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俺は女神の中の人  作者: 千佳のふりかけ
第三章『異端審問官になるぞ編』
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65話『便利キャラかと思いきや残念キャラ』

 シドンに居着いて一週間経った。


 吸血鬼を探し出してぶっ殺すという任務は結局まだ遂行しておらず、それどころかシドンの地下街があまりにも膨大すぎるため未だに街の全容も把握し切れていない。


 当初は数日ここに身を置いて吸血鬼をぶっ倒し帰還するという流れになる予定だったが、ジュエルとしても地下にこれだけの空間が広がっているとは予想だにしていなかったらしい。


 終わりの見えない任務だからかジュエルを除く全員が"任務中断"という形で終わらせてもいいんじゃないかという空気を纏わせている。だって、依頼を出したシドンの人らも別に吸血鬼騒動で怯えてる風には見えないし。特に困った様子もなく普通にみんな過ごせているし。


 なんというか、本当にあるのか分からない埋蔵金を探しに来たような気分だ。



「フレイに裸を見られました」


「ぶふっ!?」



 平日の昼下がり。ジュエル班の面子全員で集まり食事を取っていた所に俺は近日あった個人的最大トピックをぶっぱなす。そのトピックの内容にジュエルは含んでいた飲み物を吹き出し、ワルワラさんは食器を落とし、驚いた顔でフレイを見た。



「人聞きの悪い言い方をするな、セーレ三等。あれはあくまで魔力研究の一環として行った学術的な検査に過ぎない」


「お言葉ですが、フレイ。物事には限度というものがあるでしょ?」


「何か問題でも? ワルワラ二等。セーレはアザレアやテストロッサを輩出したあのアイゼントゥール家の人間だぞ。姉二人が加護を持ち、極めて希少な魔力体質を有し魔導界でも多大な貢献を齎している。末女であるセーレにそういった興味を惹かれるのも自然な事だと俺は思うのだが」


「興味を惹かれたからと言ってまだこんな幼い少女を裸にして研究の材料にするのはいかがなのかという話ですよ。魔導師側の考えも分かるけど良識があるのなら行動を起こす前に踏みとどまって一考してほしい。どうするの、これでセーレちゃんがトラウマを抱えたりしたら」


「人間は常に走り続ける生き物だ。故にこうまで発展してきた、その歩みは誰にも止められないのさ。自分自身にも」


「あと数年待ってあげることぐらい出来るでしょうに」


「そうは言うがワルワラ二等。セーレも異端審問官なんだ。もう既に懐胎の儀は済ませているのだろう? 今更裸を見られた程度で」

「フレイ!!!!!」



 おぉ。こわ。ノンデリ極めた発言をしようとしたフレイにワルワラさんが牽制する。この二人、性格相性的にはあまり良くないらしい。初日の時点であまり仲良くしてる所を見かけた所がないし。



「こほん。シスター・セーレ、リオル二等導師に、その、何か良くないことをされたりはしなかっただろうか?」



 対面に座るジュエルがフォークを持つ俺の手に自分の手を重ねながらいつにもない優しい声音を向けてきた。良くないこと。ふむ、そりゃされまくったわな。当たり前に。人体実験のモルモットにされたもん俺。



「股に変な棒突っ込まれました」


「フレイ!!!!」「二等導師!!!!」


「ただの魔力計器だ、注射型を断ったから仕方なくだよ。筋肉の動き、主に締め付けから魔力と体質の適合率を測るのに使用した。なに、粘膜接触を前提に安全第一で設計された魔術具だから怪我の心配はない」


「「そういう問題じゃないでしょ!!!?!?」」


「胸とかふくらはぎとかベタベタ触られましたし。それは丹念に。こっち裸なのに」


「「フレイ!!!!!!!」」


「魔力供給の仕組みはお前らも理解しているだろう? 生成される魔力は心臓のポンプの働きで全身に循環する。そして膝下から折り返してまた全身を巡る、血液と同様の働きだ。反応を見るのに1番適している」


