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サチコとマリコの時事ネタ漫才  作者: 藍埜佑


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第215話「平和を望まない人間はおらんのに、なんで戦争はなくならへんのか ~安全保障のジレンマと、独裁者の"やることリスト"~」

マリコ:(世界地図を広げて登場)サチコ、ニュース見てたら、今も世界のあちこちで戦争やっとるやんか。なんでや。みんな平和が好きなはずやのに。


サチコ:ええとこに気づいたな。実はそこが今日の一番大事なポイントやねん。戦争がなくならへん一番の理由は、「人類が平和を望んでへんから」やないんや。


マリコ:どういうことや。みんな戦争なんて嫌いやろ。


サチコ:せや。でも国家や指導者は、戦争で得られる利益を過大に見積もって、逆に戦争を避けた場合の損失も過大に見積もる。しかも相手のことを信用でけへん。せやから「合理的な選択」として、武力を選んでしまうんや。


マリコ:「好きで戦争してる」んやなくて、「計算した結果、戦争が一番マシに見えてしまう」っちゅうことか。わかれへんな。


サチコ:しかもデータで見るとさらに深刻や。国が関わる武力紛争は2024年に61件に達して、記録が残る1946年以降で最多になった。そのうち11件は年間1000人以上が亡くなる規模の「戦争」にまで達してる。


マリコ:61件!しかも過去最多て、ほんなぎょうさん戦争しとる国があるんか。世界がどんどん物騒になってきてるやんか。


サチコ:ほな、なんで戦争が終わらへんのか、その構造を順番に説明していくで。まず一つ目は「安全保障のジレンマ」っちゅうやつや。


マリコ:ジレンマ?


サチコ:ある国が自国を守るために軍備を増やすと、隣の国からは「攻撃の準備をしてるんちゃうか」と見える。それで隣国も対抗して軍備を増やすと、最初の国はさらに脅威を感じる。この繰り返しや。


マリコ:「お互い守りたいだけやのに、相手には攻撃準備に見える」っちゅう、すれ違いのループやな。


サチコ:典型例がロシアとウクライナや。ロシアはウクライナが西側に近づくことを、自国への脅威と見なした。ウクライナはロシアの過去の侵略経験から、NATOやEUへの接近を自国の生存条件と見なしとんねん。


マリコ:どっちも「自分は防衛してるだけや」と思ってるっちゅうことやな。


サチコ:そうや。ここが一番大事なポイントで、両方とも自分を「攻撃者」やなくて「防衛者」やと思ってる可能性がある。しかも相手が譲歩したら、逆に「次の攻撃を招くんちゃうか」と警戒しよるから、戦争を止めるのがますます難しくなんねん。


マリコ:「譲れば安心」やなくて「譲ったら余計狙われる」と思ってしまうんか。それは厄介やな。


サチコ:二つ目の理由は「交渉の信頼性の欠如」や。仮に和平案に合意しても、それを相手が本当に守るっちゅう保証がない限り、合意は成立せえへん。


マリコ:口約束だけやと不安やもんな。


サチコ:たとえば、ある国が武装解除した直後に相手が攻撃してくる可能性があるなら、武装解除する理由がない。逆に軍を撤退させた後、相手が約束を破って領土を奪う可能性があるなら、撤退も危険や。


マリコ:なるほどなるほど。「先に手を離した方が負ける」っちゅう、チキンレースみたいな状態やな。


サチコ:内戦後の和平が再び崩れやすいのも同じ理由や。世界銀行の研究では、内戦を経験した国では貧困、政治的な排除、国の統治能力の弱さ、反乱を資金化する資源なんかが残って、紛争が再発しやすいと指摘されてる。


マリコ:一回終わったように見えても、火種が残ってたら、また燃え上がるっちゅうことやな。救われんな。


サチコ:三つ目は「戦争の目的が生存問題になる」っちゅうことや。領土や政策の争いなら、まだ妥協の余地がある。でも戦争が民族や宗教、国家の存続、政権の正統性と結びつくと、妥協そのものが「裏切り」や「降伏」と見なされてまうねん。


マリコ:「この戦いに負けたら国がなくなる」とか「敵は自分たちを絶滅させようとしてる」とか言われだしたら、もう妥協できひんもんな。


サチコ:その通りや。この段階に入ると、戦争のコストがどれだけ増えても、撤退の政治的コストがそれ以上に大きくなってまう。


マリコ:ほんで四つ目は?


