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俺は女神の中の人  作者: 千佳のふりかけ
第三章『異端審問官になるぞ編』
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70話『多機能痴女服の恩恵』

「はぁ。ったく、まじ有り得ねー。ジュエルの奴、加減ってもんを知らねえのかよ。当たり前のように体罰行使してきやがって」



 ズズズーッと、トロピカルな異世界ジュースをストローで啜り飲み一息ついてから愚痴をこぼす。


 侃々諤々の大論争と大喧嘩をした結果、何故かジュエルから自由行動を言い渡された俺とメリーは久しぶりにシドンの街から出て、一つ隣の街との中間地点にある飲食店で久々のガチフリータイムを満喫していた。


 メリーは俺の座っているビーチチェアみたいな折りたたみ式の椅子の横にビーチベッドのような寝そべれる式の物を展開し、そこに寝そべってフレイお手製のマッサージ機に背中のもみほぐしをさせている。


 いやはや、どこを見渡しても海なんて欠片も見えない山間部なのになんという南国気分だろう。

 上着を脱いで紐水着みたいな下着しか着ていない俺と、マッサージの為に邪魔なパーカーを脱ぎ捨てておっぱい丸出しで寝そべるメリーの姿で余計にここが海の浜辺のような錯覚を起こしてしまう。

 寒い地域なんだけどねぇ、この辺。昼間の陽光と風避けのおかげでポカポカですわ。



「人間ってみんな怒ったラあんな風じゃナいのか? 痛いし嫌だガ、ワタシはそんなもんダと割り切っていルぞ」


「あれが人間社会におけるお説教のベーシックだって考えると将来似たような暴力上司になるからやめとけ。どこもかしこも体罰が横行してたらたまったもんじゃねえよ。引きこもり人口大爆発するだろ」


「セーレだっテ髪引っ張ったり殴ったリしてくるじゃん」


「俺のはちゃんと痛がらせるつもりでやってねぇよ。普通に反撃してくるんだから加減してんの分かってんだろ。ジュエルのはやばいじゃん。俺、髪引っ張られて体持ち上げられたぞ」


「すごかっタねぇ〜。かなり余裕ナくなってタね。不死身ノくせに」


「不死身でも痛いもんは痛いし、人と痛覚変わんないんだから余裕もそりゃ無くなるよ。お前だって鼻摘まれて上唇とんがってたじゃん。血の味云々言ってたけど、唇の裏の筋みたいなやつ切れたんじゃねえの?」


「舐めてたラくっつイタ」


「くっつくかぁ。地味に蛆虫成分以外にも妙な体質してるよなお前。お前ってか、ガチメリーの方? 謎に身体丈夫だし、ちょっと治りが速いし」


「身体が丈夫なのは元かラっぽいけど、治りが速くナッたのはワタシの虫が魔力を補ってルからだナ」


「便利だこと。戦争中の負傷兵も蛆虫を傷に潜らせて回復促してたって言うしなぁ。見た目がキモいだけで案外有用だよな」


「蛆虫ジャないから。蛆虫連呼すルな馬鹿」


「はいはい。ムッとするのは分かるけど立ち上がるなよ。折角穏やかな空気を味わいながらゆったりしてるんだ、おっぱいバルーンされたら空気感変わっちゃうだろ」


「む……電マがワタシに仰向けにナれと意思表示してイる。こレハやむなし」


「それはなに? 俺へのサービス精神なの? ごめんけどレウコ寄生体だという前提を加味しても全然興奮できるよ当方。今のお前の見た目、目以外は普通の人間と変わらんし。ほんとごめんなんだけど」


「言いながラ本当にジロジロ見てクるじゃん。人間の雌っていうノは同性相手にモ発情するノ?」


「する個体としない個体が居るだろうな」


「子孫作れナいのに? 変なの〜」



 まあ俺はメリーが想像するような、いわゆる同性愛者的なものでは無いのだけれどね。ガワが幼女なだけで中身は男なので、真っ当にあられもない女体を見て興奮してるだけなんすわ。ノーマルノーマル。



