第210話「異世界に転生しすぎた出版社 ~KADOKAWAの営業利益半減と、なろう系バブルの後始末~」
マリコ:(ラノベを積み上げて登場)サチコ!うちの本棚見てくれ、この異世界転生モノの多さ!
サチコ:山積みやんけ。何冊あるんや、これ。
マリコ:数えてへんけど、全部似たような話やねん。「気づいたら異世界にいて、なぜかチート能力持ってて、なぜかハーレムになる」っちゅうやつや。
サチコ:それ、まさに今日の話の核心やねん。その「似たような話ばっかり」が、ある出版社の業績を直撃したんや。
マリコ:どこの出版社や。
サチコ:KADOKAWAや。
マリコ:KADOKAWA!ラノベもアニメもゲームも全部やってる、あの巨大企業か。
サチコ:そう。2026年3月期の決算がえらいことになってん。売上高は2829億円で、前の年より1.8パーセント増えとる。
マリコ:売上は増えてるんか。ほな景気ええ話やないか。
サチコ:ところが営業利益が81億円で、前の年から51.3パーセント減ってん。
マリコ:51パーセント減!半分以上消えてるやんけ!
サチコ:しかも最終利益は12億7800万円で、前の年から82.7パーセントの減少や。
マリコ:82.7パーセント!ほとんど残ってへんやん!「売上は増えたのに利益はほぼ消えた」っちゅう、なかなか不気味な決算やな。
サチコ:営業利益率も2.9パーセントまで落ちてもうた。
マリコ:2.9パーセント言うたら、100円の本売って2円90銭しか儲からへんっちゅうことやんか。うちの田舎の駄菓子屋の方がまだ利益率ええで。
サチコ:そしてこの決算の主犯格が、出版・IP創出事業の不振や。KADOKAWA本体の国内出版事業が、前の年の32億円の黒字から、10億円の営業赤字に転落した。
マリコ:黒字から赤字!しかもマイナス幅がでかいやんか。どないなっとねん!
サチコ:会社自身が決算資料の中で、原因をはっきり書いとる。「既存の勝ちパターンへの過度な依存」やと。
マリコ:「勝ちパターンへの依存」!つまり「なろう・異世界系にハマりすぎた」っちゅうことやな。
サチコ:その通りや。特定ジャンルに作品作りが偏って、市場が飽和してしもた。似たような作品が増えすぎて、企画が小粒化してしもた。
マリコ:「似たような転生モノばっかり出したら、読者も飽きる」っちゅうことやんな。それはうちの本棚見ても納得やわ。
サチコ:しかも新刊の点数自体は増えたのに、1タイトルあたりの売上や部数は減ってもうとんねん。
マリコ:「数を出せば当たる」と思って量産したら、逆に1個あたりの価値が薄まった、っちゅうことか。ラーメン屋が「大盛り無料」連発してスープ薄くなるようなもんやな。
サチコ:そのたとえはようわからんんけど、方向性は合うてるかな。しかも人件費増や製造物流コスト高も重なって、利益をさらに圧迫した。
マリコ:出版だけやなくて、他の事業はどうなんや。
サチコ:アニメ・実写映像事業も赤字転落や。前の年は『【推しの子】』が大ヒットしたけど、その反動減が直撃しとる。
マリコ:「前の年に売れすぎた反動」っちゅうことか。「花火を打ち上げすぎて、翌年は火薬が足りない」みたいな話やな。
