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サチコとマリコの時事ネタ漫才  作者: 藍埜佑


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第209話「金の卵を産むガチョウが12パーセント急落した日 ~孫正義のAI全賭けと、ローズっちゅう新しい会社の話~」

マリコ:(株価のグラフを印刷した紙を持って、青ざめた顔で登場)


サチコ:なんやその顔。何かあったんか。


マリコ:聞いてくれ。ある会社の株が、1日で12パーセント下がったんや。


サチコ:12パーセント!それは大事件やな。どこの会社や。


マリコ:ソフトバンクグループ。


サチコ:ソフトバンクグループ!それは確かに大事件や。


マリコ:1日で時価総額が5.6兆円消えたらしいねん。


サチコ:5.6兆円!一瞬で?


マリコ:一瞬でや。なんでそんなことになったんや。


サチコ:ほな、それを今日説明するで。まず大前提として、孫正義さんが今やってることを一言で言うとな。


マリコ:何や。


サチコ:「AIに全部賭けとる」。


マリコ:「全部賭けとる」っちゅうのは具体的にどれくらいなんや。


サチコ:自分、オープンAIっちゅう会社、知っとるか。


マリコ:知ってるで。チャットGPTを作った会社やんな。


サチコ:そこにソフトバンクが累計で650億ドル、日本円で約10兆円近く投資してんねん。


マリコ:10兆円!


サチコ:今年の10月までに、さらに追加して投資する予定で、最終的な累計投資額はもっと膨らむ見込みや。


マリコ:「もっと膨らむ」!?まだ増えるんか!


サチコ:すでにオープンAIの株を13パーセント保有してて、これは外部の出資者の中ではマイクロソフトの27パーセントに次ぐ、2番目に大きい株主や。


マリコ:マイクロソフトに次ぐ大株主やんか。これは確かに「一点賭け」やな。


サチコ:ほなここで、今日株価が急落した直接の原因の話をしよか。


マリコ:何があったんや。


サチコ:オープンAIが目指してた株式の上場、IPOっちゅうやつや、これが延期されるかもしれへん、っちゅうニュースが出た。


マリコ:上場が延期される!?


サチコ:もともと2026年の後半に上場する予定やったのが、2027年に延びる可能性が出てきた。


マリコ:1年延びるかもしれない、っちゅうことやな。


サチコ:実際にオープンAIはアメリカの証券当局に6月8日、秘密のS-1っちゅう上場申請書類を出しとる。これ自体は事実で、評価額は8500億ドル超っちゅう数字も出てる。


マリコ:8500億ドル!すでに巨大な評価額やんか。なんでそれで延期するんや。


サチコ:オープンAIの経営陣に、上場のアドバイザーから二つの選択肢が提示されとんねん。


マリコ:どんな選択肢や。


サチコ:一つ目は「2027年まで待って、1兆ドルの評価額を目指す」。二つ目は「評価額を下げて、早めに上場する」。


マリコ:1兆ドルか、それより低い評価額で早く上場するか、っちゅうことやな。


サチコ:オープンAIのCEO、サム・アルトマンさんはこう言わはった。

「1兆ドルより低い評価額は受け入れられない」。


マリコ:「1兆ドル以下は受け入れない」!絶対に1兆ドルにこだわるっちゅうことか!


サチコ:そして上場アドバイザーが警告してることもある。「一般投資家がオープンAIの株にそれほど熱狂しない可能性が高い」と。


マリコ:これは厳しい警告やな。「1兆ドルにこだわってるけど、市場はそこまで興奮してへんかもしれない」っちゅうことか。


サチコ:しかも財務状況の話をすると、もっと厳しい。2026年の第1四半期だけで、純損失が約85億ドル。


マリコ:85億ドルの赤字!1四半期だけで!


サチコ:2025年の年間で見ると、収入は130億ドルあったけど、純損失は385億ドル。


マリコ:収入130億ドルで、損失385億ドル!「売れば売れるほど赤字が増える」っちゅう、なかなか厳しい状況やんか。


サチコ:これは「巨大な計算インフラへの投資が先行してる」っちゅう状況で、データセンターに莫大な金をつぎ込んでる最中やからこその赤字や。


マリコ:「将来のための先行投資」っちゅうことやな。それは分かるけど、これだけ赤字が大きいと、上場の時に投資家が心配するのも分かるな。


サチコ:そしてもう一つ重要な要素が、最近の他の会社のIPOの反応や。


マリコ:他の会社って?


サチコ:スペースXが6月に新規上場した。最初は135ドルで始まって、一時225ドルまで上がったけど、その後157ドルまで下がった。


マリコ:すごい乱高下!


