第13話 交渉その2
マーチャとギルドに着くと、受付に案内されて二人でギルド長の部屋に通された。4人は別の部屋に案内された。
二人で入っていくとギルト長ビクトルはこっちを見て、まるで孫が会いに来たかのように嬉しそうな微笑を見せる。
「よく来たねアルス君、今日は何か用かな?」
一緒に来たマーチャにではなく真っ先にこっち話しかけてきたせいで少し戸惑う、目上のマーチャを見てからここに来た経緯を説明する。
「というわけでこの件についてはラッカード商会が責任もって開催したしますのでよろしくお願いします」
マーチャはさっきの挨拶の事が癪に障ったのか言葉に少し棘がある。
「いやいや、アルス君は食堂を開くのだろう? それならギルドの一員に変わらない。だが料理しながら運営ができないからマーチャに任せるのだろう? 正直マーチャ君一人で運営は厳しいだろう」
(どうやらビクトルも運営という座が欲しいらしい、こういうイベントは今までなかったのかこれを機に名前を売りたいのかもしれない。話を聞いただけで人が沢山集まると分かる所は流石ギルド長)
「アルス君は今もこれからもラッカード商会の従業員ですよ。それに運営も私とギルドにいる友人たちで充分にできますから。心配していただいてありがとうございます」
(お? これはマーチャの勝ちかな、どうせ俺に運営はできないから任せるしかない。ていうかアルス君って誰だよ、マーチャはずっと呼び捨てだったじゃないか。だがしかしそこでビクトルと戦っているといい、俺は高みの見物をさせたもらおう)
出された紅茶を飲みながら二人のやり取りを見続けた。ビクトルはしつこく粗を探すが流石にマーチャが有利のようだ。
「こうなっては埒が明かないな、ここは発案者のアルス君に意見を聞こうではないか」
ビクトルは不利が引っくり返せないと覚悟してこっちに話を投げてきた。
(目が血眼になってて怖いよ。俺が10歳なら泣いてるぞ)
「話は分かりました。ビクトルさんは料理の味見役をやってみますか? ほかにも何人かを招待するつもりですが」
味見役と聞いてビクトルはイメージが湧かないらしい。
「それはどういうことをするのだ? 察するに料理を食べる役のように聞こえるが」
「流石ですね、そうです。料理の味の感想を言う役ですね。勿論料理を食べる前に名前などを紹介するのでビクトル商会の名前が売れますよ」
マーチャは不満そうな顔をしていたが、ビクトルはやはり名前を売りたかったらしい。自分の名前が売れると聞いて嬉しそうだ。
(この世界ではメディアなんて物がないからな、商会の名前を知ってもらう為には噂か余程すごい話がないとまず無理だろう)
「うむ、いいだろう味見役は私が引き受けよう。旨い物を食べさせてくれよ」
ビクトルは嬉しそうにマーチャを見るが、マーチャは苦虫を噛み潰したよう顔をしている。だが何言わない所はこの辺で妥協したのだろう。
「はい、期待してください。見た事無い旨い物を食べさせてあげますよ。開催時期は追って連絡します」
(まあ俺が料理を完成したら開催するということだ)
店を出るとマーチャは不機嫌になりがら役所へ向かった。
役所に着くとそこには俺が知る限りでは一番大きい建物であった。煉瓦造りの2階建てで庭はかなり広く花などが咲いていた。
マーチャはこの街と役所について教えてくれた。役所の権限はかなり強い。この街はクレディー・スイという人物が貴族の代わりに内政を行っているという。
オックスソードは元々ここ西大陸のティニ王国の土地だったが、魔物が大量発生してる隙を突いて占領したらしい。その後にどんどん海の向こうの東大陸の王都バードから人が送られ、オックスソードと本国でも有能な貴族を頭に据えてこの街を作った。
オックスソード家は2代目まで有能だったのだが、今の3代目はダメらしい。一日中女と酒におぼれて浪費が激しく、そのため王都から送られてくる支援金も殆ど3代目が使ってしまってる状態。
もう50年は経つのだが今でもティニ王国から兵が送られてくるが何とか撃退している状態だ。本国からも援軍送られてくるけど、最近ではお荷物と言われている。ヒフル皇国の王都バードでは見捨てようと主張する貴族が存在するほどだ。
グレディー・スイは2代目に仕えていた有能な人物、この人がいなければ今の行政が回らないほど状況は悪い。街のみんなはこの人には感謝している。
行政府に入ると中にいる人は皆走り回って仕事をしている、誰も疲れた顔をしている。
マーチャは走ってる一人に話しかけグレディーに面会を求めるとしばらくして面会を許可してくれた。また俺とターチャが二人で部屋に入っていく。
部屋に入るとそこには頬がやせ焦げ、目の下には大きな隈があり、頭の髪は少ない。どう見てもストレスを抱えてるブラック会社の社員である。
グレディーは目尻を揉みながら話しかけてくる。
「マーチャさん何か御用ですか? 忙しいのでできるだけ単刀直入に頼む」
グレディーは余程疲れているのだろう、交渉など知ったことかとズバリ聞いてきた。
「広場を借りたい、用途は新製品の販売と試食会だ。無論お金は払う、この街の皆も喜ぶと思うぞ」
マーチャも言われたとおりに必要な情報だけをしゃべっていく。
「金はいい、どうせあそこは枯れた噴水しか置いてない。今回成功すればまた借りようとする人が増える、その時にまたお金をもらおう。そこの子供も何か用があるのか?」
グレディーはマーチャに答えた後にすぐにこっちに話を振る。
「アルスと申します、今回の計画を発案した者です。当日に混雑やトラブルなどがあると思うので人手欲しいのですが」
(できればこの街の警察的な人がいい)
「そうか、それなら人手はいるだろう。開催日には守備隊の一部を貸して出そう、仕事がないと嘆いていたからな。費用はその日に出る食べ物でいい」
グレディーはそれだけを言い終えてすぐに部屋から出て行った。こっちの要求に対しての対価が安すぎる。
(もしかして、街の人が喜ぶと言われたから?)




