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サチコとマリコの時事ネタ漫才  作者: 藍埜佑


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第193話「6万円に触って逃げた!~株価の山の頂上に立って1秒で転げ落ちた日本と、4つの銘柄が支える危うい塔~」

マリコ:(黒板と大きなチョークを抱えて登場)どうもー!サチコ・マリコでーす!


サチコ:あんた、なんで教室の備品を持ち込んでんねん。授業でも始める気か。


マリコ:今日はな、黒板に数字を書きながら説明したいネタなんや。なんせ今日のテーマは「数字」やからな。


サチコ:数字でも黒板は要らんわ。そんなもん、口で言えばええがな。


マリコ:いや、この数字は黒板に書かんと迫力が出えへんねん。いくで。(黒板に大きく「60,013.98」と書く)


サチコ:……それ、なんの数字や。


マリコ:日本の歴史を変えた数字や!2026年4月23日、東京株式市場で日経平均株価が史上初めて6万円台に突破した瞬間の高値や!「ろくまんじゅうさんてんきゅうはち」!


サチコ:「ろくまんじゅう」て!饅頭の数みたいに読むな!六万十三円九十八銭や!


マリコ:似たようなもんやんか。どっちにしろ途方もない数字や。


サチコ:どっちにしろ全然違う!饅頭六万個って、どんな法事やねん!国葬か!


マリコ:それな、一家でうちの父親の葬式やってたら来客が多すぎて饅頭六万個配ったことあるで。


サチコ:どんな有名人の父親やねん!嘘もたいがいにしいや!もう話を戻すで。4月23日に日経平均が初めて6万円台に乗せた、ということやな。


マリコ:そうや!6万円!しかもこれ、昨年の秋に5万円を突破してから、わずか半年で1万円も上がったということや。


サチコ:1万円上昇がたったの半年。これはたしかにすごいスピードや。


マリコ:半年で1万円上がるって、どんなスピードかというとな、うちの給料が月5千円ずつ上がり続けたら2か月で1万円アップやろ。


サチコ:株と給料を一緒にすな。しかもあんたの給料、月5千円も上がっとらんやろ。


マリコ:そこは言わんといてぇな、サチコちゃ~ん★


サチコ:きもっ!ほな具体的な数字から整理しよか。4月23日の取引データをまずおさえておくで。始値が5万9758円で、高値が6万13.98円。これが「史上初めての6万円台」や。


マリコ:高値6万13円!「大台を超えた」と言うには、ちょうどよく超えとるな。「13円だけ超えた」ってのは、なんか遠足のおやつで100円の予算を1円だけ使い切るくらいのギリギリ感があるな。


サチコ:その感覚はだいたい合っとる。ギリギリ超えた、ということや。


マリコ:で、終値は?


サチコ:そこが今日一番ドラマチックなところや。終値は前日比445.63円安の5万9140.23円。つまり、6万円に「触って逃げた」。


マリコ:触って逃げた!6万円に一瞬タッチして、そのまま降りてきたんか!


サチコ:しかも下げ幅は最大で960円近くになる場面もあった。「山頂を踏んで即転落」という展開やな。


マリコ:これはもう「登山で山頂の写真を撮ったら直後に雷が来た」みたいな話やんか。「着いたで!」「うわー!」「はよ降りろ!」という。


サチコ:その比喩は案外正確やな。高値到達後に利益確定売りが一気に入って、後場は全体が崩れた。


マリコ:「利益確定売り」って言葉、聞くたびにモヤっとするわ。みんなが「買う」から株価が上がるのに、「売る」からまた下がる。これって無限ループやんか。「上げたり下げたりするのが株式市場」って、なんか非常に非生産的なことを全員でやっとるような気がすんねんけど。


サチコ:そこにむしろ市場が成り立っとるんやから、文句言うてもしゃあないで。


マリコ:文句やのうて感想や。


サチコ:感想でもしゃあないわ。ほな、なぜ6万円に到達したか、という話をしよか。理由は大きく四つあるんや。


マリコ:四つ!今日も多いな。


サチコ:今日の話、全部に繋がりがあるから、ちゃんと聞いといてぇな。一つ目は「地政学リスクの緩和」や。


マリコ:きた!これ前の漫才で散々話したやつや!イランとアメリカの停戦の話やな。第189話で「文明崩壊1時間前に停戦した」って言うて、第192話で「朝は爆撃すると言って午後に延長した」という話をして、あれが株価にも影響したんか。