サチコ:これが「巨大評価額のテック企業上場」に対する一般投資家の熱狂が、思ったより冷めてる、っちゅう証拠になってしもたんや。


マリコ:「前例が示す現実」っちゅうやつやな。「あの会社もこうなった、だからこの会社も心配だ」っちゅう連想ゲームが起きてるわけか。


サチコ:そして今回延期の話が出る前、ソフトバンクはオープンAIの株式を担保にして、60億ドルの融資、いわゆるマージンローンを取ろうとしてた。


マリコ:自分の持ってる株を担保にお金を借りる、っちゅうことやな。


サチコ:それに交渉が停滞してる、っちゅう話も出てる。


マリコ:「上場が延期される、おまけに借金の交渉も止まってる」っちゅうダブルパンチやな!


サチコ:それで6月26日、株価が一時14パーセント下がって、最終的に12.53パーセントの下落で終わった。


マリコ:それがさっきの5.6兆円の話やな。


サチコ:そしてこの下落が、ソフトバンクだけじゃなくて日本市場全体に影響した。日経平均を引き下げる大きな要因の一つになった。


マリコ:ソフトバンク一社の株が、日経平均全体を動かしたんか。


サチコ:半導体関連の他の会社、アドバンテストや東京エレクトロンも一緒に下がった。9.89パーセントと3.42パーセント。


マリコ:「AI関連で繋がってる会社が、まとめて下がる」っちゅうことやな。


サチコ:そして面白いのは、この急落のたった2日前に、ソフトバンクの株主総会があったっちゅうことや。


マリコ:株主総会で何があったんや。


サチコ:孫正義さんが「AIバブルっちゅう話は侮辱だ」と言わはった。


マリコ:「侮辱」!?かなり強い言葉やな。


サチコ:「AIはまだ初期段階だ」「市場はうちの資産価値をまだ正しく評価してへん」とも言わはった。


マリコ:「市場が間違ってる、AIは過小評価されてる」と力強く言うた、2日後に株価が12パーセント下がったわけか。


サチコ:「金の卵を産むガチョウだ」っちゅう表現も使わはった。


マリコ:「金の卵を産むガチョウ」!それは自分の会社のことを言うてるんやな。


サチコ:「会社の市場価値と、保有資産の本当の価値の間に大きな割引ディスカウントがある」と。「実際の価値はもっと高い」っちゅうことを言いたかったんやろうな。


マリコ:そう言うた2日後に12パーセント下がったら、なんか皮肉な話になってしまうな。


サチコ:「ASI、人工超知能」っちゅう構想についても言及した。「人間より1万倍賢いAIの誕生を実現したい」っちゅう。


マリコ:1万倍!それはとんでもないスケールやな。


サチコ:これが孫正義さんの戦略の本質で、単なる流行に乗ってるわけやなくて、「知能そのものを作る、世界一の供給者になる」っちゅう思想があんねん。


マリコ:それでオープンAIだけやなくて、ロボティクスとかデータセンターとか電力にも投資してるわけやな。


サチコ:そう。さらに「ローズ」っちゅう新しい会社の話もある。


マリコ:ローズ?


サチコ:ソフトバンクがアメリカで新しく作る、AIとロボティクスの会社や。アメリカのフィナンシャル・タイムズの報道によると、断片的に持ってたAIハードウェア、電力供給、自動化の投資を一つにまとめる構想や。