サチコ:四つ目は「戦争を続けることで得をする勢力がいる」っちゅうことや。社会全体にとっては破滅的でも、特定の政治勢力には利益をもたらしとんねん。


マリコ:いったい戦争で誰が得するんや。


サチコ:政権は外敵を利用して反対派を「裏切り者」と攻撃できる。軍や治安機関は予算と権限を拡大できる。武装勢力は資源や密輸、徴税、外国からの援助で利益を得られる。周辺国は代理勢力を使って直接戦わずに敵を消耗させられる。


マリコ:戦争そのものが、いろんな勢力にとっての「ビジネスモデル」になってしまってるっちゅうことやな。


サチコ:実際、世界の軍事支出は2024年に2兆7180億ドルまで増加した。前年比で9.4パーセント増、少なくとも冷戦終結後で最大の伸びや。


マリコ:2兆7180億ドル!桁がでかすぎて実感湧かへんけど、とにかくとんでもない金額やっちゅうのは分かるわ。


サチコ:軍需産業が単独で戦争を起こすっちゅう単純な話やないけど、戦争が長引くほど利益を得る勢力が存在する以上、和平への政治的な抵抗が生まれてしまうんや。


マリコ:なるほどな~。今ここまでで4つの理由が出たけど、個別の紛争についても教えてくれへんか。


サチコ:ええで。たとえばロシア・ウクライナは、単なる国境紛争やない。ロシアにとってはウクライナを自国の勢力圏に留められるか、プーチン体制の威信を保てるかっちゅう問題や。ウクライナにとっては領土だけやなくて、国家そのものの存続と、将来また侵攻されへんための安全保証が問題になっとんねん。


マリコ:「停戦すればええ」だけでは足りひんっちゅうことやな。


サチコ:せや。停戦後にロシアが再攻撃せえへん保証、ウクライナが安全を確保する手段、占領地域の扱い、制裁の解除、戦争犯罪の責任、これを全部同時に処理せなあかん。どれか一つでも先送りしたら、停戦が次の戦争までの「休憩時間」になってしまう可能性があるんや。


マリコ:ほなら米国とイランはどないなっとんの?


サチコ:2026年の米国・イラン間の話は、全面的な打撃の応酬と一時的な停止、交渉の再開と停滞が繰り返されとって、恒久的な和平が成立した状態やない。核計画、代理勢力、制裁、ホルムズ海峡の安全っちゅう争点が未解決のまま残ってる。


マリコ:これも「安全保障のジレンマ」が絡んでるんか。


サチコ:まさにそうや。米国とイスラエルは、イランが核兵器を獲得したら地域の均衡が崩れると考えてる。一方イランは、核開発を放棄したら米国の圧力に屈して、将来さらに攻撃されると考えてる。米国が核開発を止めるために軍事行動を取れば取るほど、イランは攻撃を受けへんために核能力が必要やと考えるっちゅう、危険な悪循環や。


マリコ:「止めさせようとする行動が、逆に相手を核武装に走らせる」っちゅう、皮肉な話やな。ほなら次はイスラエルとパレスチナやろ。


サチコ:ここは領土、占領、入植、難民、エルサレム、安全保障、ガザの統治、パレスチナ国家の承認、これが全部重なってる。しかも双方の指導者に「妥協したら自分が損をする」構造がある。


マリコ:どういうことや。誰が何を損するんや。意味がわかれへん。


サチコ:イスラエル政府はハマスが存続する限り安全が確保でけへんと主張しやすい。ハマスは武装抵抗を続けることで存在感を維持できる。パレスチナ自治政府は統治能力と正統性が弱い。イスラエル国内では戦争を終えることが、政権の責任追及につながりかねへん。


マリコ:みんなそれぞれの理由で、「戦争を終わらせたくない」構造になってしまってるっちゅうことか。


サチコ:しかも大規模な民間人被害が、次の世代の復讐心と過激化を生んでしまう。誰が停戦を監視して、誰がガザを統治して、違反した時に誰が制裁するのかも曖昧なままや。


マリコ:はー、深刻やなー。ほな最後にアフリカの内戦やな。


サチコ:アフリカの内戦は、一つの原因では説明できひん。スーダン、サヘル、ソマリア、コンゴ民主共和国、エチオピア、それぞれ歴史も国の制度も民族関係も資源も外国の介入も違う。


マリコ:でも共通する連鎖みたいなもんはあるんやろ。


サチコ:それはあるで。国家が治安や司法、行政サービスを全国に提供できへん。政府が特定の民族や地域に利益を集中させる。若者の失業や貧困、土地紛争、気候変動による資源の圧迫が積み重なる。武装勢力がその不満を動員して、外国や密輸で資金を得る。政府は民兵を使って対抗して、民間人の被害と報復が拡大する。武装勢力が分裂して、和平交渉の相手がどんどん増えていく。


