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侯爵令嬢レベッカの追想  殺人事件の被害者になりたくないので記憶を頼りに死亡フラグを折ってまわります  作者: 北村 清
第十章 或る未来へ

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時を戻す秘術(5)

エリーゼは、腹を割って話してくれた。


人間だから、ちょっとした記憶違いくらいはあるだろう。だけど、彼女の言葉に『嘘』はないと思った。


それならば、私がこの期に及んで嘘をつくのはなしだろう。


「私、あります。」

と手を挙げて言った。


「全部を覚えているわけではないけれど、18歳までの記憶がだいたい残ってます。で、それとは別に、ここではない世界の記憶も18年分あるんです。」

「ここではない世界?」

「こっちの世界より科学も医学も進んでいてご飯もおいしい世界。私は田舎の孤児院育ちの平民で、だから仕事をしたり料理をしたりとか普通にしててバウムクーヘンはその頃よく作っていたお菓子なんです。だけど18歳の時事故に遭っちゃって、目を覚ますとこっちの世界の311年の10月24日になっていたんですよね。こういうのも稀人って言うんですかね?」


「それはよくわからないけれど、10月24日というのは間違いないの?」

「それは間違いないです。次の日がコンラートお兄様のお母様の命日で、コンラートお兄様に霊園で会ったから。で、その年の建国祭のチェス大会で優勝しました。」

「そうなの。平民で孤児って随分苦労したのね。」

「いえ、全然。強がりではなく楽しく健康的にのんきに生きてました。おかげで、貴族令嬢としての生活が窮屈で窮屈で。」


いや、ここは「大変でした!」と言うべきだったのかもしれない。なぜなら、私が文子として明るく楽しく生きていた頃エリーゼは地獄を見ていたのだから。


「コンラートは、どうなのですか?」

とエリーゼが聞いた。


「・・死んだ時の事は覚えていました。段々と意識がなくなっていて、目を覚ますと大陸歴311年の10月24日でした。翌日ベッキーに会ったので間違いありません。だけど、夢を見て目が覚めた直後は夢をはっきりと覚えているのに段々と夢の記憶が無くなっていくように、死ぬ前の記憶が消えていったんです。完全に消える前にメモ書きを残したのですが、その日の夜になる頃には完全に記憶は消えていました。メモに残っていた言葉ではっきり読み取れたのは『天然痘の蔓延』『シュリーマン事件』『カサンドラ戦争』『光輝会』だけです。他の走り書きはよく意味がわかりませんでした。」

「そうなの。その走り書き今度見せて欲しいわ。」

「いえ、もう処分しました。誰かに見られて『将来の予言』とか言われたら困りますので。」

コンラートがエリーゼにNOを出す。

心の中で「本当かなー」と思ったけれど、もし嘘だとしたら見せたくないという事だろう。あまり、突っ込むまい。


「ジークは?」

とエリーゼがジークに質問した。


「私は一度目の世界の記憶とやらはないのですが、ベッキー同様違う世界の記憶があるんですよ。『月の谷』と呼ばれる場所に住んでいて。科学はヒンガリーラントより遅れていまして。というより、そんな概念もないというか。で、その谷に住んでいるのは犯罪者ばかりで、暗殺が稼業で。私は『総統』の十二番目の子供だったので、十二花シーアルファと呼ばれていました。で、ある日『跡取りを決めるので兄弟全員で殺し合うように』と言われてデスゲームが始まったんです。最後の記憶は、一つ年下の妹に崖下に蹴り落とされた事ですね。」


衝撃のハードモードライフ!

この話の流れで聞かされたのでなければ、絶対ホラだと思っただろう。


「目が覚めたら侯爵家のお嬢様になっていた、という感じでしょうか。それを自覚したのが何月何日だったかは覚えていませんが。」

「どうして深窓のお嬢様なのに、暗器や毒や護身術にこうも詳しいのだろうと不思議に思っていたのよ。そういう事だったのね」

とエリーゼが言った。

だよなー。私も大概馬鹿力だけど、クマ狩りには参加できないもんな。


「ベッキーのいた世界と同じ世界なのかしら?」

とエリーゼに聞かれた。


私とジークは顔を見合わせた。


「さあ、谷の外側の事は私は全然知らないので。成人するまで子供は谷から出られなかったのです。」

崖から蹴り落とされた時いったいこの人は何歳だったのだろうか?


絶対とは言えないが、私も違う世界だと思う。

そんなやばそうな一族が地球のどこかにいたと思いたくない。私は世界を旅する系のバラエティー番組が好きでよく見ていたが、そんな一族がいる谷など見た事がない。


「ユリアはどう?」

とエリーゼが聞くと、ぶんぶんぶん!とユリアは首を横に振った。


「私はそんな、全く、全然!・・すみません。」

謝る事ではない。というか、それが普通なのだ。


私は空気に徹している護衛二人にも聞いてみた。


「ティアナとアーベラはどう?」


「・・・いえ、自分は全くです。」

「右に同じです。」


どうやら私やエリーゼの方が少数派のようだ。


「エリーゼ様が、いろいろと尽力してくださっていたのだという事はよくわかりました。ありがとうございます。」

とジークが言った。続けて


「でも、そこまでわかっているのなら、諸悪の権化のエディアルドを殺しといてくれたら良かったですのに。」

身も蓋もない事を言った。

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