マリコ:「散らばってた投資をパッケージ化する」っちゅうことか。


サチコ:2026年の後半に上場する可能性があって、目標の評価額が1000億ドル。


マリコ:1000億ドル!それも巨大やな。


サチコ:もしローズが上場に成功したら、孫さんにとってアリババの上場に続く、人生で2番目くらいの大きな上場成功例になる、っちゅう話があんねん。


マリコ:アリババの再来を狙ってるわけやな。


サチコ:分析の中でも、これは単なる投資の分散やなくて、「物理的なAIインフラを統合する」っちゅう戦略的な意味があると言われとる。


マリコ:「ロボットや工場のAI」と「言語モデルのAI」を、両方とも自分のものにしようとしてるわけやな。


サチコ:そしてこの全体の構造を、専門家がこう表現してる。「企業への投資ではなく、産業そのものの支配権を取りに行く戦争だ」と。


マリコ:「戦争」!すごい表現やな。


サチコ:半導体アーム計算資源データセンター、電力(エネルギー会社)、モデル(オープンAI)、この全部を一社で押さえようとしてる。


マリコ:「縦に全部を持つ」っちゅう発想やな。


サチコ:それや。これを「垂直統合」と呼ぶ。検索エンジンやスマホの延長やなくて、「知能そのものを作る基盤を全部押さえる」っちゅう、これまでにない規模の戦略や。


マリコ:ほな、これがうまくいくかどうかは何で決まるんや。


サチコ:いくつかの条件がある。一つはオープンAIが本当にトップの地位を維持できるか。グーグルやアンソロピックっちゅう競合がおるからな。


マリコ:競争に負けたら大変やな。


サチコ:二つ目はAIの需要が予想を超えて爆発的に伸びるかどうか。線形の成長だと投資の回収が間に合わへん。


マリコ:「思ったより速く伸びる」必要があるんやな。


サチコ:三つ目は電力の制約を突破できるか。AIは電気をめちゃくちゃ使こてまうから、電力が足りなくなったら計算機自体が動かせなくなる。


マリコ:「データセンターはあるけど電気がない」っちゅうのが一番ありそうな問題やな。


サチコ:四つ目は資金調達が途切れないこと。


マリコ:今のソフトバンクは、その四つ目で苦戦してるわけやな。融資の交渉が止まってる、上場が延びてる、っちゅう現状やもんな。


サチコ:そう。そしてこの状況に対して、専門家の意見は分かれとる。


マリコ:どう分かれとるんや。


サチコ:一つの見方は「すぐに破綻する危機ではない」っちゅうもんや。ソフトバンクは累計約10兆円の個人向け債券を発行してて、資金繰りの柔軟性を確保してる。オープンAIの上場がなくても、スターゲートっちゅう巨大データセンター構想への資金は出せる、っちゅう分析がある。


マリコ:「すぐには破綻せえへん」っちゅう見方やな。


サチコ:もう一つの見方は「短期では破綻しないが、長期的に信用がじわじわ削られる」っちゅうもの。資産の質が悪化してて、上場資産が減って非上場のAI資産が増えてる。これを格付け会社のS&Pが問題視してる。


マリコ:「すぐに死ぬわけやないけど、体力が削られていく」っちゅうことか。


サチコ:「資産はあるけど、いざっちゅう時に売れる速度が遅い」っちゅう、流動性の問題があるからや。


マリコ:これは前にロシア経済の話をした時の「消耗型の安定」と似た構造やな。「崩壊はしてへんけど、じわじわ消耗してる」っちゅう。


サチコ:「規模は全然違うけど、構造は似てる」っちゅう指摘やな。


マリコ:では、もし全部がうまくいったら、どんな未来になるんや。


サチコ:「AI版の電力会社、水道会社になる」っちゅう未来が描かれとる。AIを使うたびに、使った分だけお金が入ってくる、っちゅう持続的な収益モデルや。


マリコ:「投資して売って終わり」やなくて「使われ続けることで儲かる」仕組みやな。


サチコ:ほんでもし失敗したら?


サチコ:「資産はあるけど、いざっちゅう時に現金化できなくて、借金の返済に追われる」っちゅう長期停滞のシナリオがある。


マリコ:「破綻ではなく、ずっとしんどい」っちゅう結末か。


サチコ:これが今のソフトバンクが立っとる現在地や。


マリコ:「成功すれば歴史に残る大成功、失敗すれば長期にわたる苦しい状況」っちゅう、どちらに転んでも普通やない結果になる賭けやな。


サチコ:これを専門家は「投資ではなく、産業OS(基本ソフトウェア)への先物投資だ」と表現しとる。


マリコ:先物投資!「未来そのものに賭けてる」っちゅうことやな。


サチコ:そして今回の12パーセントの急落も、その「先物」の値段が一瞬ぶれた、っちゅう出来事や。


マリコ:「先物が一瞬ぶれただけで5.6兆円が消える」っちゅうのは、それだけで規模の大きさがわかるな。


サチコ:「金の卵を産むガチョウ」と自分で言った2日後に株価が急落するっちゅうのは、孫さんにとってはなかなか皮肉な巡り合わせやったな。


マリコ:でもガチョウは死んでへんわけやろ。


サチコ:死んでへん。生きとる。卵を産むタイミングが「2026年後半」から「2027年」に延びた、っちゅうだけの話や。


マリコ:「ガチョウは生きてるけど、卵を産むのが遅れてる」っちゅうのが、今日の話の一番正確な表現かもしれへんな。


サチコ:その間にガチョウの飼育費がかさんで、飼い主の財布がしんどくなる、っちゅうのが現在進行中の話やな。


マリコ:「卵を待つ間の飼育費」って、なんか身につまされる話やな。私もペットを飼うてた時、似たような気持ちになったことあるし。


サチコ:10兆円とペットフード代では、規模が全然違うけどな!


マリコ・サチコ:どうもありがとうございましたー!


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