第194話「59年ぶりに解禁!~日本が武器を売る国になった日と、軍艦でオーストラリアに挨拶した三菱重工の話~」
マリコ:(迷彩柄の鉢巻きを頭に巻いて登場)どうもー!サチコ・マリコでーす!
サチコ:あんた今日は何の格好やねん。また変なモードか。ハンガリーモードの次は軍人モードか。
マリコ:これはな、防衛モードや!今日は日本の安全保障の話やからな。気合いを入れていかなあかんやろ!。
サチコ:気合いはええけど、その鉢巻きは全然迷彩になっとらんわ。緑と茶色のまだら模様やなくて、普通の風呂敷を頭に巻いとるだけやんか。
マリコ:うちに迷彩柄の布がなかってん。でも「なんか戦ってる感」は出てるやろ。
サチコ:全然出てへん!寿司屋の板前みたいな格好になっとる!
マリコ:「本日のおすすめ:護衛艦11隻!」みたいな感じか。それはそれでええやろ。
サチコ:護衛艦が本日のおすすめになる寿司屋なんぞあるかい!ほな、話を始めるで。今日は2026年4月21日に起きた「日本の戦後安全保障史上最大級の政策転換」の話や。
マリコ:4月21日といえば、その2日前の19日に漫才でハンガリー選挙の話をして、21日にはイランの停戦が無期限延長になって、23日には日経平均が6万円を「触って逃げた」という激動の一週間やったんやな。
サチコ:そうや、その同じ週の4月21日に、高市内閣が「防衛装備移転三原則」の運用指針を改定して、戦闘機、護衛艦、ミサイルなど殺傷能力のある武器の輸出を「原則可能」にしたんや。
マリコ:「殺傷能力のある武器の輸出を原則可能」!これは聞いただけでもとんでもない話やな。日本って、武器を売ってへんかったんか。
サチコ:ほとんど売ってへんかった。正確に言うと、1967年から続いてきた「武器輸出を禁じる」という路線を、約59年ぶりに大転換したんや。
マリコ:59年!!59年ぶりって、私の親より年上の禁止令が一日で終わったっちゅうことか。
サチコ:まあ段階的な緩和はあったから「一日で」は正確やないけど、今回の改定がこれまでで最大の転換であるのは間違いない。
マリコ:59年というと、1967年が最初の禁止令か。その頃って何があったんや。
サチコ:1967年は佐藤栄作内閣の時代で、「武器輸出三原則」というものを表明した。共産圏、国連決議による禁輸国、紛争当事国への輸出はダメ、という原則やった。
マリコ:「この3カ所にはダメ」という話やな。それ以外はよかったんか。
サチコ:一応そういう建前やったけど、1976年に三木武夫内閣がこれを拡張して、「上の3カ所以外にも慎む」という方針を加えた。これで事実上の「全面禁輸」になった。
マリコ:「ダメな場所を広げて、結局全部ダメ」になったっちゅうことやな。なんか漫才の流れみたいやな。「最初は一個だけダメって言ってたのに、最終的には全部ダメになった」という、「気をつけてと言われたら何もできなくなった」みたいな。
サチコ:なかなか的確な表現やな。ほんで2014年、安倍内閣が「防衛装備移転三原則」という新しいルールを作って、「5類型に限って輸出を認める」という形で一部緩和した。
マリコ:5類型!これが今日の話のキーワードやな。5類型って何や。
サチコ:「救難・輸送・警戒・監視・掃海」の5種類の活動に関する装備品なら輸出してええよ、というもんや。全部「直接誰かを攻撃するものではない」という活動やな。
マリコ:「人を助ける・荷物を運ぶ・目を光らせる・機雷を取り除く」っちゅうことやな。これは全部「やさしい仕事」やんか。「戦争の道具は売れへんけど、お医者さんや見張り番の道具は売ってもええ」っちゅうことやな。
サチコ:そういうことやねん。せやから「殺傷能力のある武器」、つまり戦闘機、ミサイル、護衛艦の完成品などは輸出でけへんかった。
マリコ:それが今回の改定で撤廃されたっちゅうことか。「5類型」という縛りがなくなったんやな。
サチコ:そうや。今回の改定の核心は「5類型の撤廃」で、これにより殺傷能力のある武器も輸出できるようになった。正式な決定は4月21日の閣議や。
マリコ:「5類型の撤廃」というのは要するに、「今まで売っていいと言われてた品目を限定するルールを廃止した」っちゅうことやな。「制限リストを丸ごと捨てた」っちゅうことか。