サチコ:一方でゲーム事業を見ると、フロム・ソフトウェアの『ELDEN RING NIGHTREIGN』が好調やったけど、前年の『ELDEN RING』本編やDLCの爆発的な売上には及ばへんかった。ゲーム事業全体で見ると、売上は11.4パーセント減、利益は20.9パーセント減や。
マリコ:「好調やのに減益」っちゅうのは、前の年がバケモンやったっちゅうことやな。
サチコ:そこにもう一つ、忘れたらあかん爆弾がある。2024年に起きた大規模サイバー攻撃の後遺症や。
マリコ:サイバー攻撃!あったな、そういうニュース。
サチコ:あの攻撃で、出版の受注・製造・物流システムが停止した。ニコニコも長期間止まった。2025年3月期だけで特別損失24億円、本業への影響は売上高で約77億円減、営業利益で約47億円減っちゅう試算がある。
マリコ:「攻撃された年」やなくて、「攻撃の後遺症」がずっと残っとるっちゅうことやな。深刻やな。
サチコ:新刊の遅延、ユーザー離脱、信頼低下。単年の損失で終わらんと、じわじわ効いてくる後遺症や。
マリコ:これ、前にロシア経済の話をした時に出てきた「消耗型の安定」に似てへんか。「即死やないけど、じわじわ削られてる」っちゅう。
サチコ:ええ着眼点や。規模はまったく違うけど構造は似とる。そしてここに株主の圧力まで加わってきとんねん。
マリコ:株主の圧力!誰や。
サチコ:アクティビストのオアシス・マネジメント。KADOKAWA株を13.76パーセントほど保有してて、6月24日の株主総会で、夏野剛社長の取締役再任に反対する提案と、解任提案をぶつけてきた。
マリコ:解任提案!社長を降ろせっちゅうことか。
サチコ:結果として夏野社長の再任は可決されたけど、賛成率はわずか59.68パーセント。前の年は90パーセント超やったのに、大幅に低下した。
マリコ:90パーセントから59.68パーセント!これはもう「信任」やなくて「かろうじて生き残った」っちゅうレベルやな。
サチコ:オアシスの言い分はこうや。夏野社長の就任後5年間で、EPS、つまり1株あたり利益は89パーセント減。ROE、自己資本利益率は8.2パーセントから0.5パーセントに低下。営業利益率も6.5パーセントから2.9パーセントに落ちた、と。
マリコ:全部の数字が右肩下がりやんか。夏野社長、ほんなんで株主総会でよう生き残ったな。
サチコ:しかもオアシスは他にも、フロム・ソフトウェアの自社パブリッシング未実現とか、モバイルゲームやニコニコの不振放置とか、動画工房買収後1年で27億円の減損とか、コスト規律の欠如も並べ立てとる。
マリコ:「あれもこれもできてへんやろ」っちゅう総攻撃やんか。会社にとってはたまらんな。
サチコ:そこでKADOKAWAは反撃に出た。まず抜本的な構造改革として、早期退職者の募集を決議した。
マリコ:早期退職!何人応募したんや。
サチコ:45歳以上、勤続5年以上の社員が対象で、上限を設けずに募集した結果、154名が応募した。
マリコ:154名!けっこうな人数やな。
サチコ:これで年間約17億円の人件費削減効果を見込んどる。ただし割増退職金として約54億円を特別損失で計上する予定や。
マリコ:17億円浮かせるために54億円払う!?最初は赤字が増えるんかい!