サチコ:そういうことや。トランプさんが4月21日に停戦を無期限延長すると発表したのを受けて、翌22日にアメリカのNYダウが340ドル上昇した。その流れが23日の東京市場にも波及した。


マリコ:「TACOが株価を上げた」ってことか。「いつも引っ込める大統領が今回も引っ込めた」という安心感で買いが入ったわけやな。


サチコ:正確に言うと「戦争拡大リスクが後退した」という安心感や。原油価格も下がったから、輸入コスト上昇への懸念が一服した。


マリコ:「TACOが為替と原油と株式市場を動かした」っちゅうことか。タコが世界の金融市場を動かしとる。軟体動物の影響力がでかすぎるな。


サチコ:そのタコちゃうわ!TACOは略語や!でもまあ、構造はあんたの言う通りや。第188話から続いてきた「連載もの」みたいな話が、ここにも効いてきとる。


マリコ:なんか「全話を見ないと伏線が回収できないドラマ」みたいやな。TACOがハンガリー選挙の遠因で、TACOがイラン停戦の遠因で、TACOが日経6万円の遠因でもある。


サチコ:世界は繋がってるということやな。二つ目の理由はAIと半導体の集中買いや。


マリコ:AI!また来た!最近の漫才で毎回AIが出てくるな。AIは現代の「なんでもそのせい」便利ワードになってきてへんか。


サチコ:「AIのせい」っちゅうか「AIのおかげ」の局面がここでは多いんや。具体的に言うと、ソフトバンクグループが9.6パーセント高、ルネサスエレクトロニクスが8.7パーセント高、キオクシアホールディングスが5.4パーセント高。これら半導体・AI関連株が指数を引っ張った。


マリコ:9.6パーセントって、一日で!?それって一日に10パーセント近く上がったってことか!?ソフトバンクの株持っとった人、朝起きたら財産が1割増えとるやんか!「昨日まで1000万円やったのに今日は1096万円になっとる」って、布団の中でそれを確認する朝って、どんな朝なんやろ。


サチコ:あんたはそんな体験をしたことないから「布団の中で確認する」ゆうても実感ないやろ。ただただせつない気持ちになるだけや!


マリコ:ほんまやな。ほな私が持ってたとして、セルフ布団タイムを体験しようか。(目を閉じて両手で布団を引き上げる真似)「今日のソフバン……9.6パーセント高……今日だけで96万円増えた……よしよし……」(目を開けて)うわー幸せな朝やんか!


サチコ:ロールプレイで終わらせな!実際に自分は持ってへんのやから!


マリコ:そこが悲しいところやな。


サチコ:あと、今日一番大事なポイントはここやねんけど、他にもアドバンテスト、東京エレクトロン、ディスコ、レーザーテック、SCREENなど、半導体製造装置や半導体テスト関連の銘柄が軒並み大きく上がっとんねん。


マリコ:アドバンテスト!東京エレクトロン!ディスコ!レーザーテック!これ全部知ってる人、どれだけおるんやろな。私はどれが何をする会社か全然分からへん。


サチコ:アドバンテストは半導体テスト装置の世界シェアトップクラスの会社や。東京エレクトロンは半導体製造装置メーカーで日経平均への寄与度がものすごく大きい。ディスコは半導体のウエハーを切る装置、レーザーテックは半導体の検査装置や。


マリコ:「切る・検査する・測る」という、職人の道具やんか。半導体チップって最終的には包丁と定規と虫眼鏡で作るんか。


サチコ:それを超精密機械でやってるんや!包丁と虫眼鏡で半導体は作れへん!