「歳を考えろ歳を!!! この子はまだ子どもなんだぞ、いい歳した大人の男にそんな事されたら心の傷になるだろうが!!!」


「そうだよ!!! 馬鹿じゃないの本当に!? この研究バカ!!!!」


「そうは言ってもセーレ本人も嫌がってはなかったぞ」


「幻術をかけられてましたからね」


「「フレイ!!!!!!!!!!!!!」」


「セーレよ、セーレ三等審問官。これ以上余計な事を言わないでくれ、俺の立場がどんどん危うくなる」


「自業自得でハ?」



 ずっと食べ物に夢中でがっついていたメリーも加わり、女性陣全員でフレイを責め立てる。良い光景だ。


 本当はそこまでねちっこく触られたり奥深くまでズッポシ突っ込まれたわけでもなく、医者が聴診する時と同じくらいの手触りだったし棒も入口付近までしか入れられてないからさほど大袈裟に騒ぐことでもないんだけどね。一応、された事自体は一応訴えれるレベルだと思うので議題に出したってだけなんですな。



「それとですね〜」


「セーレ三等。これ以上口を開くと俺もお前の秘密を開示せざるを得なくなる」



 げ。ここにきてガチに俺の口を止めに来た。


 まあ、本当は強引にアホエロ人体実験に付き合わされたわけじゃなく、俺の能力全般を周りにバラされたくなかったから渋々従ったわけだしな。

 俺も了承した上で受けた検査だったのに一方的に梯子を外すのはおかしな話だと、フレイの目がそう訴えてる。これ以上突つくのはよくないな。黙っておこう。



「弱みを握っテ少女ヲ黙らせる、でスか。最低ですね、フレイさン」



 まだら色の瞳がフレイに冷ややかな視線を送る。



「研究者を盾にして年若い少女に性的暴行。……我々は修道女であるという事をお忘れかな、リオル二等導師」



 凛とした瞳がフレイに底冷えするような視線を向けながら短剣を取り出す。店内で刃物を取り出し人に刃を差し向けるのはあんまり良くないぞ〜。てか修道女に刃物のセットは別に一般的じゃないでしょ。



「前々から気に入らなかったけど、ついに堕ちる所まで堕ちたようね。フレイ」



 艶めかしく輝く褐色の激エロ美女が魔力の迸る指先をフレイに向ける。どんな魔法を使うのかは知らないけど店内でぶっぱなすのはやめた方がいいと思うな。直撃しなくても流れ弾で物壊れちゃいそうだし。



「どうするセーレ三等、お前のせいで今際の際に立たされてるぞ俺。手首の刻印をどうにかしたいと頼ってきたのはお前からだったろ、なんとかしてくれ」


「言いましたけど、実際裸に剥かれる意味は分かんなかったですし。あとやっぱり股に物突っ込むのはライン超えでしょ」


「じゃあ大人しく注射型の魔術具を受け入れればよかっただろ」


「太かったもん。それにあれ使い捨てじゃないでしょ。そんなもん誰が使う???」


「滅菌術ぐらい使えると言ったろうが。もうどうすればよかったんだ俺は」


「幼女に鼻息荒くして迫らなければこんなことになってなかったのでは?」


「お前に迫ったわけじゃないんだよ。魔力が平凡だったらお前なんか微塵も興味無いわ」


「うわああああぁぁぁぁんっ!!!!」


「「「……」」」


「こういう事例が起きるから異端審問官と仕事をするのは嫌なんだ。周りに女しかいない集団に男一人なんて勝ち目ないだろ……」



 なにやら羨ましい事をやれやれ風味にフレイが口走る。嫌味か貴様、ハーレム状態を堪能しといて生意気な。よし、更に大声張り上げて泣き真似してやる!






「げふっ」



 一足先に飯を食べ終え、店の外で待っていたら全身煤けたアフロ頭のフレイがふらつきながら出てきた。



「すごーいアフロになってる〜。ワルワラさんの能力ですか? 爆発物の生成でしたよね。お店の人も大迷惑だぁ」


「ジュエルが結界張ってたから問題ないだろ。ジュエルの結界に閉じ込められたせいで死にかけたよ。あいつら正気じゃない」


「よく生きて出られましたね」


「爆発の瞬間に障害物に軟化の術を施し限界まで柔らかくして、膨張する魔力の熱は向きを変えてなんとか凌いだ」



 言ってるフレイの鼻から血が垂れる。

 本来魔力をあまり持たない人間は、短時間の内に連続で魔力操作を行うと血管がブチブチ千切れて出血したり発熱したりするらしい。鼻血出すくらい徹底して殺されかけたんだ、まるで味方とは思えないや。