「つぅかよ。いい加減交代しろよお前。それ俺が貰ったやつっつっただろ。なにあたかも自分の物みたいに120分コース満喫してんだコラ」


「この体はやケにコリや疲労が溜まりまくっテルから徹底的な施術が必要。セーレはまだ子供デしょ。むしろマッサージなんて必要性皆無でしょ」


「子供だろうがなんだろうが疲労は蓄積するもんなんだよ。徹底的な施術って、別にお前のおっぱいそこまででかいわけでもないだろ。普乳の分際で何がコリまくってるだよ、馬鹿も休み休み言えよな」


「なんで巨乳ナらそれが当たり前ミタいな話になってルんだ。乳の大小関係ナイでしょ」


「聞く所によると、乳が重いと自然と体が前傾姿勢になって色んな部位が凝り固まるそうだ。お前はその乳に重みを感じるのか?」


「ソりゃ感じるは感じルよ。こんなんでも動くと揺れるシ。ペッタンコなセーレには分からなイト思うけど」


「ペッタンコではねぇよ。潰した肉まんくらいの膨らみは存在するわ。舐めんな」



 マッサージ機に胸を揉まれているメリーがジトーっとした目で俺の胸部を観察する。



「微動だにしなサソうだけど」


「目ぇ節穴か。目が本体なんだろしっかりしろ。ほれっ」



 頭の後ろに腕を組み、胸部を強調するような姿勢を取ってから胴体を突き出すように動かしてやる。それ見た事か、ぷるんってしたぞ今ぷるんって。無乳じゃないんだって。



「微動」


「殺すぞ」


「寄せて上げル方が分かりやスイんじゃないの? ほら、寄セてみなよ」


「寄せれる乳に見えんのかてめぇ」


「谷間は出来なさそウだね」



 こいつ。人の体乗り換えていくタイプの生物のくせしてやけに今のプロポーションを自慢してくるな。操縦する肉体次第だろ。お前の努力は一ミリも反映されてねぇっつんだよカス。なんか悔しいな。



「まあサ、そんな女としての魅力の有無を語り合うナんて一方的に勝敗が明確な不毛極まりないなイ言い合いはよして、吸血鬼ノ話をしようヨ。こうサボってるダけだとジュエルに悪いシ」


「おーおー大きく出たなお前。虫ケラ風情が女の中に入ったくらいでメス堕ちしやがって。吸血鬼の話だァ? なんで休み貰ってんのに仕事の話しなきゃなんねぇんだよ」


「休ミをもらったわけじゃないデしょ。この任務ガ終わるマでワタシ達に休みなんて訪れないんジャないの?」


「どんなブラック企業だよ。24時間みっちり働かされてそれを数日続けさせられるとか労基も真っ青な業務体系だな。ほんでタイムカード式じゃなくて歩合制で、研修にぶち込まれてる段階だから報酬も期待できないと。終わりだよもう」



 改めて考えると、現代人にはなんとも耐え難い状況だな。稼げるには稼げるけど、まじそれだけじゃこんな仕事続けてらんないよ。

 だから異端審問官って悪魔やらなんやらに憎悪燃やしまくってるパキッた目ん玉持ちが多いんだな。憎悪を利用したやりがい搾取というわけですか。



「吸血鬼なぁ〜。騎士団長さん曰く人と見た目はほぼ変わらないみたいだし、それ以外特徴らしい特徴もないしでまじお祭り騒ぎ作戦が決行されるまでこっちに出来ることなんて何もないと思うんだけどな。何を語り合いたいんだよ」


「今は待ちの状況だけドいずれかは衝突するのヲ避けられナイんでしょ? 殺し合いに際しテの対策くらいハ考えておいテ損はないと思うんだケど」


「それは俺相手にじゃなく他のメンバーと詰めるべき議題だろ。戦いの素人と意見交換しても、ブレイキングダウン見て『俺ならこうしてた』って妄想語る中高生みたいな会話にしかならねぇよ」


「この身体を上手く扱えナいワタシはまだシも、セーレは戦闘経験豊富な方デしょ。現に別の肉体に入っていたワタシ相手にかなり優位に立ち回ってタし」


「力技だろそんなん。相手がどんな奴だろうが鉄の塊でぶっ叩きまくればいつかは潰れて死ぬんだよ。技量もへったくれもない」


「斧で攻撃する他にモ色々やってキたじゃん。使える能力は豊富じゃん。じゃあどれヲどういう風に使って立ち回るかッテ考えるのは無駄じゃなくナい?」


「ノリだろーそんなの」


「ノリって。事前に能力ノ把握をするのは大事ダと思うけど」


「知らん知らん。なんせこっちは不死身だからな、ぶっ殺されてる内にブンブン思考回路回転させりゃどんな嫌がらせしてやるかなんて湯水のようにアイデアが湧き出るから用意なんかいらねーよ。むしろあれこれ考えながら戦う方が動きがぎこちなくなるんじゃないの? 流れに身を任せた方が喧嘩らしくていいじゃん」


