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完璧な幼馴染と凡人な僕  作者: Kouga
一学期
13/20

十三限目

<<次の日>>



 朝のホームルームを終え、聞き込みの第一歩として、畑本に噂のことを尋ねた。


「なぁー、お前井上のこと知ってたよな?」


「おぅ。有名だしな」


「その事なんだけど、何で有名なんだ?」


 性格が外交的で友達が多そうな畑本なら、何か知っているかもしれない。


「え?お前そんな事も知らないのかよ。分かってて一緒にいるんだと思ってたわ」


「悪いな。僕には友達がいないんだ」


「……」


 そんな可哀想な奴を見る目をやめろ。僕は可哀想な奴じゃない!


「で?何で有名?」


「高校入学して家の事情で学校に来なかったのが原因らしいけど」


 それは井上に聞いた。僕が知りたいのはその先だ。


「それだけじゃないだろ?」


「その間に中学での噂が広まったらしい」


「中学での噂?」


 畑本は噂の内容を細かく教えてくれた。これ以上聞き込みをしなくても、大丈夫なほどの情報だった。


 中学での出来事。井上には親友と呼べる存在がいた。学校の日も休みの日も、一緒に遊んでいたらしい。


 そんなある日、親友の子の家で遊んでいる最中、その子の飼っていたペットが、井上に怪我をさせてしまった。怪我自体は大した事が無く、引っ掻き傷がついた程度。


 しかし、それを知った井上の親が激怒。その親友の子を転校させ、ペットは殺処分されたらしい。誰が悪いわけでも無いに……。


 その噂が、井上の休んでいる間に、学校中に拡散。高校に上がり、井上と同じ中学だった奴が、井上に関わると転校させられる、などと広めた。何も知らない奴らは、噂半分らしいけど。


 多分、井上自身も噂の内容が、中学の出来事だと薄々気付いている。だから諦めてしまった。過去のことで、特に間違っている訳では無い噂。否定をする事は出来ないし、肯定なんてしたら、今よりも急速で、悪化するだろう。


 原因が明確になった事によって、解決の難しさも明確になってしまった。


 一応聞き込みなので、畑本以外の話も聞いた上で判断しよう。あと二、三人の情報は欲しい。



<昼休み>



 結局あの後、他三人に話を聞いたが、畑本ほど情報を持っている奴はいなかった。何で畑本は、こんな詳しく知ってるんだ?


