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侯爵令嬢レベッカの追想  殺人事件の被害者になりたくないので記憶を頼りに死亡フラグを折ってまわります  作者: 北村 清
第十章 或る未来へ

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時を戻す秘術(1)

エーレンフロイト家の別邸に着くと、馬に乗ったコンラートとジークが先に到着していた。


「二人はどこまで聞いているの?」

と私はエリーゼが来る前に二人に聞いてみた。


「何も聞いてないよ。いきなり呼び出されて、かつらをかぶらされて、ベッキーを襲う暴漢が現れるかもしれないし、現れないかもしれないから、しばらくここに立っていろと言われたの。」

「それはまあ・・何というかありがとう。ところで、そのカエルのカバンどうしたの?」

「ああ、ベッキーの私物だよ。エリーゼ様が持って来て、これ持って立ってろって。返そうね。はい。」

「重っ!何入れてるんですか⁉︎って石入れてたの⁉︎何か凶器になる物入れてたのかと思った。」

「王宮内に凶器は持ち込めないよ。」

とジークが言う。

だけど、この袋は立派な凶器だ。こんな物でジーク様に殴られて、よくあの女性は即死しなかったものだ。


私達が屋敷の中に入ってすぐエリーゼを乗せた馬車が来た。


エリーゼは自分が同伴させていた侍女に、人が近寄って来ないよう外での見張りを任せたらしい。屋敷の中には一人で入って来た。

屋敷の中にいるのは私、ユリア、アーベラ、ティアナ、コンラート、ジーク、エリーゼの七人になった。


「でっ?」

と私は質問した。


「いったい何がどうなっているのですか?」


「最初から話すと、ものすごく長い話になるのだけれども。」

「簡潔にお願いします。」

「簡潔に言うと、貴女が殺されるかもしれない可能性があったのでジークとコンラートと一緒に待ち伏せしていたの。」


それはさっきジークに聞いた。


「・・長くなっても良いので詳しい説明をお願いします。」

「その前にお茶をもらえるかしら?炎天下でずっとしゃがんでいたから喉が渇いたわ。」

「どれくらいしゃがんでたんですか?」

「私が用意します!」

と言ってユリアが厨房へ駆けて行った。


ユリアがお茶を用意してくれている間の不自然な沈黙が辛かった。

数分の事ではあったが、お茶が用意されてエリーゼの勧めでユリアもソファーに座り、エリーゼが「さて」と言い出した時は、ほっとしたものである。


「話は大陸歴311年の10月24日から始まります。」


今現在、大陸歴318年である。

本当に長くなりそうだ。


「その日、ハーゼンクレファー家のアレミリューラが義理の母親であるレティーツア夫人を殺害しました。」


無関係な話が始まった。これは、本当に長くなりそうだっ!


私は他の聞き手の表情を見た。


コンラートは無表情だが、ジークとユリアは怪訝な表情をしている。

それはそうだろう。だって、ハーゼンクレファー公爵夫人レティーツア様は今も生きておられるのだから。


つまりこれは『一周目』の話なのだ。


「アレミリューラは動機を誰にも語りませんでした。しかしアレミリューラはハーゼンクレファー公爵の元々の婚約者だったジゼラガルド様が生んだ娘です。非業の死を遂げたジゼラガルド様の恨みを晴らそうとしたのでは。と皆は推測しました。

尊属殺人は重罪です。アレミリューラには死刑判決がおりました。刑が執行される前アレミリューラは私に会う事を希望しました。そして私にだけ義母を殺した本当の理由を話すと伝えてくれました。私は彼女に会いに行きました。そしてそこで、ヒンガリーラント王家に伝わる秘術の話を聞きました。

その秘術とは『時を戻す秘術』です。」


エリーゼはそこまで言ってお茶を一口飲んだ。


「あなた達の中にも、名前くらいは聞いた事がある人もいるでしょう。」


私とユリアはジークの婚約式の時にエリーゼから話を聞いている。そしてジークも知っていたようだ。


「存在は聞いた事がありますが、実行は非常に困難だと聞いていますけれど。特別な『生贄』が必要なのでしょう?」


ジークの口から物騒なワードが出て来た。


「その通りです。そして『生贄』となるのはヒンガリーラントの王族でなくてはなりません。この場合の王族とは、王と王の子供達を指します。王族Aを生贄としてある手順に従って殺します。その手順については話すつもりはありません。後に王族Bも同様に生贄として殺します。

そうしたら、王族Aが死んだ時間の手前まで時間が戻るのです。」

「・・・・。」

「アレミリューラは言いました。『エディアルドはアウグスティアンだ。あいつはただ面白いからという理由で人々を不幸にしてこの国を滅ぼす』と。だから、アレミリューラは王女であるレティーツア様を殺したのです。いつかこの国が滅びる一歩手前まで来た時に大陸歴311年に時が巻き戻せるように。そういう意味では殺すのは誰でも良かったのです。私の母でも。国王陛下でも。ただ、アレミリューラにとって最も殺しやすい位置にいたのがレティーツア様だったという事です。

その話を聞いた時、全てアレミリューラの妄想だと思いました。その時点で私は『時を戻す秘術』の存在を知らなかったからです。義母と異母兄に対する感情を拗らせて、妄想と現実の区別がつかなくなったのだと思いました。だけどアレミリューラは笑って、言いました。私が正しかった事を時が証明すると。そう言って彼女は死んで行きました。そして、それから15年も経たずにアレミリューラが言った通り、ヒンガリーラントは滅亡の瀬戸際に追いやられたのです。」

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― 新着の感想 ―
時を戻す秘術はレッティツァ夫人の死だけでは不十分でもう一人王の子を生贄にしないと発動しないのだとしたらそれを行なったのはエリーゼ様でしょうか もしかしてエリーゼ様は闇落ち状態のルードビッヒ王子を・・・…
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