第16話 喧嘩
ウィズの店を出て家に帰ると5人は楽しそうに野菜をカットしていた。自分が居ない時に楽しそうにしてるのを見ると少し悔しい。
家に帰ると真っ先にイラーリが話しかけてきた。
「アルス兄さん帰ったの? 道具は大丈夫そう?」
イラーリが少し心配そうな目で見てきた。
「ただ今、大丈夫そう。だから後は料理の完成と人手を集めたり、宣伝かな?」
心の中でイラーリの心配が嬉しい。
(マーチャさんの仕事もいつまで休むわけには行けないから。一番最初に人手を集めたいな)
「アルス兄さんは何をやろうとしてるのか分からないけど、私にできることなら何でも手伝うよ」
シークとウィズもこっちを見て頷く。クリスも頷くが表情が少し不満気だ、クリスは自分で切った不格好の野菜を指で差して早く飯を作れと急かす。腹が減ってるらしい。
(シークとウィズも少し俺を受け入れてくれてるのか。そしてクリスは今の今の所何もできてないのは気のせいだろうか)
「イラーリありがとう、本当に助かってるよ。クリスさんがお腹が減ったみたいだから早くご飯を作ろうか」
イラーリは感謝された事はあんまりなかったのか顔を赤くして頷き野菜を切っていく。
クリスは指摘されて逆に怒らせてしまったようで、こっちに近づいて両手で頭をグリグリと攻撃してきた。シークとウィズはそれを見て嬉しそうに笑っていた。
ご飯食べた後にこの街の孤児についてイラーリたちに聞いてみた。
孤児たちは3人から4人のグループで沢山の分かれていて、街全体で100人ほどいる。お互いにはあんまり関わらないようになっている。基本皆ライバル関係にある、理由は薪などの資源も盗むものも量に限りあるからだ、盗めないグループから死んでいく。
孤児は基本8歳までは孤児院で育つのだが預けてあるお金が無くなればすぐに追い出される。それより小さい子供は冬を超えられずにすぐに亡くなる。中には魔法が使える子供いるが基本孤児院にいる間に王都に連れていかれて軍隊に入れられる。イラーリたちが残った子供は魔法を使えるのは知ってるのは獅子獣人のレオンしかいないらしい。レオンは孤児院にそもそも入ったことはない。普段一匹狼ならぬ一匹獅子である。
孤児たちは大きくなっても選べる生き方は少ない。女の子は娼婦になるか冒険者になるしかない。男に関しては運よくどこかに重労働仕事で雇って貰うか冒険者になるかだ。他には町のヤクザになるしかない。軍隊には税金を払ってる平民しか入れない。
冒険者になったとしても最初に装備がない為死亡率かなり高くなり、冒険者で生活していく孤児出身はかなり少ない。
この世界の現実を知って行けば程この世界を嫌いになっていく気がするが、それでも生きていくしかない。
その日は明日には孤児を勧誘することを決めそのまま寝た。
次の朝にご飯を食べているとシークとウィズは何かを言いたげにしていると、イラーリとクリスに突っつかれて遊んでいる。
しばらく見てるとシークは深く息を吸い、意を決したように俺の目を見て話し始める。
「あの、アニキって呼んでもいいのヵナなんて……」
緊張しすぎて声が少しおかしくなってる。よく考えたら昨日の朝からシークとウィズとあまり会話してないことに気付く。
「そう呼んでくれて嬉しいよ」
シークはほっとした様子で頷いた。俺も兄貴と呼ばれて嬉しそうに笑ってるとウィズは「俺も」と小さい声で零す。ウィズに向かって頷くとウィズは照れてしまって顔を横に向ける。
そんなウィズにシークは飛びかかる、ウィズはすぐに反応して躱す。
「ウィズずるいぞ、一緒に言うって昨日言ったじゃねーか」