サチコ:そういう言い方はできる。ただし、輸出できる相手は今でも制限があんねん。「防衛装備品・技術移転協定」を結んだ国に限定されとる。
マリコ:その協定を結んだ国はどこや。
サチコ:現在約17カ国や。アメリカ、イギリス、オーストラリア、フランス、ドイツ、イタリア、インド、フィリピン、インドネシア、カナダ、ノルウェーなど。NATO主要国とインド太平洋の同盟国・同志国が中心や。
マリコ:17カ国。日本と「仲良し協定」を結んだ国だけに売れると。「友達だけに特別に売ります」っちゅうプレミアムセールやな。
サチコ:プレミアムセールは少し違うけど、「信頼できる国限定」という考え方は合っとる。さらにもう一つ制限があって、「現在戦闘が行われている紛争当事国」への輸出は原則禁止や。
マリコ:「今まさに戦争してる国には売らへん」ということか。当然やな。「燃えてる家に油を売る」みたいなことはしないっちゅうことや。
サチコ:ただしな、「特段の事情がある場合は例外的に認める」という条項もついとる。
マリコ:「特段の事情」!また出た、例外条項!第192話のTACOでも「特段の事情で今回は延長します」というパターンがあったな。日本の政治もアメリカの外交も「特段の事情」が大好きやな。
サチコ:「特段の事情」というのは官僚用語で「普通はダメやけど場合によってはOKにする余地」を残す言葉や。これがどう使われるかが今後の焦点の一つや。
マリコ:「特段の事情」という言葉が世界中を飛び回る時代か。TACOの「脅してから引っ込める」の逆で、日本版は「禁止してから例外を設ける」というパターンが続くわけやな。
サチコ:鋭い観察やな。「原則と例外の間」に多くのことが起きる、というのは国際政治の普遍的な構造や。
マリコ:ところで、この決定はどこが審査するんや。国会で決めるんか。
サチコ:ここが今回最も批判を受けたポイントの一つやねんけど、個別案件の審査はNSC、国家安全保障会議の4大臣会合がやる。内閣総理大臣・外務大臣・防衛大臣・官房長官の4人や。
マリコ:4人か。衆議院って何人議員がいるんやっけ。
サチコ:465人や。
マリコ:465人の国会があるのに、4人で武器輸出の可否を決めてええのん?「465人でやる会議をすっ飛ばして4人でやる」っていうふうに見えるで。
サチコ:「事前に国会で承認は取らない。決めた後で通知する」という仕組みや。これを野党や市民団体が「民主主義のプロセスを経てない」と強く批判しとる。
マリコ:「4人で決めて465人に報告する」って、クラスの担任が「今日の遠足の行き先は4人の先生で決めました。生徒の皆さんに後日お知らせします」と言ってるようなもんやんか。
サチコ:生徒が後日の報告を聞いて文句を言っても、もう決まってるという状況やな。
マリコ:「参加してない者は文句を言うな」という仕組みやん。これは不満が出るわな。
サチコ:野党は「国会事前承認を義務化すべきだ」「法改正が必要だ」と追及しとる。日本弁護士連合会も事前に反対声明を出した。世論調査では賛成が40パーセント前後、反対が48パーセント前後で、拮抗しとるが反対がやや多い状況や。
マリコ:「賛否拮抗で、わずかに反対が多い」ということは、国民の過半数がモヤっとしながらこの決定を見てるということやな。
サチコ:「モヤっとしながら」は正確な表現やな。今日はその「モヤっとの内容」を整理していくで。
マリコ:頼むで。ほな、そもそも高市首相はなんでこの改定をやろうと思ったんや。
サチコ:動機は大きく三つある。一つ目は「安全保障環境の変化」。2022年のロシアによるウクライナ侵攻、中国の台湾周辺での軍事活動の激化、北朝鮮のミサイル発射の繰り返し。この「近所が物騒になった」という現実が背景にある。
マリコ:「世界の荒波が日本の近くまで来た」ということやな。前の漫才でハンガリーのオルバーンが「戦争か平和か」と言って負けたけど、日本では「戦争リスクがある」という認識が政策転換の根拠になっとるわけか。
サチコ:同じ「戦争」という言葉でも、欧州と東アジアでは状況が違うから、受け止め方が変わるんやな。二つ目の動機は「防衛産業の存続」や。
マリコ:防衛産業?ここで産業の話が出てくるんか。
サチコ:武器を作る会社が次々と撤退してた、という現実がある。長年、防衛産業は「自衛隊だけに売る」という特殊な環境で動いとった。少量しか注文が来ないから、コストが高うなる。コストが高うなるから、さらに割高に見える。そういう悪循環の中で、過去に防衛産業から撤退した企業が100社を超えると言われとる。
マリコ:100社が撤退!それは武器を作れる企業が日本からどんどん消えてるっちゅうことやな。
サチコ:「武器の技術を持つ会社が潰れたり他の業界に移ったりすることで、いざ有事になった時に国産の武器が作れなくなる」という懸念が現実になりかけとった。
マリコ:「武器を輸出禁止にした結果、武器を作る産業が消えた」っちゅうことか。これは皮肉な話やな。「戦争の道具を増やさないようにしたら、戦争の道具を作る力も失った」っちゅう。
サチコ:そういう構造的な問題があんねん。「ウクライナがロシアと戦えてるのは西側の武器支援があるから」という現実を見た時に、「有事になって孤立したら継戦能力がない」という恐怖感が政策担当者にあったんやな。
マリコ:「弾がなくなったら終わり」っちゅうことやな。ウクライナの話は前も出てきたけど、その教訓がここにも反映されとるんやな。
サチコ:その通りや。三つ目の動機は「同盟国との相互運用性の強化」。同じ装備を使っている国の間では、互いに補給し合えたり、同じ戦術を取れたりする。日本だけが違う装備を使ってたら、有事に連携が難しくなる。
マリコ:「クラスで遠足に行くのに、自分だけ違う地図を持ってたら道中でバラバラになる」みたいな話やな。
サチコ:まあまあええ例えやな。「共通の装備を使う同志国のネットワーク」に日本が加わることで、抑止力全体が高まるという考え方や。
マリコ:ほな、今日の漫才でもう一つのビッグニュースをやらんとあかんな。4月21日の政策転換から3日前の4月18日に、日本とオーストラリアの間で歴史的な契約があったんやろ。
サチコ:そうや!4月18日、メルボルンで小泉進次郎防衛相とオーストラリアのマールズ副首相兼国防相が署名した、「もがみ型護衛艦の輸出契約」や。
マリコ:もがみ型!護衛艦や!しかも小泉進次郎氏が関わっとるのか。
サチコ:そうや。しかも署名の場所が、メルボルンに寄港中の海上自衛隊「くまの」という護衛艦の艦上やった。
マリコ:軍艦の上で条約に署名したんか!「どこで署名しますか?」「軍艦の甲板でいかがでしょう」という。演出が大げさすぎる!これは映画のワンシーンやんか!
サチコ:外交の演出としては実際に映える場面やったな。内容はな、オーストラリア海軍の次期フリゲート艦として「もがみ型護衛艦の能力向上型」を11隻供給するという契約やねん。
マリコ:11隻!1隻でもすごいのに11隻か。ほな、なんぼかかんねん。
サチコ:最大で今後10年間で2兆2000億円規模の契約や。
マリコ:2兆2000億円!「2兆円の軍艦セール」か!一般人には桁違いすぎてピンとこおへんな。2兆2000億円って……日本全国のコンビニが何年売り続けたら届くんやろ。
サチコ:コンビニの売上で計算せんとき!でもまあ、日本の戦後防衛輸出の歴史上、最大の案件であることは確かや。
マリコ:「戦後最大の武器取引」か。これは凄まじいな。ちなみにもがみ型って、どんな船なんや。
サチコ:全長142メートル、4800トン、速力30ノット超のフリゲート艦や。ステルス性が高くて、レーダーに映りにくい特殊な船体形状をしとる。特徴は「省人化」で、従来の護衛艦に必要な乗員数の半分以下の約90人で動かせる。
マリコ:90人!普通の護衛艦の倍以上の人が要るところを90人でできるんか。AIが自動化したりしてるんか。
サチコ:先進的な統合システムで運航・武器管制を一元化した結果として省人化を実現した。そしてこの「省人化」がオーストラリアに刺さった理由の一つなんや。
マリコ:「省人化が刺さった」ってどういうことや。
サチコ:オーストラリアは今、慢性的な軍の人員不足という社会問題を抱えとる。艦艇を動かす人間がなかなか集まらない状況で、「少人数で運用できる艦」という日本の強みが完璧な回答になったんや。
マリコ:「人が少ないのが問題やから、少人数で動かせる船を作った日本が選ばれた」っちゅうことか。問題解決型のビジネスやな。
サチコ:そう。そしてもう一つの勝因が「相手に合わせた提案」や。ドイツも候補に上がっとったけど、日本は「オーストラリア側の要望に徹底的に寄り添う提案」をした。
マリコ:ドイツと日本が競って、日本が勝ったんやな。ドイツは武器輸出の経験が豊富なはずやのに。
サチコ:そうやねん。ドイツは実績があって、他の国に艦艇を売った経験も豊富や。日本はほぼ初めての大型案件や。それでもオーストラリア側が日本を選んだ理由の一つは、「日豪の安全保障上の戦略的な一致」や。
マリコ:「仲良しやから一緒の装備を使いたい」っちゅうことか。
サチコ:「台頭する中国を念頭に置いて、日本とオーストラリアが同じ艦艇を使うことで、互いにサポートし合える関係を作る」という戦略的な考え方や。オーストラリアは日本を「準同盟国」と位置づけて連携を強めてきとる。
マリコ:「同じ家電を使うと修理の時にパーツを融通し合える」みたいな発想やな。「国際防衛の家電共有コミュニティ」というか。
サチコ:規模と重みが全然違うけど、基本的な発想は似とるな。しかもこの案件のスケジュールが面白くて、最初の3隻は日本の三菱重工の長崎造船所で建造して、残りの8隻はオーストラリアが現地で建造する「ハイブリッド方式」なんや。
マリコ:「最初は日本製、途中からはオーストラリア自家製」っちゅう段階的な移行なんやな。「最初に本物を見せて、次から自分たちで作れるようにする」という職人の弟子入りみたいやな。
サチコ:「技術移転」という言葉があるんやけど、まさにそういうことや。1番艦の引き渡し予定は2029年で、これは防衛輸出の経験がほぼない日本の企業としては「かなり速い」スケジュールとも言われとる。
マリコ:2029年って3年後か。3年で軍艦を作って届けるんか。それは相当なプレッシャーやな。
サチコ:専門家からは「政治的な高揚感だけで語れない現実の課題もある」という指摘もあるで。まずオーストラリア海軍が要求する兵装が日本仕様と違う。オーストラリア版はノルウェー製のミサイルや英語表示のシステムが必要で、実質的に「かなりのカスタマイズ」が必要になっとる。
マリコ:「ほぼそのままで使える」と言ってたのに、「かなり改造が要る」ということか。「写真で見たラーメンと実際に来たラーメンが違う」みたいな話やんか。
サチコ:そこまで極端やないけど、「最初に言ってたよりも変更点が多い」という課題は指摘されとる。三菱重工にとっては、武器輸出そのものも初めてで、アフターサービスや海外営業のノウハウをいちから構築しなあかん。
マリコ:「商品は売れたけど、アフターサービス体制が整ってない」ってことにもなりかねへんな。これはリスクやな。
サチコ:「2兆円の商品を売り、その後の管理・修理・補修部品の供給を10年以上続ける」ということの難しさがある。これが試金石になるとも言われとる。
マリコ:「大商売の一番難しいところはアフターや」って、商売のどの世界も同じやな。「売った後が本番」というのは前のハンガリー選挙の「勝利はゴールではなくスタート」と同じ構造やな。
サチコ:せやねん。「政策転換という勝利の後に、実際の輸出という戦いが始まる」という構造は確かに同じやな。
マリコ:ほな、国内の反応と国際的な反応を聞かせてくれ。日本の中でどんな声が上がっとるんや。
サチコ:まず野党の反応。立憲民主党などは「国会での事前承認を義務化すべきだ」「憲法9条の平和主義と整合しない」と強く批判しとる。平和団体が官邸前でデモをやった。日本弁護士連合会は事前に反対声明を出した。
マリコ:「憲法9条違反」っちゅう言葉が出てくるということやな。
サチコ:9条は「戦力の不保持」と「交戦権の否認」を定めとる。「殺傷能力のある武器を外国に輸出する行為が、戦力を保持しないという精神と矛盾する」という批判は昔からある議論や。
マリコ:「武器を売ることで間接的に戦争に関与する」という考え方なんやな。
サチコ:「武器を売って、その武器が使われれば、日本は戦争に加担したことになるのでは」という倫理的な問いかけでもある。これは今後の「横流しリスク」と合わさって、重大な論点になりうる。
マリコ:「横流し」っちゅうのは何やねん。
サチコ:日本が輸出した武器が、当初の輸出先から「第三国」に転売・移転されることや。「オーストラリアに売ったつもりが、別のルートを通って意図せぬ国に渡る」という事態を指す。
マリコ:「売ったらもう自分の手を離れた」っちゅう話か。難しいな。
サチコ:せやから「輸出後モニタリング」を強化するという制度が今回も盛り込まれとる。輸出した後も「ちゃんとその国だけで使ってるか」を確認し続けるということや。
マリコ:監視するんか。「売った後に追いかけ続ける」というのは、武器輸出ならではの責任やな。普通の商品なら売った後は自由やけど。
サチコ:武器は「転用リスク」があるさかい、普通の商品とは違う管理が必要なんや。ウクライナへの支援で欧米が武器を供与した時も、「その武器がどこに行くか分からない」という懸念が各国に常にあったんやで。
マリコ:前の漫才でウクライナ支援の話が出てきたな。「900億ユーロの融資がオルバーンさんの反対で止まってた」という話や。あの問題と今回の日本の武器輸出は、「ウクライナ危機が世界の安全保障に与えた影響」というテーマで繋がってるな。
サチコ:その通りや。今回の政策転換の背景にも「ウクライナの教訓」がある。
マリコ:ほな、国際的な反応はどうやったん?
サチコ:中国外務省は4月21日の会見で即日「深刻な懸念を表明する」と批判した。「新型軍国主義」「再軍事化」という言葉を使った。
マリコ:「新型軍国主義」!これはキツい言葉やな。
サチコ:韓国政府も「平和憲法の堅持を」という声明を出した。
マリコ:中国と韓国が反対したんやな。一方で支持してる国は?
サチコ:アメリカ、イギリス、オーストラリアは概ね支持か肯定的な立場。インド、フィリピン、インドネシアなど東南アジアの同志国も歓迎の意を示しとる。特にフィリピンとインドネシアには、防衛相が大型連休中に訪問して装備品輸出についてアピールする計画が進んでいると報じられとる。
マリコ:「売り込みに回る」っちゅうことか。「武器のセールスマンになった防衛相」という、日本ではあまり見慣れない光景やな。
サチコ:「トップセールス」というのが今や防衛外交の一部になっとる。防衛大臣が自国の装備品を外国に売り込む姿は、欧米や韓国では普通の光景やけど、日本では初めての本格的な展開や。
マリコ:「普通の国への転換」を高市首相が掲げてるということは、「防衛相がセールスマンとして飛び回るのが普通の国」ということやな。
サチコ:まさに高市首相の言葉の一つが「普通の国」やねん。「他の主要国と同じように外交・安保のツールとして自国製武器を活用する国になる」という方向性や。
マリコ:「普通の国」という言葉は、賛成派からすれば「理想」やけど、反対派からすれば「失うものがある」という言葉やな。
サチコ:そこが今日の一番重要なポイントや。「普通の国になること」は何を意味するのか、という問いや。
マリコ:ふんふん。
サチコ:「普通の国」に近い欧米の主要国は、すでに武器輸出をやっとる。フランス、ドイツ、アメリカ、イギリス、スウェーデン……みんな防衛産業があって、外国に武器を売って、それが外交の手段にもなっとる。
マリコ:「それが当たり前だ」という現実があるわけやな。
サチコ:一方で日本は長年「平和国家」というブランドを持ってきた。「武器を売らない国」「戦争に加担しない国」というイメージが、特にアジアの近隣諸国に対する外交的な信頼の一部になっとった。
マリコ:「信頼は武器を持たないことから来てた」ということか。
サチコ:これが「平和国家の役割」という考え方や。「軍事的に中立で穏やかな国」という立場が、中国・韓国・東南アジア諸国との関係において、一定の信頼の基盤になっとった。
マリコ:それを今回の転換で失うかもしれない、っちゅうことか。
サチコ:「失う」かどうかは分からへんけど、「変わる」のは確かや。アジアにおける日本のポジションが「平和的な経済大国」から「防衛面でも積極的に関与する国」に移行していく、ということやな。
マリコ:これは「ハンガリーの選挙でオルバーンが負けて、ヨーロッパの右派ポピュリズムが可逆であることが示された」という話とは逆の動きやな。あちらは「権威主義的な路線が止まった」話やけど、日本のこれは「軍事的に積極化する路線に入った」という話で、方向性が違う。
サチコ:その比較は面白い視点やな。欧州では「強権リーダーの後退」が起きて、日本では「平和国家の路線転換」が起きた。同じ週に同じ地球で起きとる変化が、方向性は全然違う。
マリコ:「世界は一方向に動いてない」ということやな。「民主化」も「軍拡化」も「脱権威主義」も、それぞれ違う場所で同時に進んどる。
サチコ:「複数の流れが同時に走っとる」というのが今の世界の実態やな。それを「一つの大きな流れ」と捉えるのは間違いや。
マリコ:ほな、投資の観点からも聞かせてくれ。前回の漫才で株の話をしたばかりやし、防衛産業の株はどうなんや。
サチコ:三菱重工、川崎重工、IHIといった防衛関連企業の株は中長期的にプラス材料とみられとる。三菱重工はオーストラリアとの契約で、株価押し上げ効果が既に出とる。
マリコ:前の漫才の「日経平均を押し上げた4社」の話と同じ流れやな。「特定の分野のニュースが株価を動かす」という。
サチコ:ただし地政学リスクによるボラティリティが高い。「有事が起きれば防衛株は上がるが、停戦になれば下がる」という側面もある。これも前の漫才のTACOと繋がる話やな。「トランプがイランと停戦したらエネルギー株が下がるが、戦争再燃すれば跳ね上がる」と同じ構造で、「平和の方向に動いたら儲からない」という株式市場の矛盾が防衛株にはある。
マリコ:「防衛株を持つ人にとっては、平和よりも緊張の方が嬉しい」という不健全な動機が生まれるわけか。これは怖い話やな。
サチコ:「戦争で儲かる投資家」というのが存在してしまう現実が、資本主義の倫理的な問題として昔から指摘されとる。
マリコ:「死の商人」という言葉があったな。武器を作って売ることで儲ける人間のことを指す言葉や。
サチコ:その言葉が今回の政策転換への批判にも使われとる。「日本が死の商人になっていいのか」という問いかけや。
マリコ:難しい問いやな。「抑止力のための武器輸出」と「商売のための武器輸出」の境界線はどこにあるんやろ。
サチコ:そこが今後日本が問い続けなければいけない問いや。「平和のために武器を輸出する」という論理は、条件次第では成立するけど、「その条件を誰が保証するのか」という問題が残る。
マリコ:「核の抑止力」と同じ論理やな。「核があるから使わない」「使わないために持つ」という、「手段と目的の倒置」が起きやすい分野や。
サチコ:まさにそういうこと。「武器があるから戦争が起きにくい」という抑止論と、「武器があるから戦争が起きやすくなる」という拡大論の間で、答えは一つではない。
マリコ:「希望と警戒を同時に持つ」という、この漫才シリーズを貫くテーマが、ここでも出てくるな。
サチコ:そうやな。「防衛産業を強化して同志国との連携を深めることには希望がある」、同時に「横流しリスク・地域軍拡・民主的なプロセスの欠如には警戒が必要」という両方を持ち続けることが、今の市民に求められる。
マリコ:「どちらか一方に振り切ったらだいたい間違える」ということやな。「武器輸出万歳」でも「武器輸出絶対悪」でもなく、「中身と条件を精査し続ける」という姿勢か。
サチコ:そういうこと。ほなそろそろまとめてくれるか。
マリコ:よっしゃいくで!今日の核心は三つや。一つ目。2026年4月21日、高市内閣は「防衛装備移転三原則」の運用指針を改定し、「5類型」(救難・輸送・警戒・監視・掃海)を撤廃した。これにより、戦闘機・護衛艦・ミサイルなど殺傷能力のある武器の輸出が「原則可能」になった。1967年の最初の禁止令から59年、実質的な全面禁輸を敷いた1976年から50年という、戦後日本の安全保障政策史上最大の転換や。輸出先は防衛装備品協定を結ぶ17カ国に限定され、紛争当事国への輸出は原則禁止だが「特段の事情」で例外審査が可能という「条件付き原則解禁」という構造になっとる。
サチコ:完璧や。
マリコ:二つ目。政策転換の3日前、4月18日にはオーストラリアとの間でもがみ型護衛艦11隻・最大2兆2000億円規模という戦後最大の防衛輸出契約が成立した。勝因は「省人化技術」がオーストラリアの人員不足問題に合致したことと、台頭する中国を念頭にした日豪の戦略的利益の一致や。ただし三菱重工の輸出経験不足、カスタマイズの複雑さ、アフターサービス体制の構築など「勝ってからが本番」の課題も山積しとる。
サチコ:その通りや。三つ目は?
マリコ:三つ目。この政策転換には「希望と警戒の両面」がある。希望の側には、防衛産業の存続・強化、同志国との相互運用性向上、抑止力の向上がある。警戒の側には、武器の横流しリスク、中国・韓国など近隣国の反発と地域軍拡の連鎖、NSC4人で決める国会不関与という民主的プロセスの問題、そして「平和国家」というブランドの変質がある。「普通の国になること」が日本にとっての前進なのか、失うものが大きすぎる転換なのかは、今後の運用の中身が決める。「原則と例外の間」にどう魂を込めるかが問われ続ける。
サチコ:見事なまとめや。全部入っとるな。
マリコ:でもサチコ、一個だけ最後に聞いてええか。
サチコ:何や。
マリコ:今回の話で「もがみ」という名前の護衛艦が主役で出てきたやんか。
サチコ:うん。最上川から来た名前や。山形県の川やな。
マリコ:「最上川」!松尾芭蕉が奥の細道で詠んだやつか。「五月雨をあつめて早し最上川」というやつやな。
サチコ:その通りや。よう知ってるな。
マリコ:日本の護衛艦は全国の川や山から名前をとるんやろ。「もがみ」がオーストラリアで戦うことになったら、山形県の最上川と縁もゆかりもない話やんか。
サチコ:縁はあるで!「最上川の名を背負って太平洋を守る」という。
マリコ:でも現地のオーストラリア人は「なんでこの軍艦の名前が最上川なんや」ってなるやろ。「MOGAMI」という名の艦が来たら「モガミって何や」「日本の川や」「川の名前の軍艦が来たんか」ってなるやろ。
サチコ:それはそういう文化の違いがあるな。イギリスも「HMS エンタープライズ」とか「HMS デアリング」とか英雄的な名前をつけることが多い。「HMS 最上川」は確かに見慣れないかもしれへん。
マリコ:しかもオーストラリアに売るためにカスタマイズした艦には、オーストラリア海軍のシンボルの赤いカンガルーのマークを描くらしいな。
サチコ:そういう情報もある。「もがみ型に赤いカンガルーのマーク」という日豪融合の象徴やな。
マリコ:「最上川を泳ぐカンガルー」の船か!日本とオーストラリアの合作アートやんか!松尾芭蕉が見たら「これは奥の細道のどこにも書いてないことが起きとる」とびっくりするわ。
サチコ:芭蕉の時代に護衛艦はないし、カンガルーもおらん!その時代に全部詰め込まんでくれ!
マリコ:でも「五月雨をあつめて早し最上川」の精神で、インド太平洋の安全保障の雨をあつめて、太平洋を力強く走る艦隊を作るというのは、案外詩的なビジョンやないか。
サチコ:詩的すぎて現実の重さが消えてる!「五月雨と護衛艦と安全保障」が俳句に圧縮されたら大事なことが全部飛ぶわ!
マリコ:そうやな。17文字で防衛政策は語れへんかったか。
サチコ:当たり前や!
マリコ:ということで今日のまとめの一言は「五月雨をあつめて重し、安全保障」。
サチコ:俳句のパロディで締めるな!「重し」は「早し」の改変か!しかも全然韻が合うてへん!もうええわ!
マリコ・サチコ:どうもありがとうございましたー!