マリコ:分かっとるわ!でも全部「物を作る前段階のツール」やんか。AI自体ではなくて、AIの道具を作っとる会社が日本には多い、っちゅうことやな。


サチコ:そうや。日本は「AIそのものを作る」より「AIのための半導体を製造・検査する装置を作る」方が得意なんや。だから生成AI投資ブームが来ると、直接AIを作る米国だけやなくて、日本の装置メーカーにも恩恵が来る。


マリコ:「金鉱が見つかったら、ツルハシを売る会社が儲かる」やつやな。ゴールドラッシュのときも直接採掘した人より、ジーンズと道具を売ったリーバイスとかが儲かったという話があったな。


サチコ:ええ例えや。日本の半導体装置メーカーはまさにAIゴールドラッシュの「ツルハシ屋」やな。


マリコ:ということは、AI需要が続く限り、ツルハシが売れ続けるということか。


サチコ:そこが三つ目と四つ目の話につながってくるんやけど、その前に「3番目の理由」として円安の話をしよか。


マリコ:円安!これも最近の漫才で何回も出てきた話やな。


サチコ:円安は輸出企業にとって追い風や。円が安いと、ドルで稼いだお金を円に換えた時に、円の量が増える。だから輸出企業の収益が増えて、株価が上がりやすくなる。


マリコ:これはもう何回も聞いた話やな。「ドルを円に換えると多くなる」というやつやろ。うちの田舎の祖母がアメリカ旅行から帰ってきた時に「1ドルが160円やったから、残ったドルを換えたらお年玉になった」と言っとったのと同じ構造か。


サチコ:祖母がアメリカ旅行するキャラクターのくせに、「残ったドルをお年玉にする」というのが面白い行動やな。


マリコ:うちの祖母は行動力があるんや。80歳でグランドキャニオンに行って帰ってきたぐらいやからな。


サチコ:それはすごいな。話を戻すで。四つ目の理由は「先物の買い戻し」や。これが一番テクニカルな話やから、分かりやすく言うと――


マリコ:すんごく分かりやすくお願いします。


サチコ:外国の機関投資家が「株価は下がるやろ」と思って、先に「売り」の約束をしとった。これを「先物の売り持ち」という。ところが実際には株価が上がり始めたから、「あかん、損失が膨らむ。はよ反対売買で買い戻さな」となって、慌てて買い注文を入れた。


マリコ:「売ると言ったのに買わなあかんくなった」っちゅうことか。


サチコ:そう。これを「ショートカバー」というんやけど、この「慌てた買い戻し」が株価を余分に押し上げた。だから6万円に届いたのは、純粋な「日本株買いたい!」という実需だけやなくて、「慌てた売り方の買い戻し」という、言わば仕方なく買った需要も混じっとった。


マリコ:「嫌々買ってくれた客」が株価を上げたわけか。「本当は欲しくないけど損を止めるために買う」という、複雑な感情の買い注文が山頂を作ったということやな。


サチコ:「渋々買い」で山頂を作った、というのは言いすぎかもしれへんけど、そういう需要が含まれとった、というのは正確な話や。


マリコ:なんか切ないな。「渋々買ってくれた人のおかげで6万円に届いた」というのは、人気ライブのチケットが「本当は来たくなかった友人に頼み込んで来てもらったおかげで完売になった」みたいな。


サチコ:それはそれで完売に変わりないわ!


マリコ:まあ、どんな動機であれ買ってくれたからこそ6万円に届いたということやな。ありがとう、渋々のお客さん。


サチコ:その感謝のコメントは株式市場に向かって言うてくれ。あとあんた若干失礼なこと言うてるから自覚してな。ほなここでな、今日一番重要で面白い話をしよか。


マリコ:何や。「6万円突破」で終わりやないんか。


サチコ:「6万円突破」は表面上の話で、裏側にとんでもない構造的なゆがみがあんねん。


マリコ:「ゆがみ」きた!最近の漫才では「ゆがみ」が出てくると俄然話がおもろくなるもんな。


サチコ:4月23日に何が起きたかというと、日経平均が上がった一方で、TOPIXという別の株価指数は続落した。しかもプライム市場で値上がりした銘柄数は340銘柄しかなかった。


マリコ:値上がりが340銘柄。それって多いのん?


サチコ:値下がりは1188銘柄や。日経平均が「史上初の6万円」を記録した同じ日に、市場全体の7割以上の株が値下がりしとった。


マリコ:7割が値下がり!?「日経平均が史上最高値に届いた日に、株の7割が下がった」ってどういうことやねん!?


