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侯爵令嬢レベッカの追想  殺人事件の被害者になりたくないので記憶を頼りに死亡フラグを折ってまわります  作者: 北村 清
第十章 或る未来へ

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時を戻す秘術(2)

鬱回です(−_−;)

「・・・15年。」

思わず私はつぶやいてしまった。一瞬、長く感じたが既に今が大陸歴318年である。大陸歴326年までにはあと8年しかない。


「何があったんですか?」


「一番最初に起こった悲劇は、アレミリューラが死んですぐに起きた芳花妃ステファニー様の死亡事故です。事故として処理されましたが実際は第一王子とその側近達に殺害されたのです。ステファニー様とお腹の中の兄弟を同時に亡くし、ルートヴィッヒは兄に復讐する事を決意しました。その手始めとして、ルートヴィッヒは政治とも社交界とも無縁に生きていた名門家エーレンフロイト家の娘と婚約します。」


周囲にいた人達の全視線が私に集中した。


「それから三年後。西大陸全域で天然痘が流行し、ヒンガリーラントの人口の一割が死にました。」


ぞっとした。『種痘』が無かった世界ではそんなにもたくさんの人が死んだのか!と思う。『種痘』の、そしてグラハム博士の偉大さが改めて身にしみた。そして、そのグラハム博士もセシル王女と出会わなければ、種痘を作り出す事はなかったのだ。


「ヒンガリーラントの国力が激減した中で、ルートヴィッヒは復讐を果たし王太子の地位を奪い取りました。それからしばらくして、ルートヴィッヒの婚約者だったレベッカが王宮内で殺害されました。貴族達はルートヴィッヒが殺したのではと噂しました。その為、貴族達の心は一気に王太子であるルートヴィッヒから離れました。」


「何でですか?」

と思わず疑問が口をついて出た。


「エーレンフロイト家は、ルートヴィッヒを王太子の地位に押し上げるのに最も貢献した家門です。その家の人間を理由もなく粛正する王太子にどうして忠誠を誓えるでしょう?天然痘で弟と母親を亡くし自らも感染し生き残ったレベッカは、ヒンガリーラントの復興と再生の象徴でした。社交界にはレベッカを応援する人も多かったのです。生きていれば、天然痘の苦しみを身をもって経験した王妃として同じ様に苦しむ人達の苦しみに寄り添える王妃となったでしょう。だけどその復興の象徴を王太子が打ち砕いた。と貴族達は思ったのです。」


そうなの⁉︎

あの頃、悪口ばっかり言われていたような気がするけれど。

でも、そういうものなのかもしれない。悪口は大きな声で聞こえてきて、慰めや励ましの眼差しには気がつけない。思えば親切な人もちゃんといたのだ。ジーク様とか。


「それからしばらくして、アカデミーの男子学生が四人の外国人の女性を地下室に監禁して虐待していたという事件が明るみに出ました。女性達のうち二人が亡くなり、その事件がきっかけでヒンガリーラントは西大陸の七ヶ国の国々と戦争になりました。この戦争はアズールブラウラントが中心になって起こりましたが、ヴァイスネーヴェルラントのカサンドラ王太后の七人の子供が首長を務める国々が同盟を結んで参戦した為『カサンドラ戦争』と呼ばれました。ヒンガリーラントは降伏し、天文学的な賠償金を払う羽目になりました。」


その事件って、『私』が死んだ後起こったのか⁉︎

と私は思った。

いや、待てよ。

発覚したのが『私の死後』ってだけで、事件自体は私の生前から始まっていたのかも・・・。


「そうして貴族達の信頼と忠誠を失った国で起こるのは、粛正と反乱の連鎖です。この時期、貴族社会で『光輝会』が大きな影響力を放っていましたが、その光輝会も最後には粛正の対象となり幹部とその家族達が処刑されました。」


「フィル様は⁉︎」

とユリアが声をあげてしまい、その後蒼くなってうつむいた。エリーゼが悲しそうに言った。


「公開処刑されました。両親と共に。」


のどの奥が苦くなった。フィリックスとは決して仲良くはないが死刑になれば良いと思った事はない。西大陸の叡智とまで呼ばれたイーリス教授まで殺されたという事実には胸が苦しくなった。

というか『光輝会』。久し振りに名前を聞いたなあ。一周目では長く存在していたんだ。エレナローゼが主宰だった会だ。という事はカリンも処刑されたのだろうか⁉︎


「そして混乱の坩堝るつぼと化したヒンガリーラントに、北大陸のアダルフィアという国が侵攻して来ました。トゥアキスラントやシンフィレアが既にアダルフィアに征服されていましたが、アダルフィアは征服した国の国民を残酷に扱う事で有名な国です。王族や貴族、知識人は皆殺しにされ、残った捕虜は北の果ての鉱山に送られます。ブルーダーシュタットが陥落し、アダルフィアの兵達による虐殺が起きたと聞いて陛下とルートヴィッヒは『時を戻す』事を決意したのです。」


むしろ、そこまでよく耐えたな!

と思う。


つまり


『伝染病蔓延』→『私の暗殺』→『戦争』→『粛正&反乱』→『戦争』と不幸のコンボ攻撃で国が滅びかけてしまったのね。


怖い。めっちゃ怖い。


「『生贄』には王太子であるルートヴィッヒが志願しました。もしも『時を戻す秘術』が単なるホラで、時間が戻らなかったら国王陛下は最後まで国を指揮して行かなくてはなりませんから。そして儀式は私が行いました。生贄を捧げるのは、清らかな乙女でなくてはならないと決まっていたからです。」


という事は、既に20代後半だったのではと思うけど、エリーゼ様は結婚していなかったのだろうか?

とか質問してしまったら、今日が私の命日になるんだろうな。


「時を戻す事は賭けでした。時を戻した時、全員が戻す前の記憶を失っていたら結局は同じ悲劇がまた繰り返されるだけだからです。

だから大陸歴311年の10月24日に戻って来た時。私は記憶を残していて、とても・・とても嬉しかったのです。」


アダルフィアはグラハム博士が暮らしていた国です

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― 新着の感想 ―
鬱回のはずなのにエリーゼ様清らかな乙女疑惑で笑ってしまいました^_^ 単純に世相が荒れていたら婚姻できなかっただけなんでしょうけど。
隣国の使者(ルートヴィッヒ視点)の皆自分が殺したは それぞれを指すんじゃなく、ルートヴィッヒ自身を指すんですね。勘違いしてました。 大陸歴317年春(1)のアズールブラウラントでは『種痘は、西大陸へ…
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