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グルゥとリル、もりのはずれで  作者: うつチャリンカー


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13/30

夕方の編みかけ

全30話 五月五日まで毎日朝七時投稿

昼をすぎた森の小屋は、外の気配をそのまま薄く抱えていました。

戸のすきまから入る風は、乾きかけた草のにおいを運び、床の上の布きれをかすかにめくっていきます。


リルはいつもの床にすわって、ひざの前へ材料をひろげていました。

草は長いものと短いものに分けてあり、羽は向きをそろえ、葉は細く裂けそうなものだけを端へ寄せてあります。

布きれは、やわらかいものを二枚。

ひもはくるくると、小さく巻いて置いてありました。


前には、ただ並べて見ていただけのものが、今日は少しちがって見えます。

リルの手は、眺めるだけではなく、その先へ行こうとしていました。


まず、草を三本えらびます。

指先でそろえ、根もとをひもで軽く結び、それを細く編みはじめました。

草は思ったよりすべって、一本だけ外へ逃げてしまいます。

リルは追いかけるようにその先をつまみ、もういちど並べなおしました。


こんどは、ゆっくりでした。

右へ、左へ、また右へ。

編まれたところは細く、まだ頼りなく、持ち上げるとやわらかく折れてしまいそうです。

それでも、まっすぐだった草が少しずつまとまり、一本の細い帯のようになっていくのを、リルは手の中でたしかめていました。


帯が短くできると、それをそっと曲げてみます。

手を広げたくらいの大きさには、まだ足りません。

もう一本、もう一本と草を継ぎ足して、同じように編んでいくうち、ひざの上には青みのある輪郭が、ぼんやりと見えはじめました。


けれど、丸くしようとすると、端のところがきれいに沿いません。

片方を寄せれば、もう片方がひらいてしまいます。

草の太さがそろっていないせいか、編み目がところどころでふくらみ、やわらかな円にはならないようでした。


リルは、その曲がりを指でなぞりました。

ほどくときの音は、とても小さく、乾いた草がこすれあうだけです。

せっかく重なったものを戻すのは、急ぐほどのことでもなく、惜しむほどのことでもないように見えました。

編み目をひとつずつゆるめて、草をまたまっすぐにしていきます。


つぎは葉でした。

細く裂いた葉を、草の編み目へくぐらせてみます。

するりと通るものもあれば、途中でひっかかって、端がくるりと丸まるものもあります。

葉は草よりもしっとりしていて、指に吸いつくようでした。

巻いていくと、さっきより少しだけ面が広がり、輪にしたときの骨が見えにくくなります。


羽は、最後に添えてみました。

一本だけ、編み目のすきまへ差し入れると、そこだけ風が留まったみたいになります。

けれど羽は軽すぎて、草と葉のあいだで落ち着かず、向きを変えるたびにふわりとずれてしまいました。

リルは羽を抜き、布の上へ戻します。

まだここではない、とでもいうような手つきでした。


小屋のすみに、グルゥがいました。

壁にもたれて、古い布を折りなおしています。

ときどき火を見て、灰を静かに寄せ、また手もとへ戻るだけでした。

リルのほうへ寄ってはきません。

ただ、同じ部屋の空気の中に、その大きな気配が置かれていました。


リルは編みかけを持ち上げ、腕をひらいて大きさを見ます。

いまのままでも、小さすぎるわけではありません。

けれど手を広げた形に近づけようとすると、輪はまだ浅く、端と端がうまく出会いませんでした。

結べそうで、まだ結べない。

まとまりそうで、まだほどける。

そのあいまいなところに、今の形はありました。


ひもを使って留めてみると、今度はきつく寄りすぎて、草の編み目が片側へ寄ってしまいます。

ひもをゆるめると、せっかく近づいた丸みがまた遠のきます。

リルはしばらくそのまま持っていて、それから、ひざの上へ下ろしました。


作ろうとした跡は、たしかにそこに残っています。

まっすぐだった草は帯になり、葉はところどころで巻きつき、羽はまだ出番を待つように布の上にあります。

輪っかに近いものも、もう見えています。

けれど、名前をつけるにはまだ早いようでした。


リルはほどききらず、結びきらず、その途中の形をそっと横へ置きます。

指先には草のささやかな硬さと、葉のなめらかな感触が、まだ残っていました。


外では風が向きを変え、戸板がかすかに鳴りました。

グルゥはそちらを見て、戸の留めを直し、また元の場所へ戻ります。

リルは編みかけの丸みをもう一度だけ見て、それ以上は手を入れませんでした。


できあがらないものが、布の上で静かに休んでいます。

夕方はまだ浅く、小屋の中には火の気と草の匂いが、ゆるく混ざっていました。

今日はここまで、というように、リルの手はひざの上でおとなしく重なっていました。

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