畑でおやつ。ピクニックみたいで最高だわ
「いらねぇよ」
「でも、お腹空いてるよね?フェンがリアをどうしても許せないのはわかるの。でも、食べないと元気が出ないし、倒れちゃうよ」
何を話しかけても返事をしてくれないフェンに、「どうしたら別人だって認めてもらえるのかな」とサンドイッチを見つめながら呟いた。
「もうその顔が気に食わないんだよ。金の髪を自慢げに靡かせて、俺の妹を侮辱したのを一生忘れはしないからな。今思い出しても腹が立つ」
「妹さんを?」
「はっ。それも忘れているっていうのか。妹は病気で髪が抜けるんだ。それをリアは鼻で笑ったんだよ。リアの金の髪に憧れ、美しいと誉めた妹に、『あなたにはその頭がお似合いよ』とバカにしたんだ!」
「髪が……」
わたしは後ろに束ねてあった髪を触る。なんて酷い姫だ。フェンは20歳前後に見える。その妹ならまだきっと10代。容姿について貶されるのは傷ついただろう。
「妹さんは、今、病気は…」
「ああ?治んねえよ。原因不明だって前にも言っただろ!?薬がねぇんだ!」
それを聞いたわたしは、サンドイッチが入った籠をフェンの膝に押しつけると、勢いよく立ち上がった。
「カウル!剣をだして!」
凄い剣幕で詰め寄ったわたしに、カウルは少しのけぞった。
「剣を?何に使うんだ?」
「いいから!出してー!」
いきり立つわたしに、「ちょっと落ち着けよ」と困惑しながらも手に赤い光を宿らせる。
体にしまってある道具を引き出すように、ぬうっと剣を取り出すと、周りのみんなが感心しながら軽く拍手をした。バイクを動かすのも魔力がないと出来ないが、これはさらに高等技術らしく、警備隊の中でもトップクラスの人たちだけのスキルであった。
出し切った剣を「かして!」と奪う。
「あ。バカ。ゆづか危ないからーーー……」
取り返えされる前に、わたしは1つに縛っていたゴム紐の上あたりで、ジャキンと髪を切り払った。
「っな…!!」
「はぁぁ?!」
耳の下あたりで散切りになったそれらは、太陽の日を受けて輝いた。数本が、風をうけてキラキラと飛んでゆく。
みんなが目をひんむくなか、わたし一人「ようし!!」と切り取った髪を左手に掴かみ掲げた。
「よしじゃないっっ!!何やってるんだ!」
カウルは慌てて剣を消し去ったがもう遅い。
みんなは頭を抱えて叫んだ。
「ぎゃーーーー!!尊き金の髪がーー!!」
「ゆづかーー!なんてことを!」
みんなは発狂していた。
フェンさえも、「お前、何やってんだ…」と呆然としている。
「金の髪は平和の象徴!とても希少で、お金で買いたいという者さえいるほどなんだぞ?!」
カウルは、わたしの散切りになった髪をすくって嘆いた。
「えー?べつにまた生えるんだし大袈裟な。その国民である女の子一人も幸せに出来ない金髪なんて、なんの意味もないからね!」
「……なんだって?」
「フェンごめんなさい!まだ畑仕事残ってるけど、わたし城へ戻って、すぐにやりたいことが出来たから帰るね!この埋め合わせは明日以降必ず!カウル!わたしを今すぐ城へ連れて帰って!」
「なんだってぇ?」
カウルが変な顔になる。
「ほらほら!急いで!みんなごめんね!あ、どなたかポテチ食べおわったら籠の回収お願いします!あとフェンにあげたサンドイッチ、食べなかったら抽選で一名様に差し上げま~す!」
わたしは切り取った髪の毛を大事に抱えて、カウルより先にバイクに飛び乗った。
勢いにのまれたカウルは慌ててエンジンをかける。
「フェン、畑は頼んだ。日が暮れる前に撤収してくれ」
「あ、ああ……?」
フェンは状況が飲み込めないまま承諾した。