「他のみんなはどうしたんですか? まだランチ中?」


「睡眠剤で眠らせた。メリー三等は知らん、あの二人が怒り心頭なうちにどこかへ消えた」


「なんじゃそりゃ」


「気の小さい臆病者だからな。先輩二人が怒ってる様子を見て怖くなったんだろう」



 なるほど、言われてみれば確かに。あいつ、近くで喧騒が聞こえたらすぐに物陰に隠れたり背中を丸めて小さくなったりするもんな。


 寄生虫時代、気持ち悪がられてすぐ殺されそうになったトラウマが根付いてるんだろう。知れば知るほどあいつの印象が初対面時の物から遠のいていく。苦労してるんだなぁ。



「にしても睡眠剤って。そんなもん使って眠らせたら余計火に油でしょ。起きた後どうなっても知りませんよ」


「どうしようも無いだろ。あそこまで怒ってる連中、ロクに幻術にもかからんし抵抗しようものなら片腕を持ってかれても不思議じゃない。異端審問官は危険思想の集まりだからな、同胞の仇討ちとか宣って不条理な暴力に訴えるのはいつの時代も変わらん」


「一緒に行動してるのが不思議すぎる評価だ。なんでそんな危険人物に囲まれて仕事してんすかあんた」


「魔導研究には金がいるからな。異端審問官と共に行動し戦闘を任せれば効率よく金が入る。盾としても矛としても上手く機能するしそういう意味では都合いい」


「終わってますね」


「建前を話した方が良かったか? 別にお前、自分の役割に誇りを持ってるタチでもないだろ」


「それはそう」



 俺も単に身寄りなしの孤児から役職持ちにランクアップ出来るからって理由で尼さん生活してるだけだし。成り行きでこのポジションになっちゃっただけで、暴力振るってれば金が入るからって理由で辞めないだけだしフレイの同類みたいなもんか。



「それで? これからどうするんです? 昏睡状態のジュエルとワルワラさんを宿に運ぶのか、それとも放置か」


「放置したらそれこそ殺されるだろ。手伝えよ」


「嫌ですけど」


「その為に待ってたんじゃなかったのかお前」


「まさかフレイが勝ち星を上げて店から出てくるとは思わないじゃないですか。私はボコられて泣きべそかいたあんたが足元に跪いて泣きながら謝ってくるのを楽しみにしてたんです。何ピンピンして戻ってきてんだよやり直せ」


「そこまで嫌われるようなことしたか、俺」


「少なくとも好かれる要素は1個も無いですよね」


「お前から頼んできたんだぞ。お前が俺を頼らなければ裸で寝かせることもしなかった」


「何をするのか先に提示せず話を振ってきたのはあんたの方でしょ。提案するなら詳しい内訳を話さないと」


「常識的に考えろよ。魔導検査を受けるのに服を着たままなんて有り得るか? あぁ、そういう事に関しては全く詳しくないんだっけ。じゃあこう例えようか。服を着せたままどうやって手術する? 布の上から開腹手術なんて行えるか?」


「別に腹を開かれたわけじゃないでしょ」


「医療行為全般で考えろ、基本脱がせるだろ」


「脱がせません。服を着せたまま医療行為できます、鎧を纏ったままでも出来るな。そう答えますよ、私論破されたくないので」


「ちょくちょく鼻につくな、お前のプライドの高さ。じゃあ分かった、俺の言い分が正しかったらお前の勝ちって事にしよう。そのルールを踏まえた上で考えろ。医療行為は基本邪魔なものを取り除いてから行うよな?」


「そんなに私を裸にしたり股に物突っ込んだ行為を肯定したいんです? 必死ですね」


「……」


「ぬぉわっ!?」



 フレイが蹴った小石が俺の足に当たる。その瞬間小石が爆ぜて尻もちをつく。



「急に何するんすか!」


「ほら、あの二人を運ぶぞ。手伝えよ新米」


「いてっ! いててっ! ちょっと!」



 何発もフレイが蹴り飛ばしてきた小石爆弾が俺に当たって爆ぜる。怪我はしない程度の威力だけどこう何度も体にぶつけられると鬱陶しい! 爆風自体はそれなりだから当たる度バランス崩して転びそうになるし!