サチコ:これが「日経平均という指数の構造的なゆがみ」なんや。日経平均はな、225銘柄の株価を単純に足して計算する「株価平均型」の指数や。TOPIXは時価総額で計算するから全体を反映するけど、日経平均は「株価が高い銘柄ほど指数への影響が大きい」っちゅう特殊な仕組みになっとる。


マリコ:「値段が高い銘柄が大きく動くと、全体が動いたように見える」っちゅうことか。


サチコ:そう。だからソフトバンクグループと東京エレクトロンという株価の高い2銘柄だけで、ある日の日経平均の上昇524円のうち481円を説明できる、という日があった。


マリコ:524円の上昇のうち481円が2銘柄!?残りの223銘柄は合計でたったの43円分しか動いてへんのか!


サチコ:極端に言えばそういうことや。223対2の戦い、2の側が圧勝しとる。


マリコ:これはもう「運動会の玉入れで一人が一人で200個入れて、残り50人全員合わせて20個入れた」みたいな話やんか。「チームの頑張り」という概念が崩壊しとる。


サチコ:その比喩は面白いな。しかも日経平均を見てる多くの一般投資家は「日経が6万円!日本株全体が好調!」と思うかもしれへんけど、実際は「一部の大型株だけが好調で、自分の持ってる銘柄は全然上がってない」という現象が起きやすいねん。


マリコ:「クラスの平均点が80点になったと言われたら、天才二人が100点を取りまくって、残り40人は60点やったから平均が上がっただけ」みたいな。「平均が上がった=全員の点数が上がった」ではない、っちゅう話やな。


サチコ:完璧な例えや。「日経平均が上がってても、自分の持ち株が上がるとは限らない」というのは一般投資家が絶対知っておくべき話や。


マリコ:「みんな幸せになった」ではなくて「一部が超幸せになって、平均値が引き上げられた」という、ハンガリーの話に通じるな。前の漫才で「政権の友達の大金持ちだけが富を増やして、庶民の生活はしんどいまま」っちゅう話があったけど、株価でも同じことが起きとるやんか。


サチコ:鋭い。ハンガリーの格差と日経平均の格差は、「平均値が現実を隠す」という構造が同じや。


マリコ:「数字の平均値は真実を語らない」ということやな。「平均年収」も「平均体重」も「平均偏差値」も、みんな「一部が引き上げた平均」だから実感と乖離する、というのは昔からある話やな。


サチコ:その通りや。だから今回の「日経平均6万円」を正確に読むには、「4社が一時的に引き上げただけで、市場全体は弱かった」という実態を知ることが大事やねん。


マリコ:「主役4社によるワンマンショー」というわけやな。


サチコ:専門家の分析では「4月の日経平均はTOPIXを8パーセントポイント上回った」とされとる。8パーセントポイントの乖離というのは、かなり大きい過熱シグナルや。


マリコ:「日経とTOPIXが8パーセントも乖離してる」って、ピンとこえへんな。


サチコ:分かりやすく言うと、もし二人の双子が同じ家で育って、同じものを食べて、一方が8センチだけ背が高くなったとしたら「何か違うことが起きてる」と気づくやろ。日経とTOPIXは本来、同じ日本株市場を追いかける兄弟みたいなものや。それが8パーセントも乖離したら「特定の力が日経だけを引っ張ってる」っちゅうことになんねん。


マリコ:「双子の片方だけが急成長した」ということか。栄養学的に言ったら「一方だけサプリを飲んでた」という感じやな。そのサプリがAIと半導体や。


サチコ:うまくまとめたな。で、この「4社によるワンマンショー」には明確なリスクがある。


マリコ:リスクか。「勝利はゴールではなくスタート」という前の漫才の話みたいやな。「6万円達成!めでたし!」ではないわけやな。


サチコ:そうや。リスクは三つある。一つ目は「決算リスク」。これから国内外の主要企業が決算を発表する時期や。AI・半導体銘柄の業績が期待外れやったら、一気に売られる。ソフトバンクグループや東京エレクトロンの受注が減った、利益が予想より低かった、っちゅうことになったら、「ワンマンショーの主役が退場」して日経平均は大きく下落すんねん。


マリコ:「4人の役者に頼りすぎた芝居で、その4人が全員風邪を引いたら公演が中止になる」という話やな。カンパニーのリスク管理がなっとらんわ。


サチコ:株式市場はカンパニーやないで!でもリスクの構造はそういうこと。しかも4月23日の終値後に、アメリカのIBMとサービスナウというSaaS系の会社が時間外取引で決算悪化を受けて急落して、その影響で東京市場のSaaS関連銘柄にも売りが波及した。「決算が一個崩れると連鎖する」というのはリアルに起きとるんや。


