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グルゥとリル、もりのはずれで  作者: うつチャリンカー


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14/30

ひざの上のまるみ

全30話 五月五日まで毎日朝七時投稿

昼すぎの小屋には、風の通る音だけが、やわらかく残っていました。

床の上の布には、昨日のつづきがそのまま置かれています。草を編んだ帯、細く裂いた葉、まだ使いどころの決まらない羽。それから、端を留めようとして、うまくいかずにほどいたひもも、くせのついたまま横たわっていました。


リルはその前にすわって、しばらく手を出しませんでした。

見ているのは、輪になりかけて輪にならなかったところです。草の太いところと細いところが、編むたびに少しずつずれて、端と端が出会う前に、どこかがふくらんでしまいます。葉を巻いたところはやわらかくなりますが、そのぶんだけ厚みが出て、きれいな丸みからは少し遠くなっていました。


リルは草の帯を持ち上げて、指の腹でそっと押しました。

かたいところと、やわらかいところがあります。昨日は同じように編んでいたけれど、よくさわってみると、それぞれの草が持っている細さもちがっていました。長いものをそのまま重ねるより、細いものを内がわへ、しっかりしたものを外がわへまわしたほうが、曲げたときに落ちつくのかもしれません。


そこで、ほどきすぎないくらいに編み目をゆるめて、草の位置を少しだけ入れかえました。

一本を外へ。もう一本を内へ。

指先で押さえながら、また編みます。右からまわして、左をくぐらせて、次はそっと返すように重ねていきました。昨日よりも、手つきは静かでした。急がず、まっすぐ整えようともせず、その草の曲がりに合わせて、ゆるい丸みを先につくってしまうような編みかたでした。


帯は、前よりやわらかく曲がりました。

ひざの上で輪に近づけてみると、端と端が、前ほど嫌がらずに向かい合います。けれど、そのままひもを引けば、またきつく寄りそうでした。


リルはひもを置いて、葉を手に取りました。

細く裂いた葉を、今度はぐるぐる巻くのではなく、端の近くにだけ斜めに通していきます。草の編み目をまたぎながら、一本の葉が橋のようにかかると、ばらけそうだったところが、ふっと落ちつきました。もう一本、向きを変えて重ねます。葉はしっとりしていて、草どうしのすきまにやさしくおさまりました。


その上から、ひもをひと巻きだけ。

きつく結ぶのではなく、ほどけないくらいに添えるように結びます。

端と端は、そこでようやくとまりました。無理に引かれた形ではなく、もともとそのあたりにいたものが、となりどうしに並んだだけのようにも見えます。


リルは輪になったものを持ち上げて、向きを変えてみました。

まだ少しだけ、片側が厚く見えます。そこへ羽を添えてみると、白いやわらかさがふちから浮いて、草の流れと合いません。リルは羽を抜き、別のところへあててみました。今度は葉を巻いた継ぎ目のそばです。そこは草の向きがかわるところで、編み目がわずかにかたく見えていました。


羽の軸を、葉のあいだへ浅く差しこみ、ひもをほんのひとすじ添えます。

すると、羽は飾りのように立たず、草の流れにまぎれるように収まりました。風が通ったあとに、そこだけやわらかな筋が残ったみたいでした。


リルはそのまま、しばらく手を止めました。

作っていたものが、いつのまにか、ばらばらの材料ではなくなっています。草は草のまま、葉は葉のまま、羽も軽いままなのに、それぞれが離れずに、ひとつの丸い形に寄り添っていました。


小屋のすみでは、グルゥが布をたたんでいました。

大きな手で端をそろえ、重ねて、また置きなおしています。ときどきリルのほうを見ましたが、そばへは来ません。床板のきしむ音も立てず、ただ同じ部屋にいて、その静けさを崩さないようでした。


リルは輪を両手で持ち、こんどは手のひらにのせました。

手をひろげたくらいの大きさが、そこにちょうどおさまります。草の編み目はさらさらしていて、葉の巻かれたところだけ少しなめらかでした。羽のついた場所は、さわるとそこだけ空気を含んでいるようです。きれいにそろいすぎてはいません。まるい形も、よく見るとどこかやさしくゆがんでいました。


それでも、もう途中には見えませんでした。

ほどくところも、つけ足すところも、今はないようでした。


リルは何も言わず、そのまま手のひらを見ていました。

布の上には、使わなかった葉の切れはしが数本と、短く残った草が置かれています。

できあがったこれだけが、ひざの上で静かにおさまっていました。


戸の外では、葉ずれの音がかすかに続いています。

グルゥはたたみ終えた布を脇へ寄せて、また動かなくなりました。

リルは手のひらの上の丸いものを、もう一度だけ指でなぞります。

それから、落とさないように、そっと両手で包みました。

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