「分かった分かった手伝うから! それやめてくださいマジで! ちょっと痛いの腹立つ!」


「これまで共に仕事してきた連中から変態扱いされた件についてはどう考える」


「ざまあみろ美人に囲まれて仕事とか贅沢なんじゃボケ痛い痛い痛い痛い!! 正直に答えただけなのに!」


「はあ……女だけの集団生活を送ってきたからか、男嫌いの異端審問官はそれなりの数いる。でもお前はそういうのとも違うんだよな。陰湿な拒絶感はしないが、直接的な分腹が立つ」


「妬ましい奴の不幸を願って何が悪い!」


「悪いだろ。妬ましさなんか知らんわ他人の足を引っ張るなよ。俺は善意でお前の封印を解く術を探してやったんだぞ?」


「何も分からんって言ったじゃんか。脱ぎ損じゃん」


「事前に言ったろ、解けるか分からんって」



 小石を蹴るのをやめたフレイが俺の手首を掴み持ち上げる。へたりこんだ状態で腕だけ伸ばされる。こいつ加減とか知らないから一々強引でムカつくんだよな。



「いーたーい! あんたさ、自分は言われた事だけやってるみたいな顔してるけど力加減とか知らないのかよ!」


「こっちが言った通りに動いてくれるのを待つのは時間の無駄だからな。文句を言われたら謝るようにしてる」


「謝るだけじゃん改善の意思ないじゃん! 何してるのか聞いてもまばらにしか答えてくれないしそりゃ不満も溜まるだろ!」


「お前の要望を聞いて、こちらの時間を割いてやってるんだぞ。それにお前の問いは俺が答えずとも教本なり歴史本なり読めば分かるものばかり。自分で調べろよ」



 当然という風な表情で口を動かすフレイの足を蹴飛ばす。筋力バフは乗せてない素の力で、それなりの強さで蹴飛ばしてやった。どうやらこの程度の痛みには動じないらしい。



「そういえばお前、メリー三等とは今回の任務が初対面だと言っていたよな」


「言ったけど。てか手ぇ離せ。なに手のひらに頬ずりしてんだ変態ロリコン野郎」


「古い形式の分散術式を手首にびっしり刻んでいる。細すぎてただの面にしか見えないが近くで見ればすごいぞ、図形の集合体になっている」


「スリスリすんなって。言いながら幼女の手のひら堪能してるだろ。多分そろそろ天罰降りますよあんた」


「何が幼女の手触りだ、自惚れるなよ。お前が何の変哲もないただの少女だったのならこれっぽっちも興味ないと何度も言ったぞ。どれだけ自分に自信があるんだ、恥ずかしくないのか?」


「恥ずべきなのはあんたなんだけどな! 街行く人々がドン引いてるぞー!」



 いい加減男の頬の感触が気持ち悪いので乱暴に手を引いてロリコンフレイから離れる。



「さっき言いかけてましたけど、メリーがなんすか」


「あぁ。お前の体を調べている最中おかしな点に気付いてな」


「……ふむ?」



 俺の体を調べていてメリーの事が気になったのか? なんで?

 フレイは触れてるだけで相手の魔力関係のあれこれがわかる。だから今のメリーに触ったら、人間の皮の下に夥しい数の寄生虫が蠢いてるってバレそうだよなって思ってはいたけど……。



「お前の体内にメリーの魔力に似た痕跡があった」


「……あ」


「魔力供給によって出来た痕跡ではない。肉を裂いて直接体の内側に魔力を注入したような物だった。しかもその魔力はお前の魔力に溶けることなく、入れられた状態のままそこに自然消滅するまで残り続けたようだった」


「あ〜……」


「メリーはお前に殺されかけたと言っていたよな。……何があったんだ? お前達」



 そういう話かぁ。そうだった、俺一回あいつに寄生されかけた事あったんだった。そんな細かい所にまで気が付くのかよ、魔導師って。

 逆になんで俺が純粋な人間の幼女だと認識されてるのか不思議でしかない。アレクトラボディって神格みたいなもん帯びてるんじゃないの?