サチコ:「短期の痛みを飲み込んで、長期の筋肉質化を狙う」っちゅう理屈や。でも45歳以上のベテラン編集者が抜けたら、IP創出の暗黙知も一緒に流出するんちゃうか、っちゅう懸念があるんや。
マリコ:「コスト削減したら、企画力まで削れてもうた」っちゅうオチにならんとええけどな。
サチコ:そしてもう一つの手として、2027年3月期から2032年3月期までの新しい6カ年の中期経営計画を発表した。
マリコ:6年計画!長いスパンやな。
サチコ:最初の2年、2027年3月期と2028年3月期を「構造改革期」と位置づけて、作品ポートフォリオの再編、刊行点数の適正化、コスト削減を最優先にする。
マリコ:「量から質へ」っちゅう方針転換やな。
サチコ:その後「利益成長期」「利益拡大期」を経て、最終年度の2032年3月期には売上高4000億円、営業利益380億円を目指す。営業利益率にすると約9.5パーセントや。
マリコ:今の2.9パーセントから9.5パーセントって、3倍以上やんか。壮大な計画やな。
サチコ:しかも直近の2027年3月期の会社予想は、売上高3003億円、営業利益101億円、経常利益120億円。7期連続の増収を見込んでる。
マリコ:増収は続くんか。
サチコ:しかも直近の4半期、2026年1月から3月の実績を見ると、出版・IPセグメントの営業利益が前年同期比プラス70.7パーセントの改善を見せてる。底を打った兆しがあるっちゅうことや。
マリコ:「どん底から少し這い上がってきた」っちゅうタイミングなんやな。
サチコ:そしてアニメ制作の面では、新しい拠点構想もある。2026年秋に池袋のサンシャインシティ内に、約1400坪の大型アニメ制作拠点「Studio One Base」を開設する予定や。
マリコ:1400坪!めっちゃ広いやん。
サチコ:「創る人をつくる。創る所をつくる」っちゅうコンセプトで、内製化を進めてクリエイター環境を整備する狙いや。
マリコ:外部の制作会社に頼りすぎず、自前で作れる体制にするっちゅうことやな。
サチコ:そして財務面の話をすると、実は「今すぐ潰れる」っちゅう状況やない。自己資本比率は62パーセントで、前の期より1.1ポイント上昇しとる。
マリコ:62パーセント!上場企業の平均が40パーセント前後やから、それよりだいぶ高いやんか。
サチコ:総資産は約3949億円、純資産は約2767億円。ネットキャッシュ状態も維持されとって、資金繰りが即座にショートするような状況やない。
マリコ:「体力はあるけど、稼ぐ力が急に落ちた」っちゅうのが正確な表現やな。
サチコ:しかもここで面白いのが、業績が大きく落ち込んだにもかかわらず、配当は下限の年間30円を維持しとる。
マリコ:赤字寸前まで利益が減っても、配当は下げへんのか。
サチコ:新しい中期経営計画では、配当性向30パーセント以上を目標にして、1株あたり年間配当の下限を30円と明言してる。さらに利益が回復すれば、自己株式取得や増配も機動的に検討する方針や。
マリコ:「今は我慢の年やけど、株主への約束は守る」っちゅう姿勢やな。株主総会でオアシスにあれだけ攻められた後やから、余計にそこは崩されへんのやろな。
サチコ:中長期の目標としてはROE12パーセント以上も掲げとる。今の0.5パーセントから12パーセントって、ものすごい距離があるけどな。
マリコ:0.5から12!うちの体重を12キロ増やせって言われてるくらいの無理難題に聞こえるで。
サチコ:たとえがよう分からんけど、確かに簡単な道のりやない。
マリコ:ほな結局、KADOKAWAはこれから潰れるんか、それとも復活するんか。
サチコ:専門家の見方をまとめると「即倒産のリスクは低いが、収益力の低下を放置すれば成長停滞の悪循環に陥る」っちゅうことになる。
マリコ:「死にはせえへんけど、このままやとジリ貧」っちゅうことやな。
サチコ:せや。しかも改革の鍵は「量から質・多様性へのシフト」と「コストコントロールの両立」やと言われてる。
マリコ:異世界転生モノを量産するだけの経営から脱却できるかどうかが、生き残りの分かれ道っちゅうことやな。
サチコ:まさにそういうことや。「なろう系に頼りすぎた反省」を活かして、多様なジャンルからまたヒット作を生み出せるかどうか。
マリコ:私も反省せなあかんな。この積んどるラノベ、全部似たような表紙やもん。
サチコ:それはKADOKAWAの経営問題とちゃうくて、単なるお前の趣味の偏りやろ。
マリコ:せやかて、うちもいつか「勝ちパターンへの過度な依存」から脱却して、違うジャンルの本読んでみるわ!
サチコ:ええ心がけや。ほな今日はこのへんで!
マリコ・サチコ:どうもありがとうございましたー!