マリコ:「ドミノ倒しの先頭牌が倒れた」っちゅう話か。


サチコ:二つ目のリスクは「地政学の再燃」や。イランとアメリカの停戦は「無期限延長」やけど、完全に解決したわけやない。イランの革命防衛隊の強硬派はまだ強い発言力を持っとる。今後また衝突が激化したら、原油価格が跳ね上がって、円安も進んで、輸出企業には恩恵でも、エネルギー輸入が多い日本全体には打撃になる。


マリコ:「停戦が続く限り株高、再燃したら株安」という綱渡りか。ほんで「TACOが引っ込めてくれる限りは安心」やけど「TACOのパターンが壊れた瞬間に崩壊」という話やな。第192話の「TACOの逆方向リスク」と完全につながる話やんな。


サチコ:その通りや。「脅しが効かなくなったから本気でやる」という逆TACOが起きたら、株式市場は最も大きなショックを受ける。


マリコ:「TACO崩壊の日は株式大暴落の日」ということか。これは覚えておくべきことやな。


サチコ:三つ目のリスクは「円高転換」や。今は円安が続いとって、それが輸出企業の収益を支えとるけど、日銀が金利を上げるとか、ドルが売られるとかの局面になったら、円高になって企業業績の前提が狂う。


マリコ:「円安が続いてる間だけええ話」ということか。


サチコ:そういうことや。だから「日経6万円!すごい!」という話と、「ただし4社依存、地政学綱渡り、円安前提」という但し書きがセットで理解される必要があんねん。


マリコ:「条件付きの快挙」やな。「但し書きつきの山頂」っちゅうか。


サチコ:ほな、今後の見通しの話もしよか。証券各社の予測を整理すると、野村証券は2026年末の日経平均の目標を6万円として、上振れシナリオでは6万7500円と見ている。JPモルガンは4月22日に年末見通しを6万1000円から7万円に引き上げた。


マリコ:JPモルガンが7万円に引き上げた!?一日で1万円も目標を上げるって、えらい大胆やな。昨日まで6万1000円が目標やって、今日から7万円が目標って、「誕生日プレゼントの希望を聞いたら昨日はゲームソフトやったのに、翌日には海外旅行になった」みたいなものやんか。


サチコ:そのアップグレードは理解しにくいな。でもJPモルガンが根拠として挙げたのはAIブームと円安の継続で、「強気シナリオの前倒し実現」という見方からや。


マリコ:「前倒しで目標に届いたから、次の目標をはるか先に引き上げた」というロジックか。


サチコ:そういうことや。チャート分析の観点でいうと、1990年以来30年以上にわたって低迷し続けたことで、日経平均の長期チャートには「カップウィズハンドル」という特殊な形が形成されとって、そのセオリー通りに動くなら7万円付近まで上昇する可能性があるという見方もあんねん。


マリコ:カップウィズハンドル!コーヒーカップに持ち手がついたような形のチャートか。


サチコ:そうや。大きなお椀型の底打ちの後に、小さな押し目(ハンドル部分)があって、そこを突破すると上昇が続くというパターンや。


マリコ:「コーヒーカップに似た形になったら買い」って、投資家はチャートを見ながら朝ごはんを食べてるのか。「このチャート、コーヒーカップに似てきたな……」「ほな、砂糖要る?」「いや今はチャートを見ておかなあかん局面や!」みたいな。


サチコ:朝の風景を無駄に具体化するな!でもまあ、「30年かけて大きな皿型の底を形成した」というのは事実で、それが長期上昇の構造的根拠として見られとるのは本当やな。


マリコ:「30年低迷したから底がしっかりした」という逆転の発想やな。「30年間ずっと辛かったから、今の上昇は本物の基盤がある」という。なんか人生訓みたいに聞こえるな。


サチコ:そういう受け取り方をするとは思わへんかったけど、まあ的外れではないな。「長い底からの本格反転」という見方は一定の説得力がある。


マリコ:でもさっき「4社依存で脆い」という話もしてたやん。「構造的に強い」と「一部銘柄依存で脆い」は矛盾せえへんのか?