「んー……フレイ的にはどう解釈してるんですかそれ」


「先程言ったが。刃物か何かで体に穴をあけられて、そこに指でも突っ込まれたんじゃないのか? 何かしらの能力を使ってメリーはお前を殺そうとし、既のところで回避行動を取った。そう捉えているが」


「めちゃくちゃ殺し合ってますやん私とメリー。漫画でもなきゃ和解不可能なレベルで殺意高いやんけ」


「違うのか?」



 違う、とも言い切れないか。

 なんと説明したものか……以前のレウコ悪魔だったら正直に全部話してみんなでぶっ殺そー! って流れに持っていくのも吝かではなかったんだけど、今のあいつには人間に対する敵意とか感じないし宿主に成り代わってただ生き続けてやるって気概しか感じないからな〜。


 悪魔だからであいつの存在意義を否定するのはなんか違う気がするし、宿主ありきでしか生きられないという寄生虫サイドの事情があるから、あいつが今までしてきた行為については正直仕方ないとしか思わない。


 赤の他人だし気持ち悪い寄生虫悪魔なのは間違いないんだけど、本性が悪寄りでもなく切実に生きようとしてる奴を売るのはちょっとしんどい。

 別に俺があいつを庇う義理はないんだが、ここは上手く誤魔化しておくか。



「それ、私の体のどこら辺から出た痕跡なんです?」


「ふむ。胸の下の肉と下腹部辺りからだが」


「あちゃー。そんならもう分かりますやんか」


「?」


「ほら、魔力供給って粘膜接触が1番効率良いって言いますやん?」


「そうだが、俺の感じ取った痕跡は決して魔力供給の物とは」


「実はシスター・メリーはかなり偏執的な愛情の持ち主でしてね」


「……ほう?」


「彼女は愛した相手の事をより深く、目に見える範囲から目に見えない範囲まで深く深く愛してしまう。狂気としか言えない愛し方しか出来ない不器用な子なんです」



 フレイが前のめりになりながら「ほうほう」と聞き耳を立てる。



「シスター・メリーの愛情表現は過激なものでした。全身をくまなく堪能するだけじゃ飽き足らず、その関心は私の皮膚の下にまで及んだ。血が流れました。しかし、痛みの中には確かに彼女の愛情があった。あれは、熱い夜でした」


「ほぉ……凄まじい話だな」


「しかしその恋は長くは続かなかった。なんたって私はただの女の子ですからね、メリーと違って。メンヘラに付き合うのにも限度があります。痛いの嫌だし」


「それで破局し、関係性がリセットされたと」


「えぇそういう事です。だからあまり詮索しないでください。私はいいですけどあの子が傷ついてしまうので。くれぐれも彼女の前でこの話はしないようお願いしたい」


「なるほどな。疑問点は複数あるが、そういう事情があるのならこれ以上の言及はやめておこう。女のそういう話には触れないのが一番だ。異端審問官と仕事をするなら尚更な」


「メンヘラ多そうですもんね、異端審問官って」



 フレイはうんうんと腕を組み頷いた。メンヘラって単語はきっとこの世に存在しないんだろうけど、話の流れからなんとなく意味を汲み取って頷いたんだろうな。



「何の話をシているんでス? お二人とモ」


「げっ。メンヘラメリーだ」


「噂をすればと言うやつだな」


「なんでスかナンですか。二人シて怪しい反応しますネいきなり。ワタシの悪口言ってマした???」



 丁度メリーの話をし終わった所で本人が現れる。

 突然消えたかと思いきや間の悪い奴だな、そんなんだから俺に殺されかけて以降腐れ縁みたいに俺と遭遇するんだろうがよ。見直せよ、自分の運命力とやらを。



「そんな事よりメンヘラ三等。ジュエル二等とワルワラ二等を宿まで運ぶの手伝ってくれ」


「はい? なんデすかメンヘラ三等って。ワタシの事言ってまス???」


「よろしく頼んだぜシスター・メンヘラ。私はこれから東地下区の調査に行ってくる」


「誰デすかシスター・メンヘラって。意味は分かりマせんが悪口言われテるのは分かりますヨ。いじメられてます? ワタシ」



 問い詰められるのを避けるため、話の途中で俺は全身に強化を施し街の洞穴をぴょんっと飛び降りる。

 後ろからメリーが驚く声が聞こえたが、そこは俺の能力をある程度把握してくれているフレイが説明してくれるだろう。


 さて。満腹になる前に店を出てしまったからもう空腹だ。しれっとフレイのお財布を頂戴したし、行ったことのない料理屋さんにお邪魔しちゃうぞ〜。

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