのえ、リルのそばへ戻します。

それだけして、また布のつづきをたたみにいきました。


リルは袋をひざにのせたまま、なおしたところを親指でなぞります。

指の下にある丸みは、つぎはぎというより、そこだけ雲がひときれ休んでいるみたいでした。


そのまま石にもたれて座っていると、袋のなかで石がこつりと触れあいました。

小さな音でした。

けれど、どこにも落ちていかない音で、リルはそれをもういちど聞くように、袋を胸のほうへ寄せました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