マリコ:資源が豊富な国ほど、逆に紛争が長引いてしまうイメージもあるな。


サチコ:資源は単純に「戦争の原因」やなくて、国家が弱い場合に、反乱や腐敗、分離主義を資金化する装置になってしまうんや。世界銀行も、低所得、経済停滞、一次産品輸出への依存、所得格差が組み合わさると、内戦のリスクが高まると説明しとる。


マリコ:戦争の話は分かった。ほんで、これと民主主義が関係してくるんやろ? どう関係すんねん?


サチコ:ここがもう一つの重要な柱や。まず、単純に「世界の独裁者の数が増えた」っちゅうより、選挙は残したまま、自由と法の支配を削っていく国が増えてる、っちゅう表現が正確や。


マリコ:選挙はあるのに、中身が空っぽになっていってるっちゅうことか。


サチコ:V-Demっちゅう研究機関の2026年報告によれば、2025年には44カ国が権威主義化の過程にあって、世界人口の41パーセントがそういう国に住んどる。一方で民主化の過程にある国は18カ国で、人口比では約5パーセントにとどまる。


マリコ:41パーセント対5パーセント!めちゃくちゃ差があるやんか。


サチコ:フリーダム・ハウスっちゅう別の団体も、世界の自由が2025年まで20年連続で低下して、54カ国で政治的権利や市民的自由が悪化したと報告してる。


マリコ:20年連続!ずっと下がり続けてるっちゅうことやんか。


サチコ:民主主義を弱める要因は主に5つある。一つ目は経済的な不安と格差。実質賃金が停滞して、住宅費や食料費が上がって、地域格差や若者の雇用不安が広がると、民主主義は「話し合う制度」やなくて「何も解決できない制度」やと見られてしまう。


マリコ:「議論ばっかりで結局何も進まへんやんか」っちゅう不満が溜まっていくわけやな。


サチコ:二つ目は分極化と「敵の非人間化」や。政治的な対立が政策論争やなくて、道徳的、民族的、文化的な敵対に変わると、選挙は政権交代の制度やなくて「国家を奪い合う戦争」になってしまう。


マリコ:負けた方が「結果を受け入れる」んやなくて「不正があった」って言い出すやつやな。トランプのおっさんがよう言うやつや。


サチコ:三つ目は情報環境の変化。SNSや動画プラットフォームは政治参加を容易にした一方で、怒りや恐怖、陰謀論、偽情報を拡散しやすくもした。国民が同じ現実を共有できひんくなって、選挙結果すら「自分たちの陣営に有利な情報」だけで解釈されるようになる。


マリコ:「事実」そのものが陣営によって違って見えるようになったら、そら妥協なんてできひんわな。


サチコ:四つ目は制度の内部からの権力集中。現代の権威主義化は、軍事クーデターみたいな露骨な政権転覆だけで起こるとは限らへん。選挙で勝った指導者が、合法的に見える手段で制度をじわじわと空洞化させていくんや。


マリコ:具体的にはどうやるんや。


サチコ:選挙制度を与党に有利に変更する。裁判官や選挙管理機関を支配する。公共放送や独立メディアを抑える。NGOや大学を「外国勢力」として規制する。非常事態を長期化する。政権批判を治安問題として処罰する。


マリコ:一つ一つは「合法的」に見えるけど、積み重なったら民主主義の中身がスカスカになってしまうっちゅうことやな。…あれ?これ全部トランプのおっさんが今やってることちゃう?


サチコ:五つ目は国際的な民主主義支援の弱体化。民主主義国が自国の利益を優先して、権威主義国との取引を続けて、他国の人権侵害を選択的に批判すると、民主主義の規範そのものが説得力を失ってしまう。


マリコ:「あの国の人権問題は批判するけど、こっちの国は見て見ぬふりする」みたいなダブルスタンダードがバレたら、そら誰も信用せえへんわな。


サチコ:ほんで、ここからが今日一番大事な話なんやけど、戦争と権威主義化は、実は別々の現象やなくて、お互いに強め合う関係にあるんや。


マリコ:どういうことや。


サチコ:まず戦争が権威主義を強める。外敵との戦争が始まると、政府は安全保障を理由に自由を制限できる。報道規制、反戦運動の弾圧、非常事態権限の拡大、軍や情報機関の監視強化、少数派への差別、批判者を「敵の協力者」とみなす政治。