サチコ:これが今日の一番大事なポイントやねん。「長期では強い、短期では危うい」という二つが同時に存在するんや。


マリコ:「長期と短期で真逆のことが言える」ってことやな。


サチコ:そう。長期で見れば、日本企業のROE改善、ガバナンス改革、AI需要の取り込みという構造的な強さがある。これは本物や。一方で短期では、4社依存の歪み、地政学の綱渡り、先物の振幅という脆さもある。だから「長期投資家にとっては上昇トレンドの途中、短期トレーダーにとっては激動の振幅相場」という全然違う風景が、同じ「6万円」から見えてくる。


マリコ:これは前の漫才で「事実・文脈・解釈の三層を分けろ」っちゅう話があったけど、まさにそれやな。「6万円突破」という事実は一つでも、「長期で見るか短期で見るか」という文脈によって解釈が全然変わる。


サチコ:完璧な応用やな。「同じ数字を見ても、どの時間軸で見るかで意味が変わる」というのは株式市場の本質的な話でもあるんや。


マリコ:6万円というのは「歴史的な通過点」でも「短期的な過熱のピーク」でもあるわけか。「どっちや」ではなくて「どっちでもある」という。


サチコ:そういうことやねん。ここが今日の漫才の核心のひとつ。白黒つけんと、両方持って考え続ける、というのが今の相場の正しい見方やと思う。


マリコ:「6万円突破は天井か通過点か」という問いに対して「今は分からへんけど、両方の可能性を持ちながら監視し続けることが必要」という答えか。これは前の漫才でハンガリーの勝利を語るときも言うてたことやな。「希望と警戒を同時に持つ」という。


サチコ:世界の出来事に通底してる教訓が一緒やな。


マリコ:「勝って浮かれるな、でも諦めるのも早い」というシリーズ全体のテーマが、株式市場にもそのまま当てはまるわけか。


サチコ:そういうことや。ほな、今日の漫才に特有の視点をもう一つだけ加えよか。昨年10月に5万円を突破した。今回、わずか半年で6万円を突破した。この「半年1万円上昇」という事実を、歴史的なペースで見るとどうなると思う?


マリコ:どうなるねん。


サチコ:日経平均が3万円台をつけたのはバブル景気の頃の1989年から1990年。そこから崩壊して、長い低迷期が続き、コロナ禍の後から本格的な上昇が始まった。4万円突破が2024年3月、5万円突破が2025年秋、6万円突破が今回の4月23日。


マリコ:「1万円刻みの節目」を最近は毎年のように突破してる感じやな。


サチコ:せやねん。せやから「半年で1万円」は一見早く見えるけど、「1989年に3万8000円台をつけてから30年以上かかってようやく抜けた」という大きな文脈の中に置くと、「遅すぎるくらいの回復」だったとも言えるんや。


マリコ:「30年以上待って、やっと本来の成長軌道に戻った」っちゅうことやな。


サチコ:「失われた30年」という言葉が日本経済にはあってやな、その傷がようやく癒えて、長期的な上昇軌道に入り始めたのが今のフェーズという見方ができんねん。


マリコ:「30年間のリハビリが終わって、やっとジョギングを始めた」みたいなもんか。「ジョギングができるようになった!すごい!」やけど「まだマラソン大会に出るほどでは……」という段階。


サチコ:その例えは今の日本経済に合っとる。「歩ける体に戻った。走れるかどうかはこれから」というのが6万円の意味や。


マリコ:ほなここで日本の一般市民への影響を聞かせてくれ。「株式市場の話は自分には関係ない」と思っとる人は多いと思うんやが。


サチコ:大事な話やな。三つある。一つ目、NISAや確定拠出年金を通じて投資信託を持っとる人が増えとるから、「直接株を持っていない」人でも日経平均の動向は資産に影響する。


マリコ:「知らぬ間に株を持っとる」人が増えとるっちゅうことやな。


サチコ:政府がNISA枠を拡充してから、「株はよく分からんけど、老後のためにとりあえず積立をしとる」という人が急増した。その人たちは日経平均が上がれば資産が増えて、下がれば減る、ということに自覚的であるべきや。


マリコ:「気づかぬうちに株の世界の住人になっとる」というわけやな。


サチコ:二つ目、企業業績が上がれば賃上げにつながる可能性がある。とくに今の日本では、「デフレから脱却して、物価も賃金も上がる好循環」に入れるかどうかが大きな課題で、株価上昇はその一部やねん。