「皆の前で不死身を使うノか?」


「急に正鵠ぶち抜いてきたなお前。どうしたその指摘力。ぐう。うん、すん。どうだぐうの音もうんもすんも出たぞざまあみろ」


「何を言ってるのかさっぱり分からナいけど、能力を隠シて立ち回ってル辺り皆の前で不死身の力を使うつもりないんでショ? ってなると、真面目に対策を練った方がいいと思うケど」


「対策っつってもなぁ」



 純血種云々の吸血鬼の生態や能力なんて魔獣図鑑にも載ってないし、詳しい人も周りにいないしで対策の講じようがないだろ。

 変身能力があったり魔眼があったりって話は聞いたがそれがどう戦いに作用するかも分からんし。今までのヒットアンドアウェイ戦法が通じないチートみたいな能力持ってる人らだった場合考えるだけ無駄だよなぁ。



「面白そうな話してるねーお姉ちゃんたち!」


「え?」「ん?」



 ダラダラとメリーの雑談に付き合っていたら扉がガラッと開いて俺の肉体より更に幼そうな見た目の少年が現れた。おかしいな、個室貸し切りだったはずなんだけどこんな普通に扉開けられちゃうんだ。



「吸血鬼ってみんなが噂してる怖いオバケの事だよね! 僕も混ぜてー!」


「おっとっとっとっとっとっと!!!?!?」



 少年は無邪気な声でこちらに駆け寄り俺の身体にぎゅっとしがみついてきた。当方、マイクロビキニである。ほぼ上裸である。



「すごいな、小学生入りたてくらいの歳だもんなそりゃこんな格好した女に反応も示さないはずだわ。でも良くないな、ほぼ上裸の知らないお姉さんに抱きつくのは良くないぞー少年」


「ほぼ歳変わらナいじゃん」


「頭身一個違うわボケ。ほんでお前は体隠せ全裸痴女。早よパーカー着ろ捕まんぞ」



 男児が現れても依然として裸一貫のまま仁王立ちするメリーにツッコミを入れる。こいつ正気か? 人の価値観を理解出来てないってのは分かるが人として生きるなら常識ってもんを身に付けてくれよ。



「……ん? あれっ」



 ふと、少年が何かに気付いた様な素振りを見せて不意に俺の身体に顔面を近付け始めた。


 なんだなんだ、こっちも恥部は隠せているとはいえほとんど裸みたいなもんだぞ。アレクトラボディがこの少年とあまり年の差ない感じだからセーフとかそんな理屈はないぞ? 俺もアウトだぞ。どうしようなこれ。



「お姉ちゃんたち、なんだか懐かしい匂いがする」


「キショいなあ。急にキショいこと言い始めたなガキンチョ、どうした? とりあえず人の乳に顔面近付けるのやめようか」



 言っても聞かないので力ずくで少年を引き剥がす。すると少年は不思議そうな顔で「あれー?」と言い出した。なんだこいつ。


 ……ちょっと顔がドラクレアさんに似てるな。髪の色も同じ灰色か銀色が入り交じったような薄紫色の髪をしてる。血縁者? 姉が美人なせいで年若くしてマセてるタイプのガキンチョか?



「んー……お姉ちゃん、少し変だね」


「なんだとコラ。私の何が変なのか言ってみろ。ガキにちんちくりん呼ばわりされる謂れはないぞ」


「そっちのお姉ちゃん」


「ナに?」



 無視ですか。びっくり仰天なキショ発言したくせに俺への執着薄いなこいつ。やっぱり胸はでかい方がいいってか?