ウィズは知らんぷりを決め込み取りあわずに無視を決め込む。
どうやら昨日言うつもりだったらしいが恥ずかしいからと今日になってしまったらしい。はしゃぎ回る二人を見て心が少し安らぐ、この世界に来て色々ありすぎてずっと気持ちが張っていたせいだろう。
孤児勧誘に作戦を考えた。その名は「餌を吊ればついてくるだろ作戦」。
パンを一人3つほど買い、人手を分けて勧誘に向かう。
薄暗い裏道を歩いてると、6歳ほどの孤児を見つけパンをあげると警戒しながらついてきた。孤児院を追い出されたばかりか。思った簡単にいき少し拍子抜けする。なんだか現代社会で不審者をしてる気分だ。
(俺は不審者じゃない、悪いことしてない)
男の子に案内されて同時期に追い出された二人目女の子も簡単に吊れて残り一人だと思い、獅子の鬣のような髪をしてる男の子を見つけた。
身長は150センチほどで、10歳にしてはかないい体格してる。
(イラーリたちが言ってたレオンって奴か? とりあえず勧誘してみるか)
「君ってレオン君かな?」
話しかけられた男はこっちを金色の目で威嚇しながら目線はパンに向かっていた、腹の音が聞こえてくる。どこかデジャヴ。後ろの二人はすっかりおびえてしまった。
「なんだお前? そのパンは置いてけよ。じゃないとぶっ飛ばすぞ」
レオン完全に強盗と変わらない子供になってしまった。後ろの二人はそれ聞いて急いでパンを口に詰め込む。
(この世界で生きるには仕方ないのかもしれないな、この二人も逞しいな)
「まあ、取りあえず話を聞け。今人手を集めて仕事をしてるんだ、お前も仕事しないか? お金はあんまりでないけどご飯と寝所は用意するよ」
レオンはパンを見つめて目線を外さないが何かを考えているようだ。
「仕事するのはいい、今のままだとまずい気がする。でも俺より弱い奴の下には就かねー」
レオンはどうやら仕事はするのはいいけど、自分が誰かの下に就くのは良しとしない様だ。
(何だこのクソガキは? 身体魔法が使えるからって調子に乗ってるな。こいつを入れる必要もないな)
「じゃいいわ、他の奴に話持っていく」
レオンは断れるとは思わなかったのか少しショックを受けてしまったようだ。
「別にお前の仕事とかどうでもいいよ、それよりパンを置いてけ」
そう言ってこっちに突っ込んでくる、身体魔法で強化された獣人は俺の想像以上の速度で近づいてくる。だが、俺がパンをレオンの前に投げるとレオンは攻撃をやめてパンを受け止めようと立ち止まる。
パンを投げると同時にレオンに向かって走る、目線は完全にパンに移ったレオンはこっちの動きを気づかない。そのまま平手打ちで目を潰しをする、レオンはパンを受け止めるとこっちが降参したと思ったのか予想外の攻撃が上手く決まり、そのまま両手を挙げて目守ろうとする。パンはそのまま手から零れて地面に落ちていく。
両手が上がると同時にレオンの鳩尾に拳を思いっきりたたきつける、レオンは何とか倒れずに目と鳩尾を手で守り立ち止まってしまう。レオンの金色の鬣を掴みそのまま引きずり倒してマウントを取って鼻柱に何度か殴りつけるとレオンは泣きだすが降参は言わない。
手加減して指ではなく平手でうちで目潰した為レオンの目が開いて泣きながら反撃してきた。力も予想以上に強くレオンの攻撃を受け止めた腕がかなり痛い、レオンは体を起こそうとするがもう何度か殴るとレオンは諦めて大人しくなった。
「お前は誰より強いって?」
レオンは降参したのか何も言わずに泣き続けた。
(勝ったけど、まるでガキの喧嘩だったな)
親父から半年か武術教わってないけど、素人には勝てたな。
子供と喧嘩する25歳。