マリコ:戦争っちゅう理由があれば、普段はできへんことができるようになってしまうんやな。


サチコ:民主主義国でも、戦時にはこういう傾向が現れる。せやから「民主主義国は戦争をしない」っちゅう命題は正しくない。民主主義国も戦争はするけど、権力の交代や議会審議、司法審査、報道、選挙によって、指導者の誤りを修正できる可能性が比較的高いっちゅうことなんや。


マリコ:逆に、権威主義が戦争を長期化させる方向もあるんやろ。


サチコ:それがもう一つの重要なポイントや。独裁体制では、指導者が敗北を認めることが、そのまま政権崩壊に直結しやすい。せやから戦争が失敗しても撤退でけへん。


マリコ:なんでそんなことになるんや。


サチコ:独裁体制に特徴がある。指導者に悪い情報が届きにくいねん。政権内の側近が成功を過大報告する。反対派が戦争責任を追及できひん。国家の威信と指導者の威信が同一視される。そして退陣後の安全が保証されへん。


マリコ:「負けを認めたら殺されるかもしれへん」って思ったら、そら負けを認めるより戦争を続ける方を選んでしまうわな。


サチコ:まさにそういうことや。指導者は「戦争に負けるより、戦争を続ける方が自分にとって安全」と判断してしまう。これが戦争の長期化を生む重要なメカニズムなんや。


マリコ:ほんで、この負のループを止めるには、どうしたらええんや。


サチコ:世界政府を一気に作るなんて現実的やないからな。でも戦争を減らすための制度は強化できる。まず停戦だけやなくて、履行保証を設けること。監視団や第三国の保証、安全地帯、違反時の自動制裁を組み合わせるんや。


マリコ:「約束破ったら自動的に罰が発動する」仕組みがあれば、破りにくくなるもんな。


サチコ:それから侵略の利益を減らすこと。制裁、武器供給の管理、資産凍結、責任追及を一貫して行う。それと和平交渉を早期に始めること。軍事的勝利を待てば待つほど、犠牲者、憎悪、既得権益が増えてしまう。


マリコ:早く手を打った方が傷が浅く済むっちゅうことやな。


サチコ:あと国内の政治的包摂を進めること。民族や地域、宗派、若者が政治制度から排除されへんようにする。資源収入を透明化すること。石油や鉱物、武器密輸、違法徴税が武装勢力の資金源にならへんようにすることや。


マリコ:民主主義自体も、ちゃんと支えなあかんっちゅうことやろ。


サチコ:そうや。民主主義を手続きだけやなくて、生活の制度にすること。格差、腐敗、住宅、雇用、教育、医療への不満を放置せえへんこと。それと情報空間を防衛すること。独立メディア、報道倫理、プラットフォームの透明性、メディアリテラシーを強化すること。


マリコ:ほんで最後は?


サチコ:最後は、民主主義国自身が原則を一貫して守ること。友好国の人権侵害や国際法違反も批判できひんかったら、民主主義の国際的な正統性は失われてしまう。


マリコ:つまり、身内には甘くして、敵国にだけ厳しくする、っちゅうのはあかんっちゅうことやな。


サチコ:結局のところ、戦争をなくすには「人間の攻撃性」を消す必要はないんや。必要なのは、戦争を選んだ指導者が得る利益を小さくして、和平を選んだ勢力が安全と政治的利益を得られる制度を作ることや。


マリコ:民主主義を守ることも、道徳の問題っちゅうより、戦争を防ぐための安全保障政策そのものなんやな。


サチコ:まさにそういうことや。権力者が失敗を認めて、反対派と交渉して、軍事行動を制限して、政権を平和的に交代できる制度を維持すること。それが戦争を始めへんため、そして始まった戦争を終わらせるための、一番の土台になるんや。


マリコ:今日の話、めちゃくちゃ重たいけど、めちゃくちゃ大事な話やったな。


サチコ:ほんまや。世界のニュースを見る時、ちょっとでもこの構造を思い出してもらえたら嬉しいな。


マリコ:私も明日から、家族会議で「安全保障のジレンマ」使こてみるわ。「お母さんがお小遣い減らそうとしてるのは、防衛的措置に見えて、実は攻撃やんか!」って。


サチコ:それただの屁理屈やんけ!国際政治学を家庭内の言い訳に使うな!


マリコ:せやかて、理論武装って大事やろ!


サチコ:お前の場合、武装する前にまずお手伝いとかちゃんとせえよ!もうええわ!


マリコ・サチコ:どうもありがとうございましたー!


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