 違うか。比較対象が幼児体型な俺だから何の反応もしないだけか。何故か悔しいな。



「こっち来て」


「分かッタ」


「分かるな。服を着ろっつってんだよ変質者。お前その格好で子供に近づくのは……メリー? メリー!?」



 メリーは俺の静止を一切聞かずとろんとした目つきで少年に近付く。そしておもむろに両腕を開き……全裸のまんま少年を抱きしめたあああぁぁぁぁーーーっ!!!?!?!?



「ダメダメダメ何やってるの君それは本当にダメッ!!! 焦る焦る! その手の趣味の方だったの!? だとしても楽しんでいいのは二次元までで三次元にタッチは絶対ダメだよ!? ましてや抱擁はだいぶまずいなぁ!!!?!?」


「? ナに言ってるのセーレ。好ましく思ウ個体ニ求愛行動するノは生物として正シい事でしょ? ワタシは何も間違えテない」


「生物的には正しいのかもしれないけど人間的に年齢のタブーは破っちゃダメ界隈の割と上位に食い込むんだよね!? よし分かったお前の倫理コードに合わせて説得試みるわ! 生殖能力がまだ未発達な個体に求愛行動する生物は居ないよね!? その求愛行動はもしかしたら性的虐待と呼べる物に変容するのかもしれない! メスカマキリがコカマキリを貪るのは何の生産性もないのかもしれない!!!」


「生殖能力が伴うまで養育すレば良いだけの話でショ? 何もおかしなことはナい。番とシテ選んだなら子を成せるよウになるまで共に居るべキ」


「際どい思想をお持ちですね!? 好みのショタを捕獲して監禁ですか! あぁ世紀の性犯罪者だ世に出回れば一躍有名人だぞーっておいおいおいおいっ!!!!」



 メリーに抱きしめられている少年がおもむろに口を開き、キラッとした八重歯が目の前の乳房に向かい近付いていくのが見えた。良くない。良くなさすぎる。知り合って数秒しか経ってない子供に乳をしゃぶらせる女性は擁護出来ない!!!



「ストップじゃバカタレ!!!」


「ぬぎゃっ!?!?」



 歯が皮膚に若干触れた所で俺の拳がメリーの顔面にクリーンヒットする。

 あっぶねええぇぇ〜〜!! 危うく同僚から度し難い性犯罪者が現れてしまうところだった! いやもう手遅れな気がするが! でもガチで超えちゃいけない一線の、さらに向こう側にある一線だけは死守出来た!! ナイス俺の反射神経!!



「何スるんだセーレ! いきなり顔を殴るなンてどうかしてる!!」


「どうかしてんのはお前のそのスッカラカンな脳みそな! ちゃんと体内に虫敷き詰めてんのか脳みその機能停止してんぞてめぇ!! こんなガキに乳吸わせるっておまっ、やっっっばいだろどう考えても!!?!?」


「そうシたいならそうさせルべき! 愛すル番の求愛行動を拒絶するノは生物的に理の通らなイ矛盾した行動でショ!!!」


「だーーーっ!!! 生物生物うっせえ倫理の基準をちっとは人間に合わせやがれ変態蛆虫!!! 人間として穏やかな余生を過ごしたいんじゃなかったのかよ! 今の時点でも十分際どいのにそれ以上言ったらお前の半生は塀の中!!! 後で道徳の授業確定だなこりゃ!!!!」



 困惑した顔で俺に抗議してくるメリーにもう一度震える拳を見せて黙らせる。口を開けば生物的にとかそういう話は一切関係ないの! 人間は! ほぼ大人として成長しきった個体は子供に手を出したらダメなの!!! この世界は俺の居た世界よりそこら辺の価値観は大分前時代的ではあるものの、6歳そこらのガキに手を出すのは流石にこの世界でもアウトなの!!! ヒヤヒヤさせんなマジで!!


 ……てか、なんかメリーの瞳が薄ピンク色に変化してないか? 眼球を構成する虫がピンク色に発光してる?