マリコ:「株が上がる→企業が儲かる→賃金が上がる→消費が増える→さらに株が上がる」という好循環が回れば、株を持ってない人にも恩恵が来るということか。


サチコ:そういうこと。ただしこれは「株が上がっても賃金が上がらない」という逆のパターンもあり得るから、過度な楽観は禁物やけどな。


マリコ:「上場企業の株主だけが豊かになって、非正規や中小企業の人には恩恵が来ない」というリスクもあるということやな。ハンガリーの話と同じ構図や。「数字は良くても、下の人に届かない」という。


サチコ:そういうリスクへの警戒は持っておくべきやな。三つ目、為替レートへの影響。株価上昇は日本への海外マネー流入を促して、円高圧力にもなりうる。一方で、今は円安基調やから、「輸出企業は儲かるけど輸入品が高い」という庶民目線のしんどさも残る。


マリコ:「株価は上がってるけど、スーパーの食料品は高いまま」という現実が変われへんっちゅうことやな。これは辛い。


サチコ:「市場の好況と台所の問題は必ずしも一致しない」というのは、ハンガリーでも日本でもアメリカでも共通した現実やな。


マリコ:「数字の世界の勝利が、生活の現場に届くとは限らない」という。サチコ、これは今日の漫才を通じて一番大事な普遍的な教訓かもしれへんな。


サチコ:そうやな。「数字」は「事実の切り取り方」やから、何を見るかによって全然違う現実が見える。日経平均6万円は「史上初の偉業」でも「4社の偉業」でもある。どちらも嘘ではないけど、どちらも全てを語ってもいない。


マリコ:「真実は一つやない、真実はいくつもある」っちゅうことか。ほな、そろそろうちがまとめるで。


サチコ:頼むで。


マリコ:今日の核心は三つや。一つ目。2026年4月23日、日経平均株価は取引時間中に史上初めて6万13円98銭という大台に達した。しかし終値は前日比445円安の5万9140円で、「触って逃げた」形に終わった。「一時突破」と「終値定着」は全く別物であり、高値をつけた同じ日に市場全体の7割が値下がりするという、数字と現実が乖離した一日やった。


サチコ:完璧や。


マリコ:二つ目。上昇の主役はソフトバンクグループ、東京エレクトロン、アドバンテストなどの一部AI・半導体銘柄で、この4社が日経平均の上昇の大部分を支えた。日経平均は株価平均型の指数だから、値がさ株数銘柄の動きで指数全体が大きく動く構造的な歪みがある。これは「全員が幸福になった」ではなく「一部が豊かになって平均値を引き上げた」という状態であり、TACOによるイランの停戦延長、円安の継続、先物の買い戻しという複数の要因が同時に重なった「特殊事情つきの突破」だった。


サチコ:その通りや。三つ目は?


マリコ:三つ目。「6万円は通過点か天井か」という問いに対して、「どちらでもあり得る」という答えが誠実な回答で、長期視点では日本企業の構造改革・AI需要という実需が下支えする一方、短期視点では4社依存・地政学綱渡り・決算リスクというゆがみと危うさが共存している。監視すべきは、AI・半導体銘柄の決算ガイダンス、海外投資家の買い越しが続くかどうか、そしてTOPIXや値上がり銘柄数が改善してくるかどうかの三点。「日経平均が高い=日本株全体が強い」ではなく、「4社のワンマンショーが続くか、全体に広がるか」を見届けることが本当の判断やな。


サチコ:完璧やな。今日の話の全部が入っとる。


マリコ:でもサチコ、私が一番気になることがある。


サチコ:何や。


マリコ:6万円を「一時突破して戻した」って、プロの投資家たちはそれをどう体験したんやろ。


サチコ:どういうこと?


マリコ:いや、例えば朝に証券会社のトレーダーが「出た!6万円!!」ってなって、その5分後に「あ、また戻った」ってなるやんか。その間の体験は何なんやろと思って。


サチコ:「瞬間の達成感と即座の失望」の繰り返しやな。


マリコ:まるで遠足でお弁当を開けて「あ、唐揚げがある!今日はいい日や!」と思った瞬間に「それは弟のやつや」と言われるみたいなもんやんか。


サチコ:唐揚げを大台に例えるな!金融市場をお弁当に落とし込むのは無理があるで!