 疑問は置いといて、井上に報告しに行こう。今日は先に昼食を購入してから、井上の教室ではなく中庭のベンチに直接向かう。


「先輩!遅ーい!」


「いや、遅くないだろ。昼休み入ってすぐきた」


「もう1時間も待ちました。」


「……」


 そういえば、こいつ授業をサボる癖があったな。


「四限目は数学だったのか?」


「え?違いますけど、数学は六限目です」


「じゃー、何で授業サボってんだよ?」


「え?授業をサボる理由なんて、だるい意外にあります?」


 この前は数学だからって言い訳してたじゃん。教科関係ないのかよ。


「はいはい、そうですね」


「で、聞き込みはどうでした?」


「僕のクラスメイトに何故か詳しい奴がいて、そいつの話によると、中学の噂が原因だって」


「なるほど、あの事ですか?」


「やっぱり知ってたんだな」


「なんとなくですけどね」


 情報の共有はできたが、次に何をすればいいか分からなくなってしまった。


 考え込んでいると、そこに声を掛けられた。井上ではなく、低い男の声だ。


「よう、一九十。お前、昨日もここでその子と飯食ってたな。羨ましいぜ」


「面倒なのが来た」


「?……誰ですかこの人?」


 井上が警戒した目をしている。まぁ、無理もないか。親が過保護だから「男性に話しかけられたら警戒しなさい」みたいな事を言われているのかもしれない。


「紹介するよ。同じクラスの畑本光記だ。さっき話してた、何故か噂に詳しい人な」


「なんかその言い方、悪意ないか?」


 畑本の不満は置いといて。


「何でお前ここに居るんだ?」


「ん?ただの散歩だよ。教室にいてもつまんないしな」


「あっそ」


「質問したくせに、冷たくない?ねぇ井上さん」


「……え?そうですね」


 井上の反応が鈍かった。今は自分のことで精一杯だから、仕方ない。


「俺はもういくぜ、じゃあな」


 と言いながら畑本は手を振ってどっかに行ってしまった。井上の反応を見て気を使ってくれたのかもしれない。


「先輩、あの人何者ですか?」


「ん?さっき説明したろ。同じクラスの畑本だって」


「あの人は危険な気がします。気を付けて下さい」


「警戒しすぎだろ!」


 初対面で警戒される畑本が不憫だ。親の過保護を守りすぎだろ。過保護を守るってのも変だけど。


「そうだ、そこを直してもらえば少しは改善するかも」


「何がですか?」


 井上は何のことか分からない顔をしていた。


「お前の親の過保護を直してもらえば、中学のことは別として、これから同じことが無くなる」


「私の親は過保護じゃないです!ちょっと厳しいだけです」


 守られてる本人は、それが当たり前だから、気が付かないのかもしれない。


「中学の出来事の原因は、私の親じゃないです。父は私のためを思ってやってくれたことですから。誰も悪くないんです」


「なら、どうすれば」


「強いて言えば、私が怪我をしたのが原因です。なので、これからの改善に関しては、私が注意すれば済む話です」


「お前がそれでいいなら、いいけど。これからはそれで良いとして、今の改善はどうする?」


「それに関しては、私はもう諦めていますけど。先輩は何か案、あります?」


 ずっと考えていても、良い案が一向に出てこない。案はいくつかあるが、良い案かどうかは分からん。多分良くない。一応聞いてもらうか。その間に、別の案が出てくるかもしれないし。


「お前の別の噂を流すってのはどうだ?」


「何を?」


「印象が良くなるような噂があれば今の噂を忘れてくれるとか、無いかな?実は良いやつですよって」


「それはあまり効果がありそうでは無いですね。今ある噂が強すぎます。他の噂は全部無視されるでしょう」


「だよなー」


 噂を流す役も大事だ。僕が流しても影響力ゼロだし。色々難易度が高い。


「なら、担任の先生に相談してみるとか」


「それも難しいですね。先生も噂を知っている以上、あまり関わりたくないと思ってるはずです」


「……」


 それもそうだ。今の異様な状況は教師も見て見ぬふりをした結果だ。


 僕の考えていた案は、やはり良い案ではなかった。あとはあいつに手伝って貰うくらいしか案が浮かばないが、どうしよう。


「そろそろ、予鈴がなりますね。続きはまた明日にしましょう」


「そうだな」


「では、さようなら」


「あぁ、じゃあな」


 そう言って井上は自分の教室に戻らなかった。いや、どこ行くんだよ!またサボるのかよ……。


 僕は真面目なので真っ直ぐ教室に帰る。と言っても授業に集中は出来ないだろうな。



<<放課後>>



「いっ君!今日は家に行くね」


「……」


「いっ君聞いてる?」


「え?何?」


「んー。考え事もいいけど、それは明日にして!」


「いや、早く解決しないと」


「今日は私の話相手の日なんだから、明日にして!」


「わかったよ。明日にする」


「よし!じゃあ、帰って支度してすぐ行くね」


「はいはい」


「……」


 ちゃんと相手しろと、目が訴えていた。しょうがない、昨日の分も相手してやろう。



<<次の日>>



 いつもの通り、朝まで続いたオタク話を聞き、学校へ向かう途中こいつに変なことを言われた。


「もう悩まなくて大丈夫だよ」


「どういう意味?」


 この質問には答えてくれなかった。またね、と言い自分の教室に向かっていった。


 ホームルームまでの間、畑本と無駄話をして、授業中はしっかり睡眠を取った。流石に徹夜明けの授業は辛い。


 四限目には、しっかり目が覚めた。昼休みに井上に会うので、新しい案を考えようとしたが、一向に思い付かない。


 何も思い付かないまま、昼休みを迎えてしまった。とりあえず中庭に行こう。


 到着すると、もう既に井上が座って待っていた。


「先輩、何かしました?」


「会ってそうそう、なんだよ?何もしてないよ」


「そうですか」


「そうそう、悪いけど新しい案も何も浮かばなかった」


「いや、もう必要無いです」


「おい、諦めんなよ!まだ何かあるって」


「いえ、そうじゃなくて。もう解決しちゃったんです」


「……え?」


言われていることに、頭が追い付かなかった。

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