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侯爵令嬢レベッカの追想  殺人事件の被害者になりたくないので記憶を頼りに死亡フラグを折ってまわります  作者: 北村 清
第十章 或る未来へ

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その日のその後 PART 2

そして私(?)の暗殺騒動から、一週間が経過した。


7年間怯え続けてきた殺人事件の謎も解け、最近は毎日ぐっすり快眠状態である。


自分の部屋の中にいた私は、机の上に置いておいた東大陸公用語で書かれた民話本を手に取ってパラパラと眺めた。長い間亡命願望のあった私にとって東大陸は憧れの土地だった。かつて暮らした日本のような食文化がどこかに伝わっていないだろうかと、本を読みながら心を躍らせたものである。

だけど今はもうそれほど興味がない。亡命願望が無くなったし、何より一周目の殺人犯人は東大陸に住んでいるのである。東大陸に逃げ込んで、うっかり犯人とニアミスしたらしゃれにならない。


それよりも今の私の憧れは北大陸だ。


北大陸の山あいにあるというライムセント王国。その国へ行きセシル王女という人に会ってみたかった。彼女が私の日本時代の友達の『せっちゃん』なのか確認したかった。


『せっちゃん』だったら、八つ当たりされるかもだけど。


一週間前、私を殺そうとしてジークルーネを刺そうとした人はやっぱり『稀人』だったらしい。それも7年前の10月24日にこの国へやって来たそうだ。周囲に自分でそう言っていたらしい。

この7年の間どのように生きて来て、どのように心の闇を育てて来たのか、貴族のツァミューレンやアカデミーの寄宿舎の門番とどういう関係があったのかはまだ調査中らしいが、彼女の動機の中には

『上手い事やっている稀人っぽい人間に対する妬み』

というものがあったそうだ。


実際思うのだ。『私』は7年前エユなんちゃらの秘術の力で、こっちの世界に戻って来た。その時2つの世界の空間がどうにかなって、同じバスに乗っていた人や追突した車に乗っていた人達のうち何人かがこちらの世界にこぼれて来たのではないのかと?同じバスに金髪の人がいたかどうかは定かではないが、令和の日本はどこにでも外国の方がいた社会である。


もしそうなら、やっぱりセシル王女はせっちゃんだろう。私と違いせっちゃんには日本に優しい家族がいた。

「おまえのせいだったんかいっ!」

と怒られる事は覚悟しておいた方がいいかもしれない。


私は手に持っていた本を撫でた。東大陸公用語で書かれたこの本には、東大陸に出現した稀人の話も載っている。

それ以外にも、私は『聖女エリカ』を含む稀人だったのかも?と言われている人達の伝記を読んで生涯を調べていた。


彼女達がこの地で生涯を全うしたのか?元の世界に戻ったのか?戻ったとしてそれは自分の意思なのか?世界の意思なのかを。


しばらく思考の淵に沈んでいた私の耳に馬車の音と馬のいななきが聞こえて来た。

今日、コルネとミレイがうちに戻って来るのである。



戻って来た二人は『the観光客』といういでたちだった。


ヒンガリーラントでは見ないストローハットに、ヒンガリーラントでは見ない取り合わせの柄の服。紫外線防止用だろうかサングラスまでかけて見たことのない動物の置き物を小脇に抱えている。成田空港に普通にいそうな二人組だった。


「エリーゼ様ー!ベッキー様!私、音楽大学に受かりましたー‼︎」

浮かれて見えるのは内心浮かれ切っているかららしい。ミレイは踊り出しそうな歩調で屋敷の中に入って来た。


その知らせは既にリーリエ様から手紙で知らされていたのだが、ここは知らないふりをして

「わー、良かったねー。」

と言ってあげる。

エリーゼも

「よくやったわ。」

とミレイを褒めてあげていた。


「はい!七月から弦楽器科の一年生です!」

と嬉しそうにミレイは言った。得意のハープで受験に受かったらしい。受験倍率鬼高のピアノ科は残念ながら落ちた、とリーリエ様に聞いている。


ミレイの元気が弾けているのは当然だが、コルネも疲れた様子もなく元気いっぱいだった。


「旅行すっごく楽しかったです。いろんな物を食べていろんな人に会って。」

「それは良かったね。ミレイと一緒にシュテファリーアラントで暮らしたくなったんじゃないの?」

もし、そういうなら寂しいけれど祝福しよう。と思っていたのだが。


「帰るおうちがあるから楽しいんです。アレもベッキー様に話そう。コレもベッキー様に話そうと思って。でも次はベッキー様と一緒に行きたいです。シュテファリーアラントは素敵な国でした。」


どうやらコルネはこの旅で、人間性の皮が一皮も二皮も剥けたようだ。

こうなる事を見越して「行って来い」と命令したのなら、やっぱエリーゼ様はさすがだわ。と思う。


お土産がいっぱいあるというので、場所をエントランスからリビングに移した。使用人達にもお土産があるという事で、住人全員集合状態である。

その全員を見ながら「幸せだな」と私は幸福を噛みしめていた。



「そういえば途中で立ち寄ったアズールブラウラントで、王太子殿下がアズールブラウラントの女王様の戴冠式に出席されるって聞きました。ベッキー様も行かれるのですか?」

とコルネに聞かれた。

ふーん。ルーイ王子は行くのか?と私は思った。


現時点で誘われてはいないし、王子が行く事も今初めて知った。よく悪役令嬢系断罪漫画や小説では、婚約者にヒロインが婚約破棄された途端、隣国の王太子が湧いて出てヒロインにプロポーズしたりするが「隣国の王太子(それも結婚適齢期)というものが、よその国にそんなほいほい行くものだろうか?」と思っていた。だが行くものであるらしい。また一つお利口さんになってしまった。


「行くなら一緒に連れてってください。また旅行行きたいです。ミュリエラさんに案内してもらったおいしいレストランにご案内します。」

コルネはすっかり旅行に取り憑かれたらしい。『おいしいレストラン』というワードにはリーシアの方が食い付いていた。


どうなるんだろうねえ?

と思っていたらその日の夕刻。


『明日、エーレンフロイト邸をお訪ねしたい。』

とルートヴィッヒ王子から連絡があった。




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