マリコ:でも「触ったと思ったら他人のやった」という体験は似てへんか。


サチコ:まあ「他人の唐揚げ」が終値ということにはなるな。日経平均の大台は「他人の唐揚げ」説か。


マリコ:「自分のお弁当の中に他人の唐揚げが入ってたような幸福感が、蓋を閉めた後には消えていた」というのが4月23日の東京株式市場やったんかもしれへん。


サチコ:まあ「一時突破」という喜びの実感はあったんは確かやから、「唐揚げを一口食べたけど取り上げられた」くらいの話やないか。


マリコ:「一口食べたけど取り上げられた唐揚げ」!それが6万13円98銭や!一口の値段が6万円!高い唐揚げやな!


サチコ:一口あたりの価値を計算すな!そして日経平均とお弁当の単位が違うから、換算できへんわ!


マリコ:でも考えてみたら、ソフトバンクグループが9.6パーセント上がったということは、ソフトバンクの大株主の孫さんは一日でとんでもない資産増加があったわけやろ。


サチコ:そうやな。ただ「帳簿上の資産増加」やから、実際に現金化した話ではないけどな。


マリコ:9.6パーセントって、孫さんの資産規模から計算したらいくらになるんやろ。


サチコ:計算するのは野暮やろ!数字が大きすぎてピンとこおへんから想像するだけ無駄やで!


マリコ:「ピンとこない大きさの富」が「ピンとこない速さ」で動いた一日やったっちゅうことか。


サチコ:「スケールが人間の実感を超えた世界の話」やからこそ、数字の背景と構造を理解することが大事なんやと思うな。


マリコ:「自分には関係ない」と思うんやなくて、「自分のNISAや年金にも間接的に影響してる」という意識を持ちながら、「でも一部の大型株の話を日本全体の好況と混同しない」という注意も持つ、ということか。


サチコ:その通りや。希望と警戒を同時に持つ。数字の表面だけでなく構造を見る。長期と短期を分けて考える。これが今の日本株を正しく読む基本的な姿勢やな。


マリコ:「事実・文脈・解釈の三層」を株式市場にも適用せよ、ということやな。


サチコ:よう覚えとるな。第188話の話や。


マリコ:全部繋がってんねんで!イラン停戦がTACOで、TACOが株価に影響して、ハンガリーの格差問題と日経平均の集中の問題が同じ構造で、そして「希望と警戒を同時に持つ」という教訓が全話を貫いてる。


サチコ:一本の串に刺したみたいに、ちゃんと繋がってる。


マリコ:ほな、うちに最後に一個だけ言わせてくれや。


サチコ:何や。


マリコ:「カップウィズハンドル」の話があったやろ。チャートがコーヒーカップの形になったら上昇の続きが来るという。


サチコ:うん。


マリコ:私の毎朝のコーヒーカップも、よく見たらカップウィズハンドルの形をしとる。これはもしかして私の人生も上昇トレンドに入ってるということか。


サチコ:コーヒーカップは全部カップウィズハンドルや!当たり前やんか!「カップ」に「ハンドル(持ち手)」がついたものをコーヒーカップと呼ぶねんから!


マリコ:じゃあ全員のコーヒーカップが「上昇シグナル」を出してるということか。日本中のモーニングが「6万円突破のサイン」やんか!


サチコ:全然違う!チャートのカップウィズハンドルは特定の価格推移のパターンを指す話で、朝のコーヒーの話やない!


マリコ:でもこれはひょっとしたら、毎朝コーヒーを飲んでる人全員が無意識のうちに株式市場のポジティブシグナルを掌に乗せてるということやんか。「皆さん、今日もカップウィズハンドルを手に取りましたね。上昇トレンドです」っちゅうな。


サチコ:そのアナウンスを朝のラジオでやったら、全国のコーヒー愛飲者が混乱するわ!「私、投資の才能があったん?!」って思って、全員が証券口座を開きに行くやんか!


マリコ:それで日本の投資人口が爆増して、日経平均が本当に7万円になったら、私の朝のコーヒーカップが日本経済を救ったということになる!


サチコ:あんたのコーヒーは日本経済を救わへん!もうええわ!


マリコ・サチコ:どうもありがとうございましたー!

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