休み時間3
園内にあるレストランで昼食をとり、午後も動物園を満喫した。
「一九十先輩、お土産を買いに行きましょう!」
「いいけど、ここ来たことある人多いからお土産になるか分からないよ?」
「いいんです!何を渡すかではなくて、渡すことに意味がありますから」
「そういうもんか、なら別行動しよう。その方が効率がいい」
「わかりました。では集合場所とかどうします?」
「三十分後にこの場所でいいんじゃないか?」
「了解です!では後ほど!」
加奈は少し駆け足で売り場へ向かった。僕も後に続く。
(三十分後)
買い物を済ませて待ち合わせ場所に向かうと、すでに加奈が待っていた。
「先輩遅いです。普通一時間前行動ですよ!」
「三十分しかないのに無茶を言うな!時間の概念無視してんじゃん」
「冗談です。で一九十先輩は誰に買ったんですか?」
「僕はあいつにパンダのキーホルダーを買ったよ。あとこれ」
僕は加奈に二つ持っていた袋のうち一つを渡した。
「え?私にですか?」
「うん、この前の放課後にカフェを奢ってくれただろ。それのお礼だ」
「先輩は律儀ですね。明けてもいいですか?」
「どうぞ、大したものじゃないけど」
「買ったお店の近くで大したものじゃないって言っちゃだめですよ」
「そうだな」
袋を開けて、加奈はとても嬉しそうにしている。驚いていない所を見ると何を貰うかは、未来を見て知っていたのだろう。
「ありがとうございます。これ大事にしますね!」
「ああ、そうしてくれ」
僕が加奈にプレゼントしたものは、レッサーパンダのぬいぐるみだった。
「それでは一九十先輩、私からもどうぞ」
加奈は一つしかもっていない袋を僕に渡してきた。
「え?それ、誰かへのお土産じゃないの?」
「ええ、一九十先輩へのお土産です」
「いや、僕一緒に来てるじゃん!」
「いいんですよ。受け取ってください!」
袋を開けて僕は驚いた。中に入っていたのはレッサーパンダのぬいぐるみだった。
「え?これ同じものだよね?」
「いいえ。これは私が買ったレッサーパンダです。売り場にあった時点では同じものかもしれませんが、私が一九十先輩に渡したいと思って買った時点で、それは違うものになったんです」
なんかまた難しいことを言っている。
「一九十先輩が買ったレッサーパンダも、先輩が私のために買った時点でそれは違うものになったんです。他のものには代えられません」
「気持ちが入ってるってことか?」
「そういうことです!それに……」
加奈は少し恥ずかしそうに笑顔で続けた。
「お揃いにしたかったんです」
「わかった!有難く貰っておくよ」
「はい、大事にしてください」
結局あげてもらってなので、また今度別のお礼を考えた方が良さそうだ。
「そういえば、加奈の他の人へのお土産は?」
「渡す相手いないので買ってないですよ」
「……」
可哀想すぎて、また涙が出そうだ……。
「やめてください!可哀想な目で私を見ないでください!一九十先輩も未来先輩を抜いたら似たようなものじゃないですか!」
おっと、考えが顔に出てしまったみたいだ。
「よし!この話は終わりだ!お互い悲しくなるだけだし」
「あ!逃げた!」
「大丈夫、加奈には僕がずっと友達でいてあげるよ」
「はぁ……。それは遠慮します」
「なんでだよ!」
加奈は悲しそうな顔をして、うなだれている。そんなに嫌なの!傷つくんだけど……。
「では、そろそろ帰りますか。一九十先輩手を出してください」
「手?こうでいいのか」
右手の手のひらを上に向けて加奈の方へ向ける。
ギュ!
手を握られた。驚いて言葉を失う僕に加奈は照れながら言った。
「一応デートですからね!手を繋ぐくらい普通です。別に私が繋ぎたいからとかじゃなくて、未来を変えるためにですからね!」
握られた手は、とても小さく温かかった。人と手をしっかり繋ぐのはいつぶりだろうか。とても新鮮で懐かしい気持ちになった。
~地元の駅前~
電車から降りて繋いでいた手をほどく。
「今日一日楽しかったです。また行けるといいですね」
「結局、未来は変わったのか?」
「残念ながら、変わらずです」
「そう簡単には変わらないよな」
予想通りだったが、可能性がゼロではなかっただけに、ほんの少しガッカリな気持ちになったが。
「お別れのキスをしたら変わるかも……」
また変なことを言っている。僕のためにそこまでしなくても。
「いや、それは好きな人のために取っておけ」
「……」
恥ずかしいのか、落ち込んでいるのか、加奈はうつむいて、顔を隠した。
「未来を変えるのはまた今度一緒に考えよう。今日はいろいろありがとう」
素直に感謝を伝えて、加奈の頭をなでた。加奈は切り替えたように顔を上げた。
「そうですね、また今度考えましょう!それでは一九十先輩また明日学校で」
そう言って加奈は家に帰っていた。
~家~
帰宅すると何故かあいつがくつろいでいた。もう驚きはしないが。
「ただいま、これあげる」
「おーありがとパンダ!」
「せめて中身見てから言ってくれ」
本当にプレゼントし甲斐が無い。演技でもいいから驚いてくれよ。
「えー、めんどくさい。で、動物園デートどうだった?」
「楽しかったよ。普通に」
「ふーん。今度私とも行こうね」
「動物園に?」
「いや、アニメイト」
いつも通りじゃねーか!
「いいんだよ、動物見ても面白くないし」
「今日動物園行ってきた人の前で言うなよ!」
「癒しは二次元にある!」
こいつのオタクは止まらないらしい。前より重症化してそうだ。
「アニメは病気じゃなくて薬なんだよ!」
「意味わかんないこと言うな!」