 なんだこれ、発情してますの合図か? まじでこのガキンチョがどストライクなのかよ、終わってんなこいつ。



「とりあえず服着ろ服! いつまでも子供の前で素っ裸になってんじゃねえ変態女!」



 ビーチベッドに掛けてあったパーカーを投げつけ、俺もいそいそとジャケットを羽織りボタンを留める。



「……あレ?」



 俺にド叱られてパーカーを着用した瞬間、メリーの瞳が元の螺旋模様に戻った。と同時に、彼女は急に顔を紅潮させてあわあわと唇を震わせながら俺を強く睨みつける。



「なっ、ななななナナナナんて事させるんだセーレ!!! ワタシにこんな年端のいかナい少年をあてがっテあんなっ、あ、あんな事をさせルなんて!!!」


「なーに言ってんだお前」


「ワタシに羞恥心がないとデも!? こんなワタシでもそれなリの期間人間に扮して活動してキたからその辺の情緒はっ、本物の人間と比べたら希薄な方だガそれでもない事モない!!! 流石に裸のまま抱きしめさせラれるのは許容できる範疇を超えテる!!! とんダ羞恥拷問だッ!!! 鬼! 悪魔!! 鬼畜!!! 変態!!!!」


「なんで急に錯乱して俺に責任おっかぶせてんのか知らねーけどお前が勝手に発情してつまみ食いしようとしたんじゃねえか。今更になって正気に戻ったか? そりゃ良かった。じゃあ意味分からん他責やめような? それ嘘みたいなもんだろ、嘘つかないんじゃなかったのかお前」


「は、ハ!? ワタシが自分からあんナ事するわけなイだろ馬鹿!!! お前がどうセ変な能力を使っテワタシを操ったんだろ!! そうだって言え!!!」


「言わねえよ!? なにその気持ちよすぎるくらい鮮やかな罪のなすりつけ!? どんだけ自分の醜態を俺のせいにしたいんだお前!! 気持ちは分かるけど全然その内容で罪なすってくるならブチギレるよ!?」


「あの時のワタシはワタシじゃなイ!!!!」


「黙れや変態見苦しいんじゃ!!!!」



 ぎゃいのぎゃいのメリーと言い争いをした後やはり取っ組み合いの喧嘩になる。だが今回は流石に俺が責められる謂れがまじでない。むしろガチ18禁行為に及ぼうとした寸前に阻止したんだから感謝されたいくらいなのに何故かメリーは頑なに自分の性的趣向を認めようとしない。力加減もガチだ、ガチで『こいつやりやがったな!』的な力で襲いかかってくる。


 心臓剛毛すぎない? よくさっきの行為の後にその責任をこっちになすれるなこいつ。普通に縁切りたいレベルでキモいんだけど。



「ピンク髪のお姉ちゃんだけじゃなく、栗色髪のお姉ちゃんも……? なんでだろう、不思議だなぁ」



 俺たちの喧嘩を傍から見ていた少年は、冷静なトーンでなにか観察するような目つきをこちらに向けた後にため息を吐いて歩き出した。



「この街にいる変な人達のお話を聞ける良い機会だと思ったんだけどなぁー。世の中、不思議な人もいるものだね」


「あっ。そういえばさっきの、吸血鬼の話っ」


「あはは。知らなーい。僕はなーんにも分かんない」



 子供の噂話を情報として取り入れるのは信ぴょう性云々どうなのかと思ったが、それでも手がかりに繋がると考え話を聞き出そうとしたら笑い混じりに突っぱねられた。


 少年はまるで何事も無かったかのような軽い足取りでドアの方に近付くと、こちらをちらっと見て「またね。お姉ちゃん達。今度は三人一緒に楽しく遊ぼうね」と捨てセリフを吐いた。


 ……これは有り得るはずもない邪推なのだが、さっきの件があるせいで頭に"3P"という文字が浮かんでしまった。

 邪推の極みすぎる。そんな企てを含みながら物話す年齢じゃないだろさっきの子。こえー、自分の思考回路ましでこえー勘弁してくれまじでー!!



「おのれセーレ!! 今回のハ度を越してるゾー!!! 許しておけナい、ワタシに妙な性的趣向を植え付けテ辱めよウとするだなんてっ!!! 素直に報復ヲ受け入れローーー!!!!」


「まだ罪をなすろうとしてんのお前!? どんだけ自分の罪を認めたくないんだよ、そういう常識が備わってるなら最初からあんな事するな馬鹿!!!」


「ムギーーーッ!!! ワタシは変態じゃナーーーい!!!!」



 未だ言いがかりをやめないメリーが俺に飛びかかってきたので仕方なく回転蹴りを見舞う。踵が見事に脇腹にぶっ刺さり、メリーは床でのたうち回った後やっと落ち着いてくれた。やれやれ、俺は短気だと常日頃から言っておろう。



「不服だ。ナんで辱めを受ケたワタシがボコボコにされなくちゃなラない。セーレの悪辣さモここまで来ると付き合いきレない。本物の悪魔ダろ」


「今度は膝蹴りするぞ。鼻っ面に」


「理不尽だ!!」


「どの口が言ってる? その感想抱くべきは間違いなく俺だよ? 悪魔には筋を通すって概念存在しないの???」



 なんかここでダラダラしていたらまた口喧嘩が加速していきそうなので、十分休息も取れたということで俺たちは会計を済ませ店を後にした。



「はぁ……散々だ……裸で子供を抱きしめさせラれるし、危うく乳に吸い付かれル所だった。その上一方的にボコボコにされタし、今日のワタシはとことんツイてない。不幸だ、不幸のどん底ダ……」


「あのな。普通全裸姿を人に見られたら慌てて服を着るもんなんだよ。その時点で価値観が人間とズレてっからまじで調整し直せお前」


「そうサせなかったのハセーレでしょ! 変な能力使ってさア!!」


「メリー。メリー、メリー。それ以上俺をイラつかせんなよ? 仲間殺しの言い訳を考えるのに頭使わせんな?」


「グギギ……!」



 グギギじゃねえわボケ。なんで店を出てからも一辺倒で俺に責任の所在を擦ろうとし続けてるんだよ。しつこいが一周まわってきてんだよ。俺がニワトリだったらトサカで逆立ち出来るくらいにはムカつかされてるんですけど。久々に誰かに対して殺意湧いたわ。



「いってぇな〜〜〜? どこ見て歩いてんだてめぇ〜〜〜」


「あ?」「ん? ナんだろ、喧嘩かな?」



 メリーの恨めしげな視線を向けられて苛立ちを募らせながらシドンに帰っている最中、人の行き交う歩道の先から聞き覚えのある声が響いてきた。


 立ち止まっている人集りを分けて輪の中心まで行くと、ドラクレアさんにイチャモンを付けていたゴロツキ連中と全く同じメンツが誰かに喧嘩を売っている光景が目に入った。


 やっぱり骨折って手足を蛇腹にしておくんだったな。何もせず兵士に突き出したせいで他の誰かが被害に遭ってしまっている。

 ……てか、この街の兵士は優秀じゃなかったのかよ。やけにあっさりゴロツキ連中解放してるじゃん。一週間ぐらい牢屋にぶち込んどけよあんな奴ら。



「丁度いいサンドバッグが落ちてたわ。よし、話は分からんが半殺しにしてくる」


「介入するノ?」


「するだろそりゃ。善良な一般市民が武装した大男数人に難癖つけられてんだぞ」


「善良な一般市民……かどうかハ分からなイけど、多分セーレの出ル幕はないよ」


「はあ? なんで」


「難癖つけられてル相手、めっチャ強いだろうカら」



 なんだそりゃ? 俺は背が低いから角度的に見えないんだよその相手。

 メリーが手出しはいらないとか宣ってきたので、それが臆病者による逃げ腰判断か否かを確かめるために彼女を連れて建物の屋根に登る。



「あれ。あの人」



 屋根に移動し全容を見渡せるようになり、初めて難癖つけられている相手を視認出来るようになって声が漏れた。



「けひゃひゃっ。困ったなぁ? ぶつかった件については謝ったはずなのに、許してもらえないかぁ。なんたる傲慢驕慢傲岸不遜っ! 羨ましいなぁその横暴さ! あ゛あ゛あ゛ああぁぁぁ〜〜〜っひゃひゃっ! けひゃひゃひゃっ! 妬ましい妬ましい、ボクもそんな風になりたいなぁ〜〜〜っ!!!」



 ゴロツキに囲まれていたのは、街を彩るイルミネーションの飾りと思しき物を両手に持った聖堂騎士団第四騎士団長、べリス・アマリリスだった。


 ……まだ祭りのまの字も開催してないってのにすごい浮かれ具合だな。頭の上に多種多様な帽子を乗っけてお菓子の入った袋を三つもぶら下げてる。

 アレに命令されて動いてる第四騎士団の面々、どんな気持ちで日々活動してるんだろうな。ヴルディールさん辺りに今度聞いてみるか